首位陥落――。横浜F・マリノスは、前節のヴァンフォーレ甲府戦で引き分け、首位の座を大宮アルディージャに明け渡した。
後味も悪かった。1−0でリードし、白星を握る寸前の90+5分に甲府に追いつかれてしまったからだ。やり切れない結末を迎え、開幕6連勝の勢いの反動も起因になったのか、ゴール裏を中心に今季初のブーイングが発せられた。首位の座を守り続けることは、そう容易でないことは理解していたつもりだが、一体何が足りなかったのか。その答えを熟練の戦士、中澤佑二が教えてくれた。
「強いチームというのは1−0でリードして、したたかに2点目を取りに行く。そういうことができて初めて強いチームになる。今まで優勝してきたチームは、それができるチームですから」
要は『試合巧者たれ』ということ。中澤の話を聞きながら、最初に頭をよぎったチーム名こそ、今節の相手「鹿島アントラーズ」である。リーグ戦3連覇の黄金期を築いた名門は、「試合巧者」という言葉が代名詞と言ってもいいだろう。2009年を最後にリーグ制覇から遠ざかっているものの、いまだにその言葉を引用する記事を所々で目にする。
前節のアルビレックス新潟戦も然り。3−2の結果が示すとおり、内容自体は決して良いと言い切れるものではなかった。それでも敵将、柳下正明監督が「鹿島の選手は勝つため、得点するために一番いいことをやっている」と述べたように、柴崎岳のブレ球ロングシュートとセットプレー2発の勝負所を心得た3ゴールで、粘る新潟を突き放す。これで4月の連戦を6勝1分の無敗で乗り越え、「強い鹿島」が戻ってきたのだ。
ダビィ対中澤、小笠原満男対中村俊輔など、ビッグネームたちが対峙するマッチアップは、試合前から非常に興味をそそられる。ただし、試合の流れを決定づけるという意味で見逃せないのが、当サイトの告知フォトでコラージュされた2人によるマッチアップではないか。それは柴崎と中町公祐のボランチ対決だ。とはいえ、直接ぶつかり合う回数自体は少ないかもしれない。ともにタイプ的にはプレーメーカー。“セカンド司令塔”としてゲームコントロールと攻撃の起点となる役割を担っている。よって、どちらが高い位置でボールに絡めるかが、どちらのチームが試合の流れを掌握しているかを見定めるバロメーターと言えるだろう。
2人の特色はそれだけではない。中町はディフェンス時に中村、富澤清太郎と絶妙な距離間を計り、理詰めのプレスで相手ボランチを潰すプレーが得意。高い位置でボールを奪う回数が増えれば、チャンスが広がるのは言うまでもない。鹿島戦で中町が柴崎からどれだけボールを奪えるか。少し大げさに言えば、それが横浜FMの生命線である。
柴崎は、新潟戦での自身のスーパーゴールについて「あれは水物」とそっけなく言ったが、偶然の産物ではないことは確か。彼の的確な状況判断と技術の高さを集約させた一撃であり、2戦連続弾があってもおかしくない。中町らのプレスが甘ければ、その武器を再発動させるはずだ。
前記の告知フォトには『支配者たれ』というキャッチコピーが打たれた。このゲームの支配者として君臨するのは中町か、それとも柴崎か。
以上
2013.05.02 Reported by 小林智明(インサイド)
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