ミッドウィークに行われた3連戦のなかの2戦目、15日(日)の前節に続きホームで試合ができた東京Vが、そのアドバンテージを生かし2−0で完封勝利した。だが、敗れた山形だけではなく、勝利した東京Vの選手たちからも、反省のことばばかりが聞かれた試合後のミックスゾーンだった。
東京Vは、この試合も幸先よく先制には成功した。「前半の立ち上がりから2点入るまでの30分くらいのサッカーは非常によかった。リズムもボール離れもゴールに向かう推進力というかスピードやパワーも感じた」と、厳しい三浦泰年監督が珍しく賞賛したほどのゲームの入りから、前半17分、ファーストゴールは生まれた。ボールを持った常盤聡が「ちょっと人数が少なかったので、時間をかけようかな」と、ペナルティエリア内中央にドリブルで仕掛けて行くがボールをロスト。そのルーズボールを飯尾一慶が迷わずシュートするが、相手DFに当たり再びこぼれた先にいたのが常盤だった。「たまたま目の前にこぼれてきたので、詰めるだけでした」。きっちり枠に入れてネットを揺らした新加入FWは、「平日のナイトゲームなのに見に来てくれたので」と、サポーターへ向けて得意の側転からのバック転、バック宙のパフォーマンスで歓喜と謝意を表現した。
先制すると波に乗る東京Vは、6分後の23分、右サイド森勇介からのクロスの形から飯尾がシュート。これをGKが防ぎ、こぼれたボールを相手DFが拾ったが、クリアしたボールが常盤に渡ると、左足でゴール左隅を狙った好シュートを放つ。これが惜しくもバーに弾かれてしまうが、そこへ勢いよく詰め寄った小池純輝が左足を一閃。「トキ(常盤選手)や直輝(前田選手)が点を取っていたので刺激を受けていた」味方に感化された、待望の今季初ゴールとなった。
だが、「どうしても、先に2点とってしまうと、そのあとが緩んじゃうところがある」。
飯尾の指摘は、同じように早い時間に先制し、前半だけで2点を挙げた前節からの課題だったが、またしても持ち越す形となったようだ。「まずは失点0で、最低でも2−0のまま終わるということをベースにおいて、その2を3、4(点)に増やしていこうというのがハーフタイムの指示でした」(小池)。という中、失点しないことを最低限としながら追加点を目指すことは、「戻らなきゃいけないし、出ていかないといけないし、どっちも優先にしなければいけないけど、でもやっぱり点を取られたくないから戻る方を優先してしまう」(飯尾)と、特に中盤の選手にとっては体力的にも判断の面からも難しさを抱えるに違いない。
とはいえ、後半に入った直後には常盤に決定的なシュートが2本あった。「あれを1つでも決めていれば勝負は決定していた。そういうところはシビアにしていかないといけない」高原直泰はきっぱりと指摘したが、そうした一側面に、かつて名波浩氏が決定機を何度も外した中山雅史氏に対して厳しい言葉で叱咤していた、いわゆる“黄金期”といわれた頃の磐田で積んだ“常勝チーム”での経験値がにじみ出ているのではないだろうか。「今日の場合は、常盤にボールが集まっていた。毎試合毎試合、そういうのが今、必ず誰かには来ている。そこをみんなしっかり決めて、試合を終わらせるということをしないといけない。『勝ったから良かった』というのではなくて、勝ったからこそこういうことが言えるわけだから、もっともっとシビアにやっていければなと思います」(高原)。
8戦無敗、4試合連続無失点という好結果が続くが、チームにまだまだ改善の余地があるからであろう。選手は誰ひとりとして納得の笑みを見せていない。主将・飯尾はチームを代表するように「まだ引き分けの方が多いので、勝ちを多くできるように頑張ります」と、早くもアウェイでの次節・松本戦へ気持ちを切り替えていた。
山形は、前節まで3試合連続で固めていた先発メンバーに変化をもたらして挑んた。サイドからFWへと移動した山崎雅人は、試合前「3バック、1アンカーだから、両サイドがけっこう空くと思う。そこで上手いことボールを奪って前を向けたら」と、イメージしたが、いざ試合に入ると、東京Vは守備になると5バックとなり簡単には破れず、アンカーの両横のスペースも、飯尾、西紀寛、時には高原までもがしっかりと埋めに入り、思い通りのボール保持ができなかったようだ。また、それ以前に特に前半は相手のボールホルダーへのプレスが厳しく、ゴールを生むために効果的なボールは、ほとんど前線には入らなかった。
それでも後半、東京Vが引き気味になると、山形も猛攻を仕掛ける。山崎の狙い通り、1ボランチの横にスペースが生まれ始めると、この試合ボランチに入ったロメロ フランクも抜け出して果敢にシュートを放つなど、いつ1点が入っても不思議はない展開へと持ち込んだ。だが、最後まで「全員が体を張ってボールにしっかり当たりにいく」、リーグ最少失点誇る東京Vの守備網をかいくぐることができなかった。
山形の選手からは、「1点でも取れれば勝てていた」との声が多く聞かれた。実際、この試合の両チームのシュート数は東京Vが8本で山形が15本。チャンスを多く作り、試合を押し気味に進めたのは山形との見方もできる。だが、言い方を変えれば、「8本で2点を奪えてしまう東京V」と、「15本シュートを打っても1点も奪えなかった山形」ということになる。そこにこそ、決定力の高さを身につけつつある東京Vと、3試合連続零敗が続いてしまっている山形との、現在のチーム状況の差が表れているのではないだろうか。
以上
2013.04.18 Reported by 上岡真里江
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