名古屋にとっては悪夢の3分間だった。演出したのは大宮の青木拓矢。大宮1点ビハインドで迎えた後半、62分のノヴァコヴィッチへのスルーパスと、65分の長谷川悠への縦パスが、いずれも名古屋の急所を射抜く。得点者2人のシュート技術の高さとともに、「相手(の守備)にちょっとルーズなところがあった」(青木)、その隙を見逃さなかった青木の戦術眼の高さも讃えられるべきだろう。前節の鳥栖戦では前半に得点して自らペースダウンした結果、後半には自分たちのサッカーを取り戻した鳥栖に主導権を奪われて同点ゴールを許し勝点2を失った大宮だが、この試合は立場をまったく逆にした展開で勝点3を手にした。
開始4分、左サイドのチョ ヨンチョルを起点にノヴァコヴィッチ、長谷川とつないで、右サイドからの長谷川のクロスをファーに走り込んだヨンチョルがシュート。試合の入り方はそう悪くなかったが、7分、すぐそばにケネディがいる状態でバックパスを受けた高橋祥平が、ドリブルで打開を図った結果、詰めた中村直志にボールをさらわれ、前に出ていたGK北野貴之の頭上を抜かれ失点。いきなり「苦しい展開になった」(金澤慎)。
名古屋はしたたかだった。中断期間に準備した超攻撃的新戦術は封印し、重心を後ろに置き、4−4−2の守備ブロックを作って大宮の攻撃を受け止め、攻撃では手数をかけずに前線のケネディにボールを集め、カウンターとセットプレーで追加点をねらう。「こっちがやりたいことをやらせないように練習してきてるなという感じがあった」と金澤が語るように、名古屋の守備はコンパクトさを保って、サイドチェンジと縦パスに対しては上手くコースを消してきたため、大宮はテンポ良くボールを回せず、攻撃は停滞した。
ただ、30度を超える暑さのせいだろうか、30分を過ぎたころから名古屋の守備からタイトさが失われていく。縦のコンパクトさは保たれていたが、横へのスライド、絞り込みが緩慢になり、なかなか入り込めなかったバイタルエリアに大宮の選手が侵入し始める。そして「0−1で折り返せば、向こうも体力的に落ちるだろう」という渡邉大剛の計算は、そのまま現実となった。
後半、ストイコビッチ監督には「我々の選手がプレーをやめてしまったように見えた」という。間延びした名古屋の守備ブロックの間を、大宮のDFラインから、ボランチから、鋭い縦パスが面白いようにトップに入る。そのトップからサイドに展開してクロスが入り、名古屋はそれを警戒してさらに守備ブロックの間が空く悪循環に陥った。ノヴァコヴィッチの同点ゴールは完全にカウンターの形だったが、長谷川の決勝弾では「1失点目で集中力が落ちてしまった」(ストイコビッチ監督)ように、後ろに人数が十分にいながら、ペナルティエリア手前やや左で受けたストライカーに対し、ダニエルも田中隼磨も5メートル以上も間合いを空けていたのである。
目を覚ました名古屋は矢野貴章、田中輝希、ヤキモフスキーらアタッカーを次々にピッチへ送り出すが、大宮も片岡洋介を投入して5バックで対抗。67分、藤本淳吾のスルーパスに反応した矢野がペナルティエリア内で村上和弘ともつれながら倒れるが笛はなし。75分には激しくボールを奪いあった中村直志とノヴァコヴィッチが2人とも負傷退場し、場内に不穏な空気が漂う。
猛攻の名古屋は88分ついに闘莉王が前線に。しかし「(パワープレーに対しては)試合前にシミュレーションしていた」(金澤)大宮は、5バックに加えてヨンチョルや金澤もDFラインに入り、7バック状態で必死の防戦。アディショナルタイムは、大宮にとって長く、名古屋には短かった。92分、混戦からゴール至近距離で田中輝希がシュートを放つが、北野が魂の顔面ブロック。オレンジの悲鳴と赤の落胆。最後まで大宮ゴールは割れなかった。
名古屋は追いつくチャンスは確かにあったし、小川佳純が2度ペナルティエリア内で決定的なシュートを放つなど、逆転される前に突き放すチャンスもあった。ただそこで決めきれなかったことと、暑さに体力を奪われ、悪い流れを変えることができなかった。悲観するほどの内容ではないにしても、うまく試合をコントロールしていた前半30分までにはあったチームの連動性が、それ以降の時間帯に失われてしまったのは、見過ごすことのできない課題のように思える。
一方、大宮の生命線は連携にあり、縦パスとカウンターという磨き続けてきたベルデニック戦術のキーワードで見事に逆転勝利を収めた。「ミスから失点したことでメンタル的に難しくなった」(ベルデニック監督)試合を、「普段やっていることをゲームの中で出せるようにみんな意識した」(金澤)ことで主導権を奪い返した。このたくましさは、確かに指揮官が就任した1年前にはなかったもので、「選手たちの成長を感じた」と、試合後の会見で指揮官は目を細めた。
浦和が引き分けたことで大宮は、2位との勝点差を5に広げた。しかし担架でピッチを後にし、松葉杖でスタジアムから去ったノヴァコヴィッチは、おそらくすぐには復帰できないだろう。もう1人のスロヴェニア代表FWズラタンも別メニュー調整が続いており、この日もベンチ外。明後日の次節、大一番となる4位の横浜FM戦をこの2人抜きで戦うことになる可能性は高い。上(位争い)でのハラハラドキドキも経験してみるとなかなかに胃が痛いものであることを、いま大宮のファン・サポーターは味わっている。
以上
2013.07.11 Reported by 芥川和久
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