勝利以外は許されないという重圧がかかるなか、浦和はムアントンを0−1で退けた。しかし、同時開催となった他会場の試合で広州恒大が全北現代とスコアレスドローに終わったため、浦和の決勝トーナメント進出の道は潰えた。
勝利だけが求められる一戦だったが、選手たちは冷静だった。白星が欲しいからといって最初からフルスロットルで戦うのではなく、日が落ちても30度を超える高温多湿の厳しい環境を考慮した試合運びを見せた。
「90分トータルで試合を終わらせればいいと、90分でしっかり勝点3を上げられればいいという話のもとで今日のゲームは入ったので、それはプラン通りだった。最初からイケイケドンドンでいって、相手にカウンターをくらうよりはしっかりブロックを作るところ、いくところのメリハリをつけていこうことだった。気温が高かったので、そういうメリハリをしっかりつけようというプランがチームにあった」(森脇良太)
相手がブロックを敷いて待ち構えるなか、浦和は慌てることなくゲームを作っていった。前回の対戦とは異なりムアントンが浦和のワイドにあまり注意を払っていなかったため、特に宇賀神友弥の左サイドから何度も攻め込んだ。ただ、矢島慎也が「前半は相手の裏が空いていたので効果的な攻撃はできていたと思うけど、最後のペナルティエリア付近で精度が落ちた」と振り返ったように、ボールを前に運んでもフィニッシュにつなげるための仕掛けの質はあまり高くなかった。
なかなか先制点を奪えない嫌な展開となったが、セットプレーが状況を一変させる。後半開始早々、マルシオ・リシャルデスのCKは相手選手に跳ね返されたものの、こぼれ球から再びマルシオがクロスを入れると、マークをうまく外してゴール前正面に顔を出した那須大亮が押し込み、待望の先制点を奪った。
これで試合の流れは変わった。ホームで勝ちたいムアントンが前がかりになると、それによって生じたスペースを浦和がうまく突き、鋭い攻撃でチャンスを作っていく。先制点から3分後、マルシオのFKから森脇が決定的なシュート。58分には柏木陽介の虚を突く素早いリスタートから右サイドの平川忠亮がクロスを入れ、矢島がゴールを脅かす。60分にもCKから森脇がフィニッシュ、その2分後には興梠慎三のスルーパスにマルシオが飛び出したところで相手選手がたまらずファウル。68分には相手GKのミスからマルシオがビッグチャンスを迎えたが、無人のゴールに決めることができなかった。
結局、浦和のゴールは1点のみにとどまったが、至上命令だった勝ち星を手中に収めた。自分たちがやれることはやった。結果的に幸運の女神が振り向くことはなく、実に悔しい結末となってしまったが、選手たちはその現実から目を背けることはしなかった。
「チームとしてはいい結果が出たけど、次のステージに進めなかった。これもすべて自分たちが招いた結果なのでしっかり受け入れて、勝ったことを次につなげられるように、リーグ戦につなげていきたい」(坪井慶介)
悲しい終焉を迎えた原因はほかならぬ自分たちにあることを理解していた。だが、選手たちは上に勝ち進めずに悔しい思いをする一方で、アジアの舞台でも自分たちのプレースタイルが通用したことに好感触を得ていた。阿部勇樹は「アジアの舞台でも自分たちのサッカーはできるという実感はみんな感じているし、その精度を高めていければ」と話す。
今回味わった悔しい思いを払拭するには、同じ舞台で結果を残す以外にない。柏木は「またここに立つためにJリーグでしっかり勝って優勝することが大事だと思う」と力を込める。来年もう一度この舞台に戻ってくるためにも、これからはJリーグに集中する。
以上
2013.05.02 Reported by 神谷正明













