サッカーを簡単に理解する方法の一つとして、システム論は有効であろう。その日のそのチームが採用する最終ラインの選手の数を手がかりに、そのクラブの戦いについてある程度の深みを持つ議論を成立させる事ができるからだ。そもそもシステム論がわかりやすいのは、明確に最終ラインの枚数がはっきりと視認できるから。誰もがそのチームの戦いを見て最終ラインの枚数を認識する事ができる。もちろん、攻守それぞれの局面において枚数が変化するチームはあるが、それも一度法則を覚えてしまえば理解はそう難しくはない。
それに比べると、たとえば「FWの選手の前からのディフェンスが良かったね」だとか「今日はボランチが効いてる」などという、サッカーを評価する際に使われる典型的な言葉は、意外と検証が難しいもの。だからこそ、システム論を手がかりに議論する向きは多い。
ここ3試合、川崎Fは4バックで作ってきたチームをベースに、オプションとして3バックを使いこなして結果を出している。相手との組み合わせを踏まえたものではあるが、4バックでうまくいかないならば、うまくいかないなりに3バックに変更するその戦いぶりは、最終ラインの数の変化として戦術の変更が明瞭にわかるだけに、理解しやすいものである。4バックである程度成果を出してきた川崎Fが、新たなオプションを手に入れるべく3バックの戦いにも着手している。練習でも相手ボールの際の守り方を確認し、それを紅白戦に落としこむ。そうした手順を踏んで、川崎Fが新たなオプションを手にしつつある。
とここまでフォーメーションを手がかりに原稿を進めてきたが、オプションを一つ増やす形となった風間八宏監督は常々「サッカーはシステムではない」と口にしてきた。すなわち、「システムをみんなが理解するのではなく、自分が何をしたいのか、するべきかということを理解する。その上で足りないテクニック、それをいろんな選手によって違うセクションでトレーニングさせているだけ」だと説明する。
同じようなことは中村憲剛も口にしている。いわゆるトップ下や、3トップの一角としてもプレーする中村憲剛は「システム云々じゃないとは言われてますが、俺としては個人が自律して自分がその立ち位置でどうやるかが大事。あまりポジションに囚われすぎてもよくないし、トップ下だ、FWだのやってますが、ポジションがない、と言ってもいいくらい」だと話す。だから「しっかりした技術があって、頭の中にしっかりした戦術眼があれば、別にポジションなんかどうでもいいよね」と言い切るのである。だから「別に俺(中村憲剛)が下がっても、後ろのやつ(2列目以降の選手)が前に行ってそこでFWと代わればいいだけ」だと話す。FWやボランチといったポジションという記号で縛られるのではなく、個人個人が、時々刻々と変化する戦況やポジションで何をどうするべきかを理解しておけばいいという考え方に立っているのである。すなわちそれが、風間監督が言う所の「サッカーはシステムではない」という言葉の本質である。
システムというサッカーを理解する上でわかりやすい記号をあえて否定する「サッカーはシステムではない」という言葉。この言葉の意味が浸透しつつあるという点で、風間イズムが徐々に川崎Fに植え付けられつつあるという事が言えるのかもしれない。
3バックという新たなオプションが試合開始時から使われるのか。それとも試合がうまくいかない状況で使われるのかはわからない。ただ、川崎Fがホームに迎える湘南は、川崎Fにとって絶対に負けられない試合であるのは間違いない。田中裕介はリーグ戦・ヤマザキナビスコカップでの今季2度の対戦でそれぞれ引き分けてしまった湘南について「ホームで落とすということは、ありえない。本当にこっちが上なんだというところを見せたい」と話し、自らを追い込むような強い言葉で勝利への意欲を見せている。まずはACL圏内。そしてその上を目指すために、ここでは負けてられないという強い思いがこうした言葉になって出てきたのは間違いない。そしてそう思うのにはそれなりの根拠があるのも事実であろう。川崎Fの選手の間には、守備はさておき、攻撃ではどの試合でも点が入るような手応えがあるのだという。実際に川崎Fは、遅攻でも速攻でも攻めの形ができつつある。
湘南にしてみれば、今季2度の対戦は2試合とも湘南が先制しての2引き分けとなっており、川崎Fに対しては悪い印象を持っていないのかもしれない。17節を終えて勝点13の17位と降格圏に沈んでいるだけに、なんとか勝点を持ち帰りたい試合であろう。
その湘南の特徴は試合開始直後から仕掛けられる前線からの激しいプレスである。前節の新潟戦は、そのプレスによって新潟のパスワークを分断し、何度となく新潟陣内に攻め込んでいる。しかし手にした決定機をものにできず、逆に川又堅碁に2ゴールを決められ、苦杯をなめる結果となった。内容を伴っていながら勝てなかっただけに、メンタルの部分が問われる試合になるかもしれない。
個別に見ていくと、東アジアカップに招集されたハン・グギョンが、刺激を受けたであろう代表での戦いを踏まえ、どのようなプレーを見せるのかがポイントの一つになるはず。また、そのハンと永木亮太とのボランチコンビの完成度が試合の行方を左右するのは間違いない。この永木とともに、川崎Fの下部組織出身でリーグ戦でもゴールを決めている高山薫の運動量と、ゴールへの貪欲さにも注意する必要がある。
また、5節に行われた湘南とのリーグ戦において、決定機をセーブされた登里享平をして「切腹したい気分です」と言わしめたGKの安藤駿介は御存知の通り川崎Fからの期限付き移籍中の選手。この試合でも先発が予想されるが、ファインセーブを連発するとして評価されており、この試合でも川崎Fの前に大きな壁としてたちはがかる事になりそう。古巣を相手に燃える安藤のゴールをしっかり破り、勝点3を手にしたいところだ。
なお、新加入のブラジル人2選手、アラン・ピニェイロとロブソンは選手登録が間に合わず、この湘南戦での試合出場はかなわない。移籍直後という事もあり、気候の変化や、移動の疲れなどが蓄積しているはずで、まずは等々力の雰囲気を味わってほしいところだ。
以上
2013.07.30 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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