リーグ戦未勝利の重圧はどれほどだったろう。想像は容易には届かない。それがキャプテンとなればなおさらだ。勝てぬ責任に人知れず肩を重くしていたとしても不思議はない。
前節の浦和戦を振り返り、永木亮太は口にしたものだった。「いつもの自分ではなかった。うまくいかないことがあるのは当たり前としても、もっと自分を出していかなければいけない。不甲斐ないプレーをしてしまい、悔しかった。次は同じことを繰り返さないようにしたい」。悔しいと、幾度発しても埋まらぬ悔しさが滲んだ。さまざまな想いの詰まったその永木のフリーキックを、ゴールが包みこむように受け止めたのは20分のことだった。
立ち上がりこそ大分が押し気味に進めたものの、湘南も高山薫がシュートを放って以降、敵陣の攻防へと持ち込んでいた。縦への意識高く、その攻撃は湧き出るように淀みない。前への推進力のバロメーターとも言える高山と古林将太の両アウトサイドが高く位置取り、右から左から勝負を仕掛けていく。付け加えるべきは、その彼らをさらに追い越す永木のランだ。思えば彼らが持ったときに大外を駆け上がる、らしいスプリントが今季は影を潜めていた。曰く、「守備に回る時間帯が多く、まだ自分たちのよさを全部出し切れてない。それがいまの結果だと思う」。逆にその回数が多いほど自分たちのやろうとしていることが自然と出せている証だし、僕としては狙っている。もっと出していきたいのだと、永木は口にしたものだった。くだんのフリーキックの糸口となったキリノをはじめ、FW陣が繰り出す果敢なプレッシングと、大野和成を中心とするDF陣の目聡い押し上げが相まって、湘南の縦への推進力はこの日、加速した。
一方、雨降るスリッピーなピッチにコントロールを失する場面もあった大分は、高松大樹と森島康仁の2トップを目指し、ロングボールを多用する。「相手FWのプレスのところでなかなかビルドアップできなかった面もあるし、うちの2トップがうまく収めて競り合いに勝っていた面もある。チャンスもつくれていたし、そこは続けていいと考えていました」そう宮沢正史が振り返った大分の強みは、同点機にも表われた。高木和道の潔い縦パスを高松が収め、ロドリゴ マンシャのクロスを経て森島がヘッドで流し込む。「マンツーマンでついてくる相手の前に入ることができた。狙い通りでした」相手の守備体系を踏まえた森島のゴールにより、36分、大分が追いついてみせる。
後半立ち上がりにも、大分はロドリゴがニアの森島に合わせている。他方湘南も、後半から入ったクォン ハンジンの高さもあって跳ね返し、前線のキリノを起点に攻撃へと転じていく。再び奪ったゴールは、そうして程ない。島村毅のヘッドを機に、キリノを経て古林が運ぶ。トレーニングを重ね、いまや厳しい体勢からでもたしかな精度を具えつつある古林にとって、狙いを定めるに十分な一瞬だったかもしれない。自身の右をさらに越えていく永木を視界に捉えつつ、なかを目がけたクロスは波のように押し寄せた3トップの大外に届く。55分、ユースからの盟友・菊池大介が「気持ちで押し込んだ」のだった。
しかし残された時間は短くない。ビハインドを負った大分は、選手交代により攻撃の活性化を図りながら早めにゴール前の勝負へと持ち込んだ。かたや湘南も、「ヤマザキナビスコカップで甲府に勝ったときに、みんなが気持ちで凌いでいたのをすごく思い出しました。僕はメンバーに入ってなかったけど、いい影響をもらった。だから絶対にクロスを上げさせてはいけないという気持ちだった」と高山が明かしたとおり、各々球際に厳しく挑み、粘り強い守備の先では、途中出場の馬場賢治を筆頭に相手ゴールを脅かしもした。
勝利の長い笛が響いたとき、ピッチに、そしてスタジアムに喜びが湧いた。キャプテンは両の腕を雨降る天へと解放した。仲間の笑顔とともに、下がっていた肩がすこしだけ軽くなったように見えた。
一足飛びにはいかないと、曹貴裁監督は言う。と同時に、まだ見ぬ勝利のなかにも成長を見ていた。「選手たちが喜んでいる姿は何回見てもいいもの」と語り、「取られるかもしれないから仕掛けない、奪えないかもしれないから行かない、ではJ1でプレーしている意味がない」と語った言葉もまた、らしい。つねにその言葉の主語となる選手たちが、一心に前を目指し掴み取った、リーグ戦初勝利だった。
以上
2013.04.21 Reported by 隈元大吾
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