長崎は前節、水戸に全く自分たちのサッカーをさせてもらえず、終了間際のカウンター２発で沈んだが、実はそれ以前の数試合から自分たちの持ち味であるアグレッシブなサッカーを表現することができていない。対戦も２巡目に入り、研究されてきている部分もあるが、運動量を生かした持ち味のアグレッシブなサッカーをすることで復調のきっかけを掴みたいと考えていた。一方の愛媛は3連敗と深刻さは長崎よりも上。得点も3試合なく、とにかくまずは得点を欲していた。

そんな課題を抱える両チームだが、今節は共にベストの布陣とはいかなかった。長崎は開幕から不動のボランチだった井上裕大が累積警告で欠場。今週、繰り返し練習してきた岩間雄大のワンボランチという新システムで試合に臨むことになった。前線を１トップ３シャドーとし、トップに小松塁、その下に奥埜博亮、幸野志有人、佐藤洸一を並べるという超攻撃的布陣だ。また、一方の愛媛は攻撃の起点である石井謙伍が怪我で欠場。左ワイドでプレーしている三原向平が右に回り、左には東浩史が入った。

互いに慣れない布陣での戦いとなったが、最初にリズムを掴んだのは長崎だった。２分、古巣を相手に燃える小笠原侑生がミドルシュートで口火を切ると、小松がスルーパスに抜けるなど、これまでの長崎にない攻撃の形が垣間見られた。前線に人数を置くことで攻撃に厚みが見られ、良い距離でセカンドボールも拾えていた。立ち上がりから積極的にチャレンジを繰り返していた長崎に歓喜が訪れたのは8分、右サイドから山田晃平がクロスを上げると、ファーサイドに走りこんだ奥埜がヘッドで折り返して、喉から手が出るほど欲しかった先制点を最高の形でゲット。奥埜は嬉しいＪ初ゴールを長崎での初先発試合で挙げた。

ただし、ここで波に乗って2点目を取りにいけないのが現在の長崎。得点後はイージーミスを連発し、自らリズムを愛媛に明け渡した。サイドからのフロックボールなどが狙われ、取られ方が悪いために、水戸戦と同じようなカウンターを食らうことに。新システムと言うことで選手もなれない部分も有ったのだろうか、守備へのトランジットの部分では冷や汗をかかされるシーンが連続した。さらに愛媛の重松健太郎と三原のワンツーパスでの崩しや河原和寿から三原への美しいスルーパスが出されると、DFはラインを下げ、攻撃的な前線とバックラインは大きく分断された。

そんな中、ついに愛媛がゴールネットを揺らす。３６分、DFラインで山口貴弘が痛恨のミス。重松にボールをさらわれ、それを加藤大がきっちり決めて１−１の同点とされた。愛媛がひたむきさで泥臭く得点を挙げた。4試合ぶりに手に入れた得点は、愛媛にとって1点以上の価値があったに違いない。この後も、愛媛の攻撃は止まらない。東にスピードに乗ったドリブルを許し、強烈なシュートを打たれるも、バーに助けられた。

ただし、後半に入り、奥埜をボランチに下げることで長崎はリズムを取り戻す。４６分にはスルーパスが小松に入り、GKと１対１に。惜しくも弾かれるが、４７分にも幸野のドリブルからチャンスを掴んだ。前半に比べてシュートの意識は格段に上がったが、クロスやパスなど一つ一つのプレーの質が悪く、積極的に攻撃を仕掛けるが決定的なシーンを作り出せない。愛媛も後半は徹底的にカウンター狙いに徹するが、こちらも運動量が落ちてきたために前半と比べてチャンスの数は減少。共にノーガードの打ち合いとなったがクリーンヒットはなかった。また、長崎は自分たちが攻め切れないためにカウンターを受け自陣にスプリントをする回数が増えてしまったのが悔やまれる。

なお、この試合で７６分に長崎の西森正明が交代出場で入りデビュー戦を飾るも、攻撃に変化を与えられることはなかった。同じく、小松や奥埜とのコンビネーションは改善していく必要がありそうだ。

両監督は試合後、この試合について収穫もあったがまだまだ継続して修正すべき部分もあるといったコメントを出しており、これから我慢しながら継続して課題に取り組んでいくことになる。そんな時こそ大事になるのはファンもクラブも一つになること。就任1年目の両監督の手腕が問われるのはこれからだ。まだ何も始まっていない。

以上

2013.08.05 Reported by 植木修平