岐阜、北九州と下位相手の2連戦で着実に勝点6を獲得した4位・栃木。昨季までは上位に強く、下位には苦戦を強いられたが、今季は「紙一重」(近藤祐介)の接戦をものにすることが出来ている。難題を2つクリアしたが、戦いの螺旋に終わりはない。今節は前の2試合とは全く状況が異なり、5位・岡山をホームに迎えての上位対決に挑む。
「岡山はいいチームだし、しっかり守備をする。いい試合をしているので難しい試合になるはず」
パウリーニョはそう前置きした上で、「負けなしの岡山に勝ち、自分達が無敗を止めることはモチベーションを上げる1つの要素になる」と、リーグ序盤の大一番に向けて気持ちを高めている。3連勝中の栃木がそのまま連勝街道を突き進むのか。それとも開幕からいまだ無傷の岡山が無敗街道を歩むのか。果たして、ライバルを引き離すのは栃木か、あるいは岡山か。今節、屈指の好カードから目が離せない。
「攻撃の時は相手のウイングバックが前に出てくる。そこでボールを取った時、岡山が攻撃から守備に切り替わる時がチャンスになる。そこでいかに速く攻められるか。カウンターのスピードが求められると思う」
試合のポイントをそう語るのは、カウンターのスイッチ役である菊岡拓朗。両者とも戦術も布陣も異なるが、堅守速攻が最大の武器であることは共通している。得意の形に持ち込むには球際での激しさと攻守の素早い切り替えが求められ、サッカーの基本的な部分で勝った方がよりゴールを奪う確率が高まるはずだ。
岡山に5バック気味に守られれば崩すのは容易ではない。しかし、具体的な岡山の攻略法を、前節対戦した神戸が示してくれている。2点目のPKに繋がるシーンは、ショートカウンターを持ち味とする栃木にとってイメージを抱きやすい。高い位置でボールを奪い、奪ったボールを3バックの両端のスペースに流し込み、そこから逆サイドに振ってフィニッシュに至った展開は、ひとつの理想的な形だ。相手がセットした状態で穴を見付けるのは難しいが、アンバランスな状態ならば突けるスペースは数限りなくある。パウリーニョを中心に意思統一された守備からボールを奪取し、チャンスに結び付けたい。
3連勝を3完封で飾っている栃木だが、決して盤石の試合運びをしているわけではない。「相手が外していることで助けられている部分もある」(當間建文)。前節の北九州戦でも前半に自らの首を絞めるようなミスを犯したが、相手の決定力不足に救われた。「チームの持ち味を出すためにも、先に失点しないことが重要になる」と菊岡が言うように、安易なミスからピンチを招く事態は避けたいし、1点を守り切れる岡山に先行されるとかなり苦しくなるのは目に見えている。直近の相手はミスを見逃してくれたが、岡山は確実につけ込んでくるしたたかさを備えている。高い集中力と水も漏らさぬカチッとした守備が、勝点3への絶対条件になるはずだ。
首位・神戸を相手に3点のビハインドを残り10分間で完済する、ミラクルを起こした前節の岡山。あまりに劇的な同点劇に、その口火を切った久木田紳吾は「勝ったみたいにうれしかった」と試合後に語っている。岡山の誰もが久木田と同じ思いを抱いているはずで、その余勢を駆って栃木戦に臨んでくるはずだ。
「やり方が固まってきているし、成熟している」
松田浩監督は岡山の好調の要因をそう分析する。チームとしての基盤は影山体制の3年間で構築され、同じ絵を描けているからこそ軸はぶれていない。そこにJ2では規格外のストライカー荒田智之が加入したことで、勝点を積み重ねられる要素が増えた。「85分消えていても、わずかな時間で仕事ができる選手。シュートも上手い」とは、水戸で荒田と共にプレーした大和田真史の弁。J2参入同期対決は1点勝負の色合いが濃い。岡山としては荒田の決定力を活かして勝ち切りたいところだ。
「順位が下がると、なかなか上に行くのが難しくなる。なんとか上位に食らい付き、年間を通して5位以内をキープしたい」(近藤)
例年、栃木は5月から成績が上向く傾向にある。その初戦となる岡山戦を取れれば、波に乗っていける。G大阪と長崎の結果次第では、プレーオフ圏内から一気に自動昇格圏内に足を踏み入れられる。好位置に付けることはそれだけでモチベーションになり、県民へのアピールにもなるし、観客数の増加、支援や応援の輪が広がることにも繋がって行く。そんな好循環を生み出すためにも、この重要な一戦を必ずものにしたい。
以上
2013.05.02 Reported by 大塚秀毅
J’s GOALニュース
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