リーグ戦は42試合の積み重ねの結果。すべての試合は等しく重要で、その価値に変わりはない。それでも、シーズンの行方を大きく左右する試合は存在する。福岡にとって、それは第32節の千葉戦。マリヤンプシュニク監督は次のように話す。
「我々は、１試合、１試合でいいプレーをして勝利を求めていくしかない。そして、勝点を積み重ねることが出来れば、まだ６位以内に入れるチャンスが残っている。しかしながら、残り試合が少なくなってきたいま、そのチャンスは多くはなく、チャンスを確実にモノにしなければならない。だから、千葉との試合は我々の運命を分ける試合になる。ここで勝てなければ、他のチームの結果によっては上位に入ることは難しくなる」
昇格争いを演じる力を持っているのか。福岡にとっては真価を問われる大一番になる。

対戦相手の千葉は、現在、14勝10分７敗の４位。その能力は、Ｇ大阪、神戸と並んでＪ２の中では抜きん出ていると言っていい。最終ラインを統率するだけではなく、チームをまとめる役割を担う山口智。チームの核として中盤でコンタクトを振るう佐藤勇人。アタッカーとして数々のチャンスを作り出す谷澤達也。Ｊ２得点争いのトップにいるケンペス。その他にも米倉恒貴、田中佑昌、兵働昭弘、そしてＪリーグに復帰した森本貴幸らがいる。個の能力の高さでは福岡を上回っていることは認めざるを得ない。
前節の岐阜戦では、ボールを保持しながらも足元へのプレーが多く、効果的に攻めきれずにドロー。これで４試合連続で勝ち星から見放されているが、自動昇格を狙う千葉にとっては、２位神戸との勝点差１０は残り試合を考えればギリギリの差。課題を修正し、強い気持ちでレベルファイブスタジアムに乗り込んでくる。千葉にとっても、この試合がシーズンを左右しかねない重要な試合であることは変わりがない。

だが、千葉の能力がいかに高かろうとも、どんなに強い気持ちで乗り込んで来ようとも、福岡は勝利を譲る気持ちはさらさらない。「前回の対戦では１−０でリードしながらアディショナルタイムの失点でドローに終わっている。あの悔しさを選手たちは忘れていない」とはプシュニク監督。岡田隆も「前回のリベンジも含めて強い気持ちで戦いたい。レベルの高い相手だが、ここで勝利すれば６位以内に近づける」と話す。

福岡に注目されるのは、チームのベースであり、最大の特長である高い位置からのプレッシングを機能されられるかということ。第29節の長崎戦以降、アグレッシブにボールに関わることが出来ない傾向にあり、特に、前節の神戸戦ではプレスが全く機能せず、布陣を変更して臨んだものの、その狙いを表現することが出来なかったばかりか、逆に甘くなった両サイドのスペースを、繰り返し突かれて０−４で大敗を喫した。
「我々は基本的な部分で無責任なプレーをしてしまい、その結果、ゴール前を大きく開けてしまった。そのミスを２度繰り返すことはできない。技術的なミスは誰にでも起こる。だが、分析をし、修正をして臨んだ試合で、同じような戦術的なミスを繰り返すのであれば、昇格を目指して戦う資格を問われかねない」（プシュニク監督）
今シーズンの行方を左右する試合で同じことは繰り返せない。鍵を握るのはファーストディフェンダー。誰が、いつ、どこでプレスを仕掛けるのか。それが試合の流れを決める。

そして、もうひとつの注目点は、Ｊリーグ初先発が濃厚な笠川永太が、どのようなプレーを見せるかということ。神戸戦では、神山竜一の退場処分を受けて68分に途中出場してＪリーグデビュー。堂々としたプレーを見せてＪリーグの舞台で十分に戦えることを示した。しかし、満足はしていない。
「先発でピッチに立つ日のために今までサッカーをしてきた。このチャンスをモノに出来ないのなら、いままでやって来たことに意味がないというくらいの気持ちでいる。結果を残して、自分も、チームも勢いに乗って６位以内に食い込みたい。千葉戦は勝つことが全て」（笠川）
笠川にとってはサッカー人生が大きく変わるかも知れない試合。悔いのない試合ではなく、結果を残す試合にしてほしい。

さて、少しずつ成長を重ねてきた福岡は、ここまで何度も上位進出のチャンスを掴みながら、そのたびに上位の壁に阻まれてきた。だが、その壁を乗り越えることが出来れば、更なる成長と６位以内進出が見えてくる。千葉との対戦は難しい試合であると同時に、自分たちが更なる成長を遂げる最大のチャンスでもある。変わるのは今しかない。

以上

2013.08.31 Reported by 中倉一志