絶対に勝たなければならない一戦。
初の岐阜県大垣市で開催された、鳥取戦。普段とは違う、フレッシュな環境で岐阜がどう戦うか。
結果は岐阜が水の都・大垣で、意地を見せ、初の大垣開催を成功に導いた―。

試合は序盤から、双方が攻撃色を出した展開となった。特に出だしが良かったのは鳥取で、7分にはMF実信憲明がドリブル突破から、強烈なシュートを放つが、これはGK時久省吾がセーブ。9分には左サイドを突破したMF廣田隆治のマイナスの折り返しを、FW辻正男が狙うが、これはバーの上。
だが、鳥取は攻撃に重きを置いたサッカーを展開する割には、攻撃が単発に終わることが多かったため、徐々に岐阜に付け入る隙が生じ始めた。
その隙はずばり右サイド。鳥取の左サイドバックのドゥドゥは、立ち上がりから高い位置を保ち、あまり戻らないため、ボランチの林堂眞がカバーに入る機会が多かった。しかし、徐々に前掛かりになるにつれ、林堂のカバーが追い付かなくなり、右サイドハーフの染矢一樹が浮くのと同時に、ボランチの裏と脇のスペースが出来始める。
すると、岐阜はそこをうまく有効活用し、待望の先制点を挙げた。21分、クリアボールを自陣でDF新井辰也がヘッドで弾き返すと、これをボランチの脇のスペースで受けたFW中村祐輝が、同スペースにいたFWスティッペにつなぐ。この瞬間、右サイドの染矢が完全にフリーで浮いていた。それを見たスティッペは縦のスペースに縦パスを通すと、染矢が一気に抜け出した。そして、染矢が相手の意表を突いて、バイタルエリア中央にグラウンダーのクロスを平行に送ると、そこには走り込んだスティッペが、冷静にゴール左隅に蹴り込んだ。
まさに相手の隙を突く、理想の一撃で岐阜が先制に成功すると、同点に追いつきたい鳥取は、さらに攻め手を強くする。だが、同様に単発な攻撃が多く、岐阜に見せた隙を解消せぬまま試合を進めたため、試合は落ち着かない攻撃合戦の様相を呈していった。

1-0で迎えた後半立ち上がり、一気に試合が動く。48分、新井のクリアを鳥取DFが判断ミス。バウンドしたボールの処理を戸惑っていると、中村が競り勝って前に落としたボールを、スティッペが技ありの右アウトサイドシュートをゴール右隅に突き刺した。
しかし、その直後、岐阜も一瞬集中が切れてしまう。鳥取は左CKを得ると、これをニアでドゥドゥがヘッドで合わせ、すかさず1点を返される。

そして63分、この試合の図式を確定させる出来事が起こる。染矢が2枚目のイエローカードで退場。残り27分もの間を岐阜は10人で戦わなければならなくなった。
パワープレーで岐阜ゴールに迫る鳥取と、10人のブロックでひたすら弾き返す岐阜。明確化されたこの図式は、同時に双方の我慢比べのスタートとなった。この我慢比べを制するポイントになるのが、冷静さだ。
鳥取からすれば、焦らずに数的優位をどこで生かして、いかにフィニッシュのチャンスを量産できるか。岐阜からすれば、いかに相手の揺さぶりに耐えて、ほころびを見せないようにするか。
この駆け引きを制したのは岐阜だった。
「天皇杯の時、岡山とやって10人でずっとやった経験がここで生きた。あのとき【4-4-1】システムを敷いて、10人で65分くらい経験したので、あの経験が大きかった」（辛島啓珠監督）。
「幸か不幸か、岡山戦で同じような状況があったので、みんなある程度やるべきことは理解していた」（服部年宏）。
じれることなく、ブロックを崩すことなく、冷静に対応した岐阜。それに対し、鳥取は
「選手が早く点を取りたいがために、斜めのボールが多くなってしまった。サイドで2，3人が絡んで崩して、もっと深い位置からの展開が出来れば、もっとチャンスを作れたと思いますが、焦りもあって早くボールを入れてしまった」（前田浩二監督）。
「つなぐのか、クロスを入れるのか、あいまいになってしまった。そこの意識統一をしっかりとしないからやられてしまった」（久保裕一）。
サイドでの数的優位を生かして、もっとサイドを深く侵入していれば、岐阜のブロックもサイドに引っ張られ、中央のスペースがもっと空いたかもしれない。しかし、攻め急ぎ過ぎて、中の守備陣形が固まっている状況でクロスを上げてしまったことで、「向こうがサイドからシンプルにあげてきたので、（木谷）公亮さんと中央をしっかり固めれば問題ないと話していた」とDF新井辰也が語ったように、岐阜は最後までやることを徹底できた。

2-1。大垣の地に岐阜サポーターの歓喜の声が上がった。もちろん、これですべてが終わったわけではないが、群馬、鳥取と絶対に勝たなければならない2連戦を2連勝で終えたことは、大きな一歩と言える。大事なのはせっかく大きく踏み出した歩幅を縮めないこと。次節もこの勢いと、全体の意思疎通を持って臨まないといけない。
望みは繋いだ。後はその望みを結果に変えるのみ。岐阜に息を突く暇はない。

以上

2013.09.23 Reported by 安藤隆人