状況は違っても、結果を出さないといけないところは同じ。そのために、お互いのフロントの動きは早かった。
鳥栖は、GK3人が負傷離脱する異常事態に林彰洋を清水から期限付き移籍で補強し、JFA・Jリーグ指定強化選手の藤嶋栄介（福岡大）を起用し、控えGKはなしで戦った前節の状況にテコ入れをした。
大宮は、「今シーズンの目標を達成するため…」とベルデニック監督を交代した。昨季途中からチームを指揮し、21戦不敗という記録を打ち立て、今節を迎える時点で４位と上位につけているにも関わらずの英断である。今節は、岡本武行監督代行が指揮を執る。

お互いに打つべき手は打った。状況が変わったので結果が出るまでに時間が必要…などと、悠長なことを言っている暇はない。鳥栖は15位と降格圏が迫っているし、大宮は５連敗と一時期の勢いを失っている。お互いに今季の目標達成のためには、後がない状況なのである。

そんな中で、この試合の注目点を探ってみた。鳥栖だけでも藤田直之の復帰、代表帰りの豊田陽平・金民友と色々考えられるが、筆者が注目したのは『新加入と復帰』組である。鳥栖はCB菊地直哉とGK林、大宮はFWズラタンとノヴァコヴィッチである。チームに合流・復帰して間がないため、戦術や連携への不安は隠せないが、実績を持った選手たちなので否が応でも期待がかかる。

大宮はこれまで強力な攻撃陣に素早くボールを預けることで失点を回避し得点をあげてきた。前述した２人のFWが戦線離脱したことが、５連敗の大きな要因と言っても過言ではない。13得点（ノヴァコヴィッチ８得点、ズラタン５得点）の強力２トップが戻ってきたことは、大宮にとっては心強いことだろう。
この強力なFWに受けて立つことになるのが、鳥栖の新加入組である。CB菊地はすでに３試合を鳥栖で経験した。彼の加入で、最終ラインからのビルドアップが可能になり、攻撃のオプションが増えた。最終局面での身体を張った守備で幾度となく失点を防いでいる。ここに、195cmで世代別の代表経験を持つGK林が加わった。今季は、いまだ無失点試合がない鳥栖にとって、この２人の活躍は大いに期待がかかるし、Ｊ１残留のためにクラブができる最大の施策であったともいえる。
まずは、大宮の強力な攻撃陣に対して、鳥栖の新しい守備陣がどのような対応をするのかを注目しておきたい。

そして、もう一つ別の角度から注目しておきたい。
今節は、Ｊクラブ史上例を見ない『有効なチケットを持つ来場者全員に、選手仕様の記念ユニフォームプレゼント』がある。
佐賀県のイメージカラーの緑を基調にデザインされたユニフォームを、選手とスタンドのサポーターが一緒に着て戦うのである（ちなみに、GKは鳥栖市のイメージカラーである紫が基調となったユニフォーム）。
鳥栖の勝利のため、ピッチとスタンドが一体となった試合は圧巻だろう。また、この記念ユニフォームは遠く関東から鳥栖までお越しいただく大宮のサポーターにもプレゼントされる。当然のことながら、試合中はチームカラーのレプリカシャツを着用されるだろうが、試合前に少しだけ遊び心を入れて着用してみてはいかがだろう。試合結果とは別に土産話のネタにはなるのではないだろうか。

試合終了のホイッスルが鳴るまで結果は誰にもわからないが、その結果を予測するための様々な要因が多く詰まった今節。選手だけでなく、スタンドも一体となってサッカーができる喜びを知ることができる試合となるだろう。夏休みの思い出だけでなく、数年先にも語り継がれている試合となりそうだ。

アウェイの選手から聞いた話である。
「ベアスタ（ベストアメニティスタジアム）はやりにくい。スタンドが近いので、選手たちの声が応援の声で消されてしまうから…」。
まさに、ホーム側も選手を後押ししているといえる。
冷静に考えれば、ホーム側の選手の声もかき消されることもあるだろうが、「がんばれ！」の声は確実に選手に届くのである。
サッカーを見る喜び、応援するチームがある幸せ、サッカーにかかわることができる達成感。
すべてがサッカーの魅力なのである。
サッカーは、どこを切り取っても飽きることはない。

以上

2013.08.16 Reported by サカクラゲン