「僕の中ではシナリオ通りですね」。
前節熊本戦の前から西岡謙太は「長崎には北九州戦で勝って、9試合負けなしの状態で来てもらいたい。その方が倒しがいがある」と語っていた。そして、前節長崎が勝ったことを知ると、冒頭の言葉を口にした。思い出されるのは昨季の第10節湘南戦。開幕から9試合負けなしと快進撃を続けていた湘南にはじめて土をつけたのが水戸であった。今節狙うのは、その再現だ。
そのために求められるのがメンタル面の立て直しである。前節水戸は「今季ホーム初勝利を」と意気込む熊本の勢いに押されることとなったが、前半を粘り強い戦いを見せて1失点で抑えると、後半はペースを握り、華麗なパスワークから2点を決めて、逆転に成功した。しかし、好事魔多し。勝利をグッと引き寄せたかと思われた矢先、逆転ゴールから1分後にミドルシュートを叩き込まれ、さらに78分にCKから失点し、まさかの再逆転負けを喫したのであった。一度は逆転しただけに「ショッキングな敗戦」(柱谷哲二監督)となったのだ。そこからいかに気持ちを立て直して、今節に挑むことができるか。今節の大きなポイントとなるだろう。
今節は9日間で3試合という過密日程の最終戦であり、前節から中2日というコンディション的に厳しい状況での試合である。それだけにメンタル面が左右することは間違いない。体が言うことを聞かない状態でいかに気持ちを込めてプレーできるか。セカンドボールの争いやカバーリングなど地味な作業を90分間さぼることなく、繰り返せたチームが勝利をつかむこととなるだろう。
現在9試合敗戦のない長崎はまさにそれを繰り返してきたチームである。J2初年度ということで、常にチャレンジャー精神をむき出しにし、相手以上のハードワークを見せてきた。そして、ボールを奪うなり、果敢にゴールに向かう姿勢を繰り出し、勝利を重ねてきたのである。今節は1位神戸と2位G大阪が直接対決ということで、今節の結果次第でJ1自動昇格圏内の2位以内に入れる可能性がある。それだけにモチベーション高く水戸に乗り込んでくることだろう。疲れが見える中でもいつも通りタフな戦いをしてくるに違いない。
長崎の強いメンタルに水戸は負けてはいけない。今節は水戸のポゼッションと長崎の積極プレスのぶつかり合いが予想される。ボールを奪ってからシンプルに攻めることを得意とする長崎にとって、水戸のような“つなぐチーム”は戦いやすい相手と言えるだろう。ただ、相手のプレスを怖れていては勝ち目はない。長崎の厳しいプレスを怖れることなく、積極的にボールを動かし、長崎の守備を崩していきたい。そのためにこまめな動きを続け、パスコースを多く作る作業が重要となってくる。また、当然疲れからミスも出るし、そこから相手に速攻を食らう場面が何度もあるだろう。その際、チーム全体でカバーし合うことも求められる。チームの勝利のため、1人1人の献身的な動きこそが、勝利の絶対条件となる。
前節、水戸は負けた。敗因として柱谷監督が挙げたのが「熊本の『ホームで勝ちたい』という気持ちが上回った」ということであった。確かに前節の熊本の気迫はすさまじいものがあった。だが、その経験を糧にしなければならない。今度は水戸が「ホームで勝ちたい」気持ちで相手を凌駕する番だ。そのためには水戸を愛する者たちの熱いサポートが必要なことは言うまでもない。前節熊本も試合前から選手たちに絶え間ない声援を贈り、チームを鼓舞していた。それが「ホームで勝ちたい」気持ちにつながったのである。連戦の最終戦、苦しい状況であと一歩を踏み出せるように、選手たちを奮い立たせる雰囲気を作り出すことができるか。今節は水戸のクラブとしての総力が問われる一戦と言っても過言ではない。だからこそ、絶対に負けるわけにはいかない。
以上
2013.05.05 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第13節 水戸 vs 長崎】プレビュー:前節のショッキングな敗戦から中2日。水戸はメンタルを立て直して、9試合負けなしの長崎を止めることができるか。(13.05.05)
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