6戦連続で勝利のなかった川崎Fが、持ち前のパスワークを発揮して前半の主導権を握る。前半4分には小林悠が惜しいシュートを、24分にはミスを生かした速攻により大久保嘉人からのパスを受けたレナトがポストを叩くシュートを放つ。川崎Fは両サイドバックが加わったダイナミックな攻撃を展開。仙台を圧倒するのである。
と、ここまでは見慣れた今季の光景だった。圧倒すれど、点決まらず。「これくらいはできるのだ」との思いとは裏腹に、「これまでと同じことを繰り返すのか」との疑念と不安が頭をもたげ始めていた。流れが変わったのは、そんな時間帯だった。
前半25分。川崎F陣内に攻め込んだ仙台が、横パスをミス。これをカットしたレナトがドリブルで50mほど独走する。左前にはボールを引き出そうとする矢島卓郎がいたが、レナトは背後から駆け上がった大久保へとラストパスを送る。仙台の虚を突く動きによりエリア内へと侵入した大久保に対し、仙台はDF2人とGK林卓人とが対応。そういう点で、枚数は足りていた。そしてその仙台の守備を無力化する大久保の技巧的なシュートが光った。わずかに浮かせたシュートがゴールネットを揺らすのである。川崎Fにとって今季リーグ戦7試合目にして初の先制点であり、それを決めた大久保は心置きなくそのゴールを喜んだ。
ゴールは一度決まるとあっけないものである。続く27分にはペナルティエリア内でボールを受けた小林が、浮き球を胸を使って押し出して、対応するDFと入れ替わろうとする。
「あの場面は胸トラップして入れ替わろうとしたら相手の手が出てきた。手が出ていなければ入れ替われたと思います」と話す小林。故意に手を使ったとの判定により扇谷健司主審がPKを宣告し、28分にレナトがこれを決めた。
40分には川崎Fの3点目も決まる。左サイドの大島僚太からのフィードボールを仙台の選手がヘディングでカット。味方へのパスだったが、これを出足鋭くレナトが奪うと、ステップを合わせ、20mほどの距離にも躊躇することなく見事なドライブシュートを決めるのである。攻め込み、決定機を作っても先制できなかった今季の戦いを振り返れば、前半を終えての3−0は望外の経過だった。なにしろ川崎Fにとって先制点はもちろん、前半にゴールが決まったのも今季初めてのことだったのである。
もちろん仙台がこのまま引き下がるわけはない。ハーフタイムの手倉森誠監督は選手たちに対し「川崎Fが(45分で)3点取れたわけで、自分たちが取れないこともないだろう」と話し、また後半の開始から一気に2選手を交代させる積極采配によって挽回を試みる。不安定な左サイドバックを安定させると共に、攻撃にも参加した蜂須賀孝治。そして持ち前のがむしゃらさを見せ、攻撃を牽引した赤嶺真吾の両選手である。
前半はほとんど見られなかった仙台のサイドバックの攻撃参加は、特に赤嶺の働きによる部分が大きい。「若干プレッシャーを掛けられた時のアバウトなボールを、しっかり懐に納めて自分たちの押し上げの時間を作ってくれるあたりは、彼本来の力を出してくれたと思います」と手倉森監督。ボールを保持できる場所が高くなり、時間が増えることで攻撃に絡む枚数は増える。息を吹き返した仙台が、川崎Fを押し込む。
「後半、立ち上がりは気をつけようと話してたんですがやられてしまって」と悔しげに話すのは山本真希。後半開始からわずかに4分の仙台の攻撃。中央の角田誠からのパスを受けた太田吉彰が右サイドからクロスを入れると、これをファーサイドで待ち構えた梁勇基が頭で決める。その直前に川崎Fは決定機を逸しており、そこからの逆襲だったという点も、川崎Fの選手たちの心理面に重くのしかかった。
昨季、前半の3点のリードをひっくり返された経験を持つ川崎Fは肝を冷やす。田中裕介は「試合中にちょっと(天皇杯の)大宮戦を思い出して冷や冷やしてました。45分とか全然短くないですからね」とその時間帯を振り返る。かさにかかって攻めかかる仙台の攻撃をまともに受け、自信をなくしても不思議ではなかった戦況を一変させたのが大久保の追加点だった。
「点を取られたので『あー、またか』というのはありましたね。みんなも思ったでしょ」と梁勇基のゴールを振り返る大久保の言葉は、守らなければならない時間帯で守れなかった、これまでの戦いを踏まえたもの。だからこそ、次の1点の重みはとてつもなかった。3点のリードが2点になっただけ。決して怖い点差ではないが、川崎Fには拭い去れない過去がある。だからこそ、梁勇基のゴールから4分後に決まった得点の意味は大きかった。53分。大島僚太のクロスを折り返した小林のパスを受けた矢島がさらに大久保に。このパスを左隅に大久保が決めるのである。
「そこで、あの時間帯でもう1点追加できたのは向こうはダメージだっただろうし、こっちは安心にはなりました」と大久保。これ以降、仙台は前にかかり、川崎Fは手薄な仙台をカウンターで攻め立てるという展開に。川崎Fの圧倒的に有利な状況は揺るがなかっただけに、60分にCKから石川直樹に喫した失点が余計だった。相手が前に出てきてのでカウンターが決まりそうな予感はあったが、そこであえて時間をかけて攻めるしたたかさがあってもよかった。たとえば67分の攻撃がそうだった。
分厚く攻める仙台が、川崎Fの守備ブロックの手前でパスを繋ぐ。ここに山本がプレスを掛けてパスミスを誘発し、大久保がこれをカット。前方に走りこむ山本と矢島に対し、仙台の守備は2枚。カウンターに移行するには十分な場面だったが、大久保が選択したパスは後方のものだった。
「(2点)勝っているし、無理してまで向こうのボールにする必要もないなと思って。無理に人数が少ない数的不利で行ったとして、点が入ればいいんですが、入らないときにダメージが大きい。(そこからの攻撃で相手を)走らせるというのが頭の中にあった」と大久保。結局この場面は、落ち着いてパスを繋いだ川崎Fが仙台のペナルティエリア内にまでボールを運ぶ分厚い攻撃を見せる。もちろん、仙台の選手は帰陣を余儀なくされた。カウンターの打ち合いは盛り上がるものではあるが、時にはこうした落ち着きも必要なのだろうと思う。
試合のほうは、後半の仙台の猛攻を川崎Fがしのぎ切る。今季リーグ戦初先制、かつ大量4得点を奪いながらの初勝利ではあったが、素直に喜べないモヤモヤが残る試合だった。この消化不良感は、続出した負傷者や試合内容に起因するものである。勝つには勝ったが、まだまだやるべきことは多い。上るべき山の頂は遥か彼方に仰ぎ見る存在である。
以上
2013.04.21 Reported by 江藤高志
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