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【J1:第15節 広島 vs 川崎F】レポート:数々の記録に彩られ、巨星が輝く。7月10日は、寿人の夜(13.07.11)

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佐藤寿人、佐藤寿人、佐藤寿人。
公式記録の得点者欄に3度、その名前が刻まれたのは、今季2度目のこと。彼自身としては通算5度目、Jリーグ通算200回目となるハットトリックによって、佐藤は川崎Fを粉砕した。対川崎F戦でのハットトリックは、佐藤にとって2度目。仙台時代には後半アディショナルタイムに立て続けに2点を奪って引き分けに持ち込み、昨年も2試合で4得点。今回のハットトリックによって、19試合15得点と記録を積み重ねた。川崎Fキラーの面目躍如と言っていい。

この試合における彼の偉大さは、自らのゴールによってゲームの様相を変え、勝利をたぐり寄せたこと。支配者は佐藤寿人だ。85分、野津田岳人と交代してベンチに下がる11番に対し、エディオンスタジアム広島に集ったサポーターは、スタンディング・オベーションを贈った。その拍手の音量は巨大にふくれあがり、広島の夜空へと拡散していったのだ。

寿人劇場は突然の開幕だった。そこまでシュートはゼロ。立ち上がりは稲本潤一の強烈なシュートがバーをたたくなど、川崎Fにペースを握られ、広島のエースはボールにもほとんど触れない。42分、ミキッチのクロスが入った時も、ボールは佐藤の頭上を超えていくだけ……かと思った。
きっかけは、石原直樹がクリアボールをダイレクトでシュートしたプレー選択。ジャストミートしたボールは、強烈な回転がかかってGKを襲った。
「はじく!」
5m前にいたストライカーは、瞬間的に筋肉を起動させ、フルパワーでスタートを切る。シュートの質から、ボールのこぼれる方向も正確に予測し、まったく淀みなし。杉山力裕が飛びつき、田中裕介がカバーするも、佐藤はそこにひっかからないようフワリと浮かす。ラインを横切るように右足から飛び立ったボールは、逆サイドのポストに当たってゴールの中へ。

全ての神経をゴールに集中させる佐藤寿人らしいゴールが生まれたその4分後、ゴラッソ(美しい得点)が生まれる。山岸智がボールを持つ。ペナルティエリアの中の紫は3人。しかしそこに、11番はいない。
山岸、クロスではなく横パスを選択。上がっていた水本裕貴を使おうという意図だ。ミドルの体勢。だがシュートを意識した水本の背中から「オーバッ」の声が聞こえた。スルーしろ、という指示だ。
「見えなかったんだけど、たぶん寿人さんだと思った」(水本)
組み立てに参加しようとポジションを下げた佐藤が、走ってくる。背番号4、ボールを股下に通す。背番号11、ダイレクトで左足。美しい軌道のボールには誰も触ることが許されない。「多くの選手が絡んでのゴール。今日の自分のベストです」とストライカーも納得のゴラッソだ。

ただ、試合の白眉は、なんと言っても3点目だろう。そのクライマックスに至るまでの物語を、ここで記しておく。
59分、大久保嘉人のフリーランにDFが2人引きつけられ、結果としてフリーとなった中村憲剛が決めて1点差。ショートコーナーから中澤聡太がヘッドで決めて同点。その後も川崎Fがずっとペースを握った。風間八宏監督が切った「3−4−3」というカードが功を奏し、厚みのある攻撃は破壊的。森崎和幸や水本が水際で止めて、なんとか凌いでいる状態だった。
森保一監督は、まず清水航平を左サイドに、そしてファン・ソッコを右サイドに投入。沈滞していた両サイドを活気づかせた。それが、山場に向かうまでのプロローグ。ゴール前に張り付いた状態から脱することには成功した。しかし、勢いはまだ、川崎Fにある。
80分、青山敏弘がダイレクトで縦パス。過去、何度も何度もゴールを生み出してきた、局面を変える一発のパスは、佐藤寿人の栄養剤だ。フワリと浮いたボールは、ワンバウンド。そして佐藤の左足に引力があるかのごとく、吸い付いた。
その落ち際をストライカーはたたく。
浮いた。落ちた。入ったっ。
サポーターの方向に走る。トレードマークの、コーナーフラッグ・パフォーマンス。拍手、そしてまた拍手。賞賛の声、叫びが止まらない。
後に映像で確認すると、青山のパスが出る前、石原が稲本のタックルを受けたその瞬間、微妙にポジションをずらし、DFのマークを外しながら青山のパスを呼び込んでいる。ポジションと動きだしで勝負する頭脳派らしい、クレバーなゴール。GKの位置取りの甘さを鋭く突いた、らしさに満ちたハットトリックは、J1+J2通算得点ランキングでもジュニーニョ(川崎F)に並ぶ179得点目だ。
ファン・ソッコのゴールでダメを押した広島は3位に浮上した。ただ勝敗はともかく、両チームとも持ち味を発揮した、まさにスペクタクル・ゲームだった。その主役兼演出家は、佐藤寿人という巨星。エキサイティングマッチで盛り上がった「寿人の夜」は、余韻がいつまでも冷めなかった。

以上

2013.07.11 Reported by 中野和也
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