「山形の攻撃力」と「長崎の運動量」。矛と盾ではないが、特長ある2チームがぶつかる時、どんな楽しいゲームが生まれるのだろう。そういった意味で注目された試合だった。山形は前線に林陵平と中島裕希という強力なストライカーを擁しており、長崎は前からのハイプレッシャーが大きな武器だ。
試合開始直後は山形がその攻撃力の片鱗を見せつける。3分、廣瀬智靖が6試合ぶり先発の高杉亮太から高い位置でボール奪うと、ファーストシュートを放つ。スタジアムの誰もがそのスピードにいきなり驚かされた。9分には林がDFラインの裏のスペースに抜け、飛び出したGKの金山隼樹と1対1に。これは金山が判断良く弾くも、長崎は冷やりとさせられる場面が続く。15分には中島がマークについていた趙民宇を振り向いてかわすなど能力の高さを見せ付けると、18分には秋葉勝からのパスを受け、DFのマークを動かしてシュート。これが趙に当たって方向が変わり、山形は簡単に先制点を挙げた。これで山形の流れになるかと思われれたが、その後は運動量で勝る長崎が徐々にペースを握る。
長崎は32分、金久保彩が蹴った右CKをファーサイドの高杉がニアに折り返すと山口貴弘が詰めて同点に追いつく。山口は2試合連続ゴールとなった。すると36分には左からのCKを同じように佐藤洸一が折り返し、今度は高杉が滑り込んで追加点を挙げた。
後半に入っても長崎のペースは変わらず、59分には波状攻撃を見せ、山田晃平や幸野志有人が連続してシュートを放つもネットは揺らせない。すると徐々に運動量が落ち、互いにゴール前に迫ることが少なくなりタイムアップ。長崎は2連勝、山形は2連敗となった。
試合後、長崎の高木琢也監督が「山形とは2巡目の対戦ですが、前回は何もできない感覚でやられました。さらに前節の北九州戦は勝ちはしましたが、内容がほとんどなかった試合でした。今日の試合はいろんな意味が複雑に重なり合った試合でした。そして、それらを全て払拭できた内容でした」と会見で話したように、今回の山形戦は長崎にとっては大きな意味を持つ試合だった。
長崎は3月にアウェイで山形と対戦し完膚なきまでに叩きのめされた。山田も「選手は誰もあの悔しさを忘れてはいない」と話しており、選手らは悔しさを胸に秘めて前半戦を戦ってきた。それが「走らなければ、自分たちは勝てないんだ」という覚悟につながり、躍動感にあふれる自分たちのサッカーが生まれ、ついには見ていて楽しい「イケイケフットボール」へと繋がり、チームは自信を深めることができた。山形戦の敗戦を教訓とし、選手は明らかに成長した。
そういった意味で、長崎にとってはこれまで積み重ねた経験を山形相手にぶつけようという、いわば今季前半戦の集大成のような位置づけの試合だったのだ。大きな価値を持った勝点3となったに違いない。
一方の山形にとっては、立ち上がりは脅威を与えることができたが、徐々に長崎の運動量に押され、FWの林と中島になかなか良いボールが入らず、2人の放ったシュートは中島の2本だけとなった。決定的な場面を作ることができず、長崎のスタジアムが悲鳴に包まれることはほとんどなかった。秋葉やロメロ・フランクが長崎の岩間雄大と井上裕大が抑え込まれ、簡単には前へと繋がせてくれなかった部分が勝負を分けたといえる。
また、セットプレートとはいえ守備の綻びを突かれた。山形はこれまでもセットプレーからの失点が多かっただけに、試合後の会見で奥野僚右監督も「ボールウォッチャーにならずに、しっかりと捕まえなければ」と話していた。
後半戦はプレーオフ進出に焦点を当てた戦いもいよいよ本格化。山形は2連敗となったが、6位以内を目指した戦いに食らいついてきたい。
以上
2013.07.08 Reported by 植木修平















