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【AFCチャンピオンズリーグ2013 ブニョドコル vs 広島】レポート:見せつけた広島の若者の力。相手指揮官も脱帽させた勝点1奪取。(13.04.24)

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記者会見室を、大きな拍手が包んだ。アウェイで引き分けに終わった指揮官に対し「敵側」の記者たちが手を叩き、賞賛とリスペクトを示した例を、筆者は寡聞にして知らない。

記者たちが担当するブニョドコルは、この引き分けによって決勝トーナメント進出の決定を先送りされ、最終戦のアウェイ浦項戦でもし敗れれば予選リーグ敗退の可能性すら芽生えた。それでもなお、広島の若者たちが見せたサッカーはジャーナリストを魅了。彼らを起用した指揮官の勇気に対して、最高のプレゼントを贈ったのである。

先発メンバーの中には、佐藤寿人も青山敏弘も森崎兄弟も、そして高萩洋次郎やミキッチ、石原直樹もいなかった。今季、好調を維持している山岸智も、ベンチに座っていた。起用されたのは、ルーキー・野津田岳人とパク・ヒョンジン、高校生Jリーガーの川辺駿や2年目のイ・デホン。3年目の井波靖奈は、昨季の後半から右サイドや最終ラインのトレーニングを始めた元FWだ。

チームの経験値とすれば、昨年のACLでベスト4に輝いたブニョドコルの方が遥かに上である。だが「経験が浅い」という現実は、一方で可能性という「未知の力」を持っているという真実を秘めている。その未知のパワーに、森保監督は懸けた。負ければ、批判を受ける。「ACLに力を注いでいないのでは」という前日会見の質問は、「注いでいない」という断定へと変わる。しかし、それでも彼は「試合に飢えた若者たち」の力に懸けた。前日会見で佐藤寿人やミキッチの不在を聞かれた時、森保監督は「ウチには他にもたくさん、いい選手がいる」と言い切った。その言葉が真実であることを、広島の選手たちは闘いの中で証明したのである。

広島の能力を警戒し低い位置でブロックをつくったアウェイでの闘い方を捨て、ブニョドコルは点をとって勝とうという意識を前に出してきた。だが、若者たちは一歩も引かない。前に突き進んでボールを奪い、守から攻への切り替えが遅くなったブニョドコルの両サイドを鋭くついた。若い前線のトリオが精力的に動いて、相手のDFを混乱させた。

特に起点となったのは、左サイドのパク・ヒョンジン。ブニョドコルの右サイドには屈指のアタッカーであるブラジッチがいるし、右サイドバックのショラクメドフも攻撃的である。脅威ではあるが、一方で彼らの裏にはスペースも存在する。そこを巧みに使ったパクのクロスから、決定的なシーンを何度もつくった。ニアに入った野津田岳人のシュートはバーの上、ファーに飛び込んだ井波靖奈のボレーはGKの好守に防がれたものの、パクの左足は確実にビッグチャンスをつくりだす。45分、イ・デホンがゴール前で迎えた決定機も、パクの大きく曲がり落ちるコーナーキックが演出者。森保監督がACLを通して我慢しながら起用してきたルーキー・レフティが、その真価を発揮し始めた。

局面でも、彼らは戦った。39分、相手との接触プレーでまぶたの上を切った岡本知剛がピッチ外で治療(3針をその場で縫った)している間の約4分間、ピッチの中の10人が身体を張り、相手の圧力を全員で跳ね返し続けた。後半、ブニョドコルはロングボールを中心にさらに圧力を強めてきたが、水本裕貴を中心に脅威的な高さを持つ相手2トップをほぼ完封。81分、ピシュルのポストプレーからゾテーエフのミドル、そのこぼれを拾ったムルゾエフのシュートが西川周作の堅陣を突破したが、パクがゴールライン上でクリア。唯一と言っていい被決定機をしのいだ広島は、そのまま落ち着いた守備を見せつつ、終了間際には相手を押し込んで、非常に難しいアウェイで勝点1を奪い取った。

「今日は我々が悪かったのではなく、広島が良かったと見るべきだ」
カシモフ監督は決勝トーナメント突破を決められなかった悔しさをかみ殺して言葉を吐き出す。そして「どちらの選手たちもよくやった」とも。終了のホイッスルが鳴った直後、両チームの選手たちが緑の芝生の上にバッタリと倒れ込む。全力で走り、全力で戦った戦士たちに、観客からは拍手が贈られた。特に広島の若者たちに対して、メインスタンドからは「ワンダフル」「ビューティフル」という賞賛が飛んでいた。

拍手の中で会見を終えた森保監督に対し、ブニョドコルの記者が最後に一言、付け加えた。
「北京国安に、勝ってください」
広島が最終節に勝利すれば、ブニョドコルは浦項戦の結果如何に関わらず、決勝トーナメント進出が決まる。そんな願いに森保監督は大きくうなづいた。実際、若手の成長を強く感じさせたこの試合ではあったが、まだACLでの勝利がない。3針縫ったまぶたが痛々しい岡本は、一言、言葉を落とした。
「後は、(勝利という)結果です」

この言葉は、すべての選手たちの、強い想いの集約である。

以上

2013.04.24 Reported by 中野和也
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