前々節（第12節）の愛媛戦でＦＷケンペスとＤＦ山口智の得点で５試合ぶりの勝利を収めて迎えた前節（第13節）の岐阜戦。Ｊ２リーグ得点ランキングでトップのケンペスが累積警告による出場停止という状況下で、ボールを支配して主導権を握り続けたものの決定機は少なかった。それは今季の千葉の攻撃には選手がポジションを頻繁に入れ替えて前に出る連動性があまり見られず、相手の守備の隙を突く意外性や迫力の不足にも起因している。

前節は前半に微妙な判定で得たＰＫを山口智が蹴ったものの、ＰＫセーブ率が非常に高い岐阜のＧＫ時久省吾の好守に阻まれてノーゴール。試合を通して16本ものＣＫがあったが得点機を生かせず、86分にＣＫのボールがＭＦ米倉恒貴に当たったあとのこぼれ球が交代出場のＦＷジャイールに当たる形でようやくゴールが生まれた。後半にはピンチもあったが１−０で勝ち、今季２度目の連勝。決して綺麗な形ではなかったが、岐阜の選手の前に体を入れてゴールを狙おうとした米倉とジャイールによって生まれた泥臭い決勝点だった。

富山は鳥取と対戦した前節（第13節）は、７分にＣＫからＤＦ舩津徹也が打点の高いヘディングシュートを決めて先制。優位に試合を進めたものの追加点を奪えず、ＧＫ守田達弥の負傷で出場機会を得たＧＫ飯田健巳がロングボールの処理を誤ったことで与えたＣＫのこぼれ球を鳥取のＭＦ奥山泰裕に蹴り込まれて１−１で引き分けた。あとわずかで４試合ぶりの勝利を逃したわけだが、アンカーの前の４人の選手と１トップの選手がここぞという場面で次々と素早く前線に飛び出してくる富山の攻撃は非常に迫力がある。対戦相手にしてみれば富山の選手をつかまえにくく、相手のセットプレー時やサイド攻撃ではボールサイドに意識が行きがちでボールがないところの相手の選手をフリーにしてしまいやすい千葉にはとても危険な攻撃だ。また、昨季の攻撃は前線にロングボールを入れる形が目立ったが、今季は最終ラインからパスをつなぐ形が多く、パス回しに連動性がある。そして、富山と千葉の前節を振り返ると攻守でセットプレー（特にＣＫ）がカギになりそうだ。

千葉と富山の対戦成績は千葉の３勝２分１敗だが、千葉は2011年Ｊ２リーグ第19節での２−１の勝利以来、２分１敗と勝てていない。勝った３試合のスコアはいずれも１点差と富山には苦戦している。千葉が過去にＪ１で優勝争いやヤマザキナビスコカップ優勝という結果を出していた頃は、豊富な運動量や質のいいハードワーク、賢い走りがチームを支えていたが、今季はチーム全体の運動量が少なく、スタミナが早く切れる選手も目立つ。富山の迫力ある攻撃を封じ、逆に迫力ある攻撃で得点するには、小手先の技術ではなく的確な状況判断に基づいたハードワークが必要不可欠だろう。

今季のホームゲームの観客数が10,000人超えとなったのは開幕の札幌戦と前述の愛媛戦だけの千葉は、今節で『10,000人プロジェクト2013』を行ない、観客数が10,000人を超えたら来場者全員に６月の千葉のホームゲームで使用できる招待券の引換券をプレゼントする。昨季も千葉は『10,000人プロジェクト』を行なったが、そのきっかけは今節の開催日の５月12日が誕生日のＭＦ兵働昭弘のヒーローインタビューがきっかけだった。今節はまた『グランスタ母の日マッチデー』で先着1,000名に千葉県産カーネーションがプレゼントされ、『ふれあいパスポート』提示で市原市と千葉市の小・中学生はホーム自由席小中の入場券が300円で購入できる。多くのかたにこの機会にフクアリで観戦していただきたいし、千葉には「また試合を見に行きたい」と思わせるような勝ち試合を見せてほしい。

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2013.05.11 Reported by 赤沼圭子