「自分も少し早いとは思ったんですけれど…」。神戸・安達亮監督は試合後の記者会見で苦笑いを浮かべた。68分にDF金聖基を入れて慣行した5バックシステムについてである。時間にすれば、アディショナルタイムを入れて約25分。金も「勝っている状況では常に出番が来ると思っているので…。まぁでも、ちょっと長いかなぁとは思いましたけれど(笑)」と、試合を振り返った。
もちろん、この“逃げ切り大作戦”に賛否両論はあるだろう。ただ、神戸がこの愛媛戦に掛ける熱い想いは充分に伝わった。
前節の岡山戦。神戸は開始2分にアンラッキーな失点を食らい、その後は再三にわたって相手の守備網を崩したが、結局この1失点に涙を飲んだ。記者会見に臨んだ安達監督は敗戦の苛立ちもあってコメントは極めて少なめ。記者たちの質問に対しても一言二言で終わらせるほど悔しさをにじませていた。
「非常に悔しくて、かなりイライラしていて、非常に失礼な態度で会見に臨んだことを今ここにいる方にだけでもお詫びしたいと思います。本当に失礼いたしました」と愛媛戦の記者会見を始めたのも、そんな経緯があったから。ロングタイム5バックを慣行した裏には、そんな背景もある。
愛媛戦の前半。絶対に勝つという意気込みで挑んだ神戸は、開始早々から厳しいプレッシングをかけた。ポポと都倉賢の2トップが積極的にボールを追い、小川慶治朗、杉浦恭平、橋本英郎、エステバンが連動して高い位置でボールを奪いにかかる。狙いは「多少は相手にボールを持たれても、それを奪ってカウンターを狙っていく」(安達監督)という打ち合い。愛媛の石丸清隆監督が「相手の圧力とスタジアムの雰囲気に飲まれた」と話すように、神戸の気迫は愛媛の最終ラインをジリジリと後退させていった。実際、ピッチで対峙した愛媛のDF浦田延尚は「相手の圧力に圧されてミスが多かった」と振り返っている。それほどこの日の神戸は闘志をむき出しにしていた。
その圧力が実ったのは前半7分。左サイドバックの林佳祐が相手DFの裏へロングフィードを送ると、それに都倉賢が反応。得意の左足で強烈なシュートを放ち、愛媛のGK秋元陽太が弾いたボールを最後はポポが押し込んだ。泥臭い、でも気持ちのこもった見事なゴールだった。
その後も気迫のプレスを続けた神戸は、追加点こそ奪えなかったものの愛媛のシュートをわずか1本に抑えて前半を折り返した。
後半。「ビビってプレーするな。自分たちからアクションを起こせ!」という石丸監督の檄を受けた愛媛が反撃を開始する。49分頃には、右ワイドの石井謙伍が神戸のイ・グァンソンのパスをインターセプトし、そのままミドルシュートを放つ。これを機に愛媛がコンパクトさを保ちながら全体的に前へ押し込むと、ボランチのトミッチを軸にタテへのくさびのパスが入り出す。ビビらず、DFラインを高く保てたことでセカンドボールも拾えるようになった。完全な愛媛タイムだった。
ただ、これも長くは続かなかった。流れを断ち切ったのはポポだった。61分、果敢にボールを追い回したポポは、愛媛のボランチ村上巧からボールを奪うとそのまま左サイドを突破。これに連動した都倉がニアでパスを受け、ワンタッチで愛媛ゴールへ流し込んだ。この追加点で完全に愛媛の流れを断ち切った神戸は、“港町のカテナチオ(5バック)”で2点リードを死守した。
これで神戸は首位G大阪と勝点2差に。次節のホーム富山戦に勝てば首位奪還の可能性が出てきた。次節で首位に返り咲けなくても、G大阪との直接対決(7月20日@万博)に向け、非常に大きな勝点3を手にしたと言える。
しかも、相馬崇人、奥井諒、河本裕之らを負傷で欠いた中での勝利は、リーグ後半戦を戦う上で大きな収穫でもある。この勝点3の意味は非常に大きい。
逆に愛媛は「反省点しかない試合だった」と浦田が言い残したように、ほとんど収穫のないまま神戸戦を終えてしまった。次節・徳島戦までの1週間で、石丸監督は「選手を見極めながらもう1回、戦えるチームにして挑みたい」と言う。この敗戦をプラスに転じられるかどうかは“四国ダービー”の結果に委ねることになった。
以上
2013.07.08 Reported by 白井邦彦















