スタイル構築の真っ只中にいるチーム同士の対戦だ。群馬は今季、秋葉忠宏監督のもとポゼッションをベースにしたアクションサッカーを標榜している。一方の東京Ｖは三浦泰年監督を招へいし、３−５−２の変則システムでリーグに挑む。12節を終えた時点で群馬は20位、東京Ｖは12位と満足できる結果は出ていないが、チームは着実に成長している。今ゲームは両チームの特長を存分に発揮する舞台、スタイルを貫いた先に勝点３が見えている。

群馬は、エース平繁龍一が２連続ゴールを決めて攻撃陣を牽引している。前節松本戦では青木孝太からのパスをペナルティエリア右で受けると内へと切り返して左足でゴールネットを揺らしてみせた。前々節徳島戦では技ありのヘッドと泥臭いゴールで２得点を決めチームの連敗を阻止した。11年に東京Ｖに在籍した平繁は「攻撃が良くなってきているのでチャンスが増えてきている。３戦連続ゴールの意識はしないがFWとして毎試合ゴールを狙っていく」と３戦連続弾を虎視眈々と狙う。

平繁を２列目からサポートするのは、青木孝太、横山翔平という左利きのファンタジスタ２人だ。開幕当初は１トップ２シャドーだったため小林竜樹と青木のコンビが多かったが４−４−２のシステムに落ち着いた10節岡山戦以降３試合連続で青木、横山の組み合わせとなっている。これはバイタルエリアでのインテリジェンスを求める指揮官の思惑が絡んでいる。

前節初アシストを決めた青木は「攻撃の連係が上がってリズムが良くなっている。ここから連敗した分を取り返したい」と結果へのこだわりみせる。青木、横山の創造性溢れるプレーからゴールが生まれれば群馬のクオリティはワンランクアップする。さらに中２日の過密日程で迎える今ゲームは、ケガ明けの後藤涼、永田亮太、保崎淳の復帰が濃厚で、経験豊富な３選手のプレーがチームのアクセントとなる。

敵地正田スタへ乗り込んでくる東京Ｖは、前節ホーム横浜FC戦で１−３で敗れて開幕戦以来10試合ぶりに黒星を味わった。今季の東京Ｖの特長のひとつはリーグ屈指の堅守。前々節までの失点はわずかに５で内容が悪い試合でもドローで乗り切り無敗記録を伸ばしていたが、前節は守備に綻びが出て３失点を喫した。前節後、三浦泰年監督は「集中力の欠如による失点、過度に相手を意識し過ぎたプレーによる失点がもったいなかった」とコメントしたが、群馬戦へ向けて再び守備の手綱を締めてくるのは確実。東京Ｖの３バック対策を練る群馬は堅守を崩さない限り、勝利は見えない。

東京Ｖの注目選手は、2009年に群馬でプレー（浦和から期限付き）した小池純輝だ。FWとしてやってきたが、同年開幕２戦で左サイドバックとして初めて起用されると開幕３戦で衝撃のミドルシュートを突き刺してサイドプレーヤーとしての才能の片鱗をみせた。水戸時代は、群馬・秋葉監督（水戸コーチ）の指導を受けるなど、群馬とはなぜか不思議な縁がある。サイドの適正を見出された正田スタ、そして秋葉監督の前で小池がどんなプレーを披露するか楽しみだ。

今季２勝４分６敗の群馬だがホームでの成績は２勝１分２敗。アウェイでの３分４敗を大きく上回っている。対する東京Ｖは敵地で０勝４分と未勝利だ。（ホームは３勝２分２敗）。秋葉監督は５日の練習後に「僕らはホームの力で勝つことができている。サポーターと一緒にスタジアムで戦って、群馬を盛り上げたい」と話していたが、ゴールデンウィーク最後のホームゲームをスタジアム全体で熱く演出できるかも勝利へ向けての重要な要素となる。チーム、クラブ、サポーターが一体となって東京Ｖを迎え撃つことができれば結果は自ずとついてくる。

以上

2013.05.05 Reported by 伊藤寿学