お盆を挟んで第20節と第21節がホーム・ホームの甲府とアウェイ・アウェイの新潟。甲府と鹿島にどう移動するのかは知らないが、新潟にとって楽な移動ではないはず。前節、Ｃ大阪に勝って連敗を８で止めた甲府は、連敗中にバーゲンセールのように勝点３を与えすぎたので今節も勝って帳尻を合わせる方向に持って行きたい。今週の甲府は、というか甲府に関係するニュースではパナシナイコスからＦ東京に戻った梶山陽平に対して甲府と大分がオファーを出していて、大分に決まったというニュースと、平山相太にもオファーを出していたという記事が気になった。複数のスポーツ新聞のサイトで見つけたものだが、梶山に対するオファーについては城福浩監督は「ノーコメントだけど、甲府に足りないものを持っている選手。興味はあった」と行間を読ませる答え。平山については、「我々にないものを持っているという枠に入る選手」と行と行間の間を読ませる答え。選手層を厚くするための補強は行わないが、甲府にないものを持っている選手は欲しいということ。

甲府はパトリックとジウシーニョを獲得し、３−４−２−１にシステムを変更してから１試合半だけど、右肩上がりになる目処はついた感じがする。今後、４−４−２の方がフィットすることもあるのか、選手の配置を変えるのかは分からないけれど、ジウシーニョなら預けたボールが収まり、他の選手が駆け上がる時間が作れるし、パトリックはそのジウシーニョより敵陣深いところでプレーできる。それまでの甲府になかった強みだ。城福監督はこのシーンを増やしたいと考えている。

３連勝中の新潟は、主力であるレオ シルバと金珍洙の２人が出場停止。特にレオ シルバの不在は痛いはず。ただ、現在の12位からの大きくジャンプアップをするためにも、言い訳しないで勝てれば自信になる。ＭＦ本間勲とＭＦ藤田征也あたりが、そのポジションを埋めることになりそうで、それによってチームとしてのストロングポイントの出し方が変わる面があるかも知れないが――岡山時代にも苦戦を強いられた――川又堅碁の開花したストライカーぶりに悩まされるのは覚悟している甲府。ディフェンスラインの裏を執拗に狙ってくるだろうが、そこは甲府の３バックの中央を任されている佐々木翔を中心に迎え撃つ。ここは両チームのサポーターにとっても見所となるはず。また、レオ シルバがいない分、三門雄大がより踏み込んだプレーをしてくるのかは興味深い。ここでアクセルを踏めなければ川又を十分には活かせないはず。甲府としては三門、本間といったボランチの２枚が機能しないように持ち込みたい。ただ、今の甲府に対しては“いいサッカー”ではないような言い方をされることは少なくない。

乱暴にいえば高いボールポゼッション率、主導権を少しでも長く取るサッカーに憧れや矜恃があるから、対戦相手に「甲府は引いてブロックを作ってくる」という趣旨の話をされることはいい気分ではないが、今は忍の思いで戦って勝点３を積み重ねたい。ポゼッション率よりも決定機の数の増加が今の甲府には重要。３月22日に加入し、中断期間中の６月20日にチームを去った元パラグアイ代表ＦＷ・オルティゴサに躓いたためにいろいろな計画がパーになった甲府。今も、誰のパフォーマンスを活かしてチームの最大値を出すかを探している面があるが、パトリックとジウシーニョがその攻撃面のキーマンであることは間違いないはず。躓いた分、遅れている面はあるが、幸いＪ１優勝が目標でないので取り戻すことはできる。前節Ｃ大阪に勝って、佐々木が爆発させた感情、青山直晃が見せたやりきった笑顔に８試合分ため込んだ悔しさや渇望がある。24ポイントも失った勝点を3ポイント取り戻しただけで満足はできない。新潟の守備が堅くても１点はねじ込みたいし、ザックが川又の携帯番号を知りたくなっていようが５バックで抑え込む。新潟のようにＪ１で定着するクラブになるために。今季ホームでは分が悪い甲府だが、新潟戦では甲府の選手にミスがあっても「あ〜〜っ」と言いたくなるところをグッと我慢してため息を飲み込んで、ポジティブな声を増幅させて選手を乗せて連勝をつかみ取ろう。

以上

2013.08.09 Reported by 松尾潤