スタジアム周辺に長蛇の列を作った約3千人の松本サポーターは開場とともにアウェイ側スタンドとメインスタンドの一部を埋め尽くした。ゴール裏を緑一色に染めた松本サポーターは迫力のコールで選手たちを鼓舞していく。だが群馬サポーターも負けてはいなかった。、ホームジャックを阻止すべく、いつも以上の気迫でスタンドを盛り上げる。今ゲームは、チームだけではなくサポーターのプライドを懸けた戦い。その勝負で、群馬が松本を木っ端みじんに粉砕した。
群馬は前節に続いて3バックを選択。左から小柳達司、乾大知、有薗真吾を最終ラインに配置する3−4−3のシステムで松本を迎え撃つ、一方の松本は、勝利を収めた前節北九州戦と同じ先発メンバーでゲームへ挑む。この日は、2年前に急性心不全で亡くなった群馬県出身元日本代表(前松本山雅)DF故松田直樹さんの命日だったことから試合前にはスタジアムで黙祷が捧げられた。
これまでの鬱憤を晴らす爽快なゴールラッシュだった。幕開けは、乾大知のゴールだった。19分に右CKを得た群馬は、横山翔平がニアへボールを送り込む。それを乾がヘッドでねじ込んでまず1点目。「ブロックでマークが外れたのでフリーで飛び込むことができた」(乾)。先制点で勢い付いたチームは攻守に連動した動きで松本を圧倒すると、42分には平繁龍一のパスを受けてペナに入った永田亮太がゴールネットを揺らして追加点を奪うことに成功。2−0で前半を折り返す。
後半、群馬は松本の反撃を決死の守備でブロックしていく。3バックの3人が体を張った守備で松本のチャンスの刈り取り、チーム全体に勇気を与えていく。前半に喜山康平のミドルを間一髪はじき出すなど攻守をみせたGK北一真は「DF陣がセットプレーでも体を張ってくれたし、シュートブロックにも入っていた」と3バックを評価。守備の奮闘が終盤のチームに力を与えた。83分には平繁のパスを受けてペナ左へ進入した青木孝太が3点目のゴールを流し込んでゲームを決めた。この日の群馬が、松本に負ける要素は一つもなかった。
松本は序盤こそ塩沢勝吾、船山貴之、楠瀬章仁の前線3枚のゴリ押しな動きで群馬に圧力をかけたが先制点を許したことでリズムを引き寄せられなかった。また追加点を許した時間帯も悪かった。攻撃ではチャンスがないわけではなかったが、群馬の粘りの守備に行く手を阻まれて得点を奪えなかった。反町監督は「浮ついたプレーが自滅につながった」と独特の言い回しで敗因を分析。選手の気持ちに隙があったことを認めた。松本は、気持ちを切り替えて徳島、千葉との上位対戦へ向かう。
群馬は、チーム、クラブ、サポーターが一体となった戦いで6試合ぶりに勝利を収め、最下位脱出を果たした。だが1勝で気持ちを緩めている暇はどこにもない。他カードをのぞけば残留争いのライバルである北九州と富山が勝利を収めて勝点を伸ばし、鳥取、熊本、愛媛が勝点1を得ている。下位脱出への道のりはまだ険しい。勝点を奪い続けるしか生き残る方法はないのだ。「1戦1戦に魂を込めて戦うことが残留につながると信じている」(秋葉監督)。苦しみを乗り越えて勝利をつかんだ群馬は試合後、ピッチ中央で選手・スタッフ全員が勝利の円陣を組んだ。サポーターとともに奪ったこの勝利は大きな価値がある。
以上
2013.08.05 Reported by 伊藤寿学













