スピーディな展開とハードワークに見応えのあるゲームだった。MF関戸健二、FW押谷祐樹ら、このゲームでシュートを放った岡山の選手は、「俺が決めていれば」と試合後に語った。なかでも押谷とMF石原崇兆は「俺の責任です」と、語った。幾度も作り出したビッグチャンス、これらを決めきることは叶わなかったが、PKのキッカーに名乗り出た石原、やり直しのPKに挑んだFW荒田智之を含め、その戦う姿勢は誇らしい。岡山がここまで戦うチームであり続ければ、いつか重要な局面で報われるだろう、そんな確信が持てるゲーム内容だった。

岡山にとって６月唯一のホームゲームは、ほぼ２週間ぶりの雨に見舞われた。しかし朝から降り続いた雨もキックオフ前には上がり、kankoスタジアム上空には、見事に半円を描くダブルレインボーが浮かんだ。先発メンバーは岡山、福岡ともに前節から３人を入れ替え、トップに押谷、シャドーに関戸、ダブルボランチの１枚にMF島田譲が入った。福岡は前線にFW坂田大輔、MF石津大介、アンカーの位置にMF中原秀人が入った。

たっぷりと水分を含んだピッチで、序盤から激しいバトルが繰り広げられた。立ち上がりのビッグチャンスは岡山。CKから続けざまに放ったMF田所諒の２本のシュートが、枠こそ捉えられなかったものの、いいリズムを生み出す。一方の福岡はMF石津の左サイドの突破からチャンスを作るが、岡山の３バックは貫禄さえ感じさせる落ち着いたプレーでリスク管理し、クリアする。

福岡のプレスがこのゲームでそれほど激しくなかったのは、「相手の前３枚にうまくボールを持たせて、相手の３バックのラインを高めにして、ボールを運んでもらうことによって背後のスペースが空くようにという意図だった」と石津。ゲームが動いたのは前半16分。岡山が左サイドで田所が仕掛けるところを、福岡のFW城後寿が止めようとしてファウル。ボランチ・仙石廉のFKをDF植田龍仁朗がマークのDFとともに倒れ込みながら頭で決めてゴール。この後も岡山は押谷の仕掛けや、右ワイド田中奏一の突破、関戸のミドルシュート、そして石原のドリブルが躍動する。

福岡はペナルティーエリア手前でのスピードダウンやミスから決定機を迎えるには至らなかったが、徐々に左SBの堤俊輔の上がりやリズムを取り戻す。ショートパスを繋いだ厚みのある攻撃を見せた直後の前半41分。石津のFKをFW坂田が頭でそらして、ゴール右に流し込んで同点に追いつく。

見応えのあるシーンは多かったが、ゲーム終盤の山場は後半43分。岡山は交代出場で入ったFW妹尾隆佑からのクロスを受けた石原がペナルティーエリア内で倒されPKのチャンス。石原自らが蹴るが、GK神山竜一が先にゴールラインを出たため、やり直しとなる。２度目のPKは荒田智之がキッカーを務めたが、これはポストに当たる。その後４分間の後半アディショナルタイムまで互いに走って攻め、守る死闘となったがスコアは動かず、ゲームは１―１で終了した。

「勝点２を落としたことは悔しいですが、それ以上に、選手が見せてくれたピッチの上での戦う気持ち、振る舞い、勝ちにこだわって最後まで走る姿勢を僕は褒めてあげたい」と岡山の影山雅永監督。この言葉が正義だ。

以上

2013.06.16 Reported by 尾原千明