山形と福岡の対戦と言えば、現在『月刊少年チャンピオン』に好評連載中の「ナリキン!」。将棋の戦法をサッカーの戦術に取り入れた、モンテンドー山形と福岡ホーネットの熱戦が展開されている。
舞台は2013年シーズンのN1リーグ開幕戦。将棋サッカーを標榜するチームに変身した将棋駒生産日本一の将棋のまち・天童市に本拠地を置くモンテンドー山形が、右サイドで人数をかけて攻め込む雀刺しから加東俊太郎のゴールで先制。しかし、ナリキン(成金歩=なりがねあゆむ)を擁する福岡ホーネットは将棋サッカーでは一日の長があリ、雀刺し返しから潤目純のゴールで同点に追いついた。これを見たモンテンドー山形・奥田右近監督は早くも賭けに出る。前半から最終兵器が登場か?……というところで次号へ続いているが、リアルな山形vs.福岡はリーグ戦終盤に差しかかり、激しいサバイバルの要素が加わっている。
山形はリーグ戦の負けなしが8試合まで伸びた。その序盤は先制しながら追いつかれる“もったいない”ゲームが続いたが、修正を積み重ねるなかで成長し、徐々に勝ちきれる試合が増えている。ただし、天皇杯2回戦を含む直近の2試合では、ビハインドを戦う時間が圧倒的多くを占めている。天皇杯・富山戦では90分で追いつき、延長で追いつき、PK戦でも絶体絶命の淵から生還して3回戦進出を果たし、前節・徳島戦では内容で圧倒しながらも前半・後半とも追う展開となり、最後はアディショナルタイムに中島裕希のゴールでようやく勝点1を手にしている。
先制点を奪うことができればより確実に勝点3に近づくことができるが、試合全体をとおした安定感そのものは失われていない。「選手たちはいつでも前を向いて、大前提の『勝点に結びつける』というところはやってくれている。それができるようになってきたから、追いかけるようなシーンになってもバタバタする局面が減ってきたのではないか」と奥野僚右監督。福岡には前回対戦で敗れている。その試合を体調不良で欠場した山崎雅人は福岡戦を前に、「メンバーを結構入れ替えてくるチームなので読めないが、ただどういうサッカーをするかというのはわかってる。相手よりかは自分たちのプレーを意識してやれればいい」と惑わされることなく臨む心づもりでいる。残り9試合で6位・京都と勝点7差。それは勝ち続けなければプレーオフの道がほぼ開かないことを意味するが、追いかける立場には、追われる立場が持ち得ない強さもある。
13位・福岡はリーグ戦3連敗中。天皇杯2回戦・栃木戦も合わせると4連敗、しかもそのすべてが4失点以上で計18失点と大量失点が続いている。1-5で敗れた前節・横浜FC戦はシュート数で19対15と上回り、決定機の数でも引けを取っていない。大量失点が続く要因はそのプレースタイルと無関係ではない。両サイドバックを高く上げ、サイドを起点にしながら前線に攻撃の人数を送り込み、ポジションも流動的。攻撃の迫力は維持されている。一方で、守備への切り換えでボールを追い込めないケースも多く、広大なスペースを手薄に守る最終ラインに大きな負担がかかっている。そもそも同じスタイルで失点の少なさを特徴としていたチームだけに、前節、マリヤン プシュニク監督に代わり指揮を執った池田太ヘッドコーチは「シーズンが始まってから今までずっと言ってきた『ボールに行く』というプレッシャーのかけ方が、まだまだ足りないのかなと。そのあたりの徹底不足というところが、ひとつの理由ではないか」と分析する。また、「(GKと)1対1になったシーンで、自分がしっかりと決めていれば流れも変わっただろうし、全然、自分たちのサッカーも出来ていた」(石津大介)と決定機の成否も大きくかかわっている。
ここ数試合の猫の目のようなシステム変更やメンバーの入れ替えは、出場停止選手の多さもその一因となっている。前節はセンターバックのパク ゴンとアンカーをこなせる中原秀人が出場停止。今節はパクの出場停止が解けるものの、中原に加えて右サイドバックで出場を続けていた三島勇太が出場停止に。また前節、足首を痛めて前半で退いたプノセバッチも出場は難しそうで、今節もメンバーの出入りは必至だ。6位・京都との勝点は10差とすでに土俵際、徳俵に足がかかっている。長期離脱中の水谷雄一を除いても、現在累積警告でリーチの選手が7人。その状態で走り続けていくためにも、今節の勝利は譲れない。
福岡は深みを取るセンターバックから逆サイドへ大きく振るサイドチェンジを使うなど、サイドでの起点のつくり方が巧みで、サイドへ付けたあともフィニッシュに持ち込むためのパターンを備えている。そしてそれを実現しているのは、ゴール前に飛び込む人数の多さと、迷わず前を取るアグレッシブさだ。中を閉じることが優先順位となるだけに、山形はサイドに振られてからの対応がカギを握る。ボールへのプレッシャー、ゴール前での人の把握とも冷静な状態で粘り強く臨みたい。山形がボールを奪ったあとは、前からボールを奪いにくる福岡に対し自陣で慌てないことが肝要。シンプルに蹴って裏を取ることも狙えるが、特にサイドバックの裏のスペースは有効な起点にできる。主導権を握りながら、コンパクトな陣形と攻守切り換えの早さを維持できる試合運びが理想だ。
ともにライン設定が高く、前線にはスピードを最大限に活かせる選手を配置。両チームがその特徴とするアグレッシブなスタイルを前面に出し合おうとすれば、互いにチャンスが多いスリリングな展開になる公算は高い。ラスト10試合を切ったJ2は、リーグ戦終盤特有のコントロールが効かない試合が増え始めている。起きうるあらゆるトラブル、アクシデントを乗り越えてこそ、勝点3を手にすることができる。
以上
2013.09.21 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
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