痛恨、そして屈辱の敗戦だ。答えは一つ。群馬がゴールを奪えずに、栃木がゴールを決めた。内容の問題ではない。残留争いの佳境に突入した状況下で迎えた北関東ダービーで求められていたのは結果。リーグ戦３連敗となった群馬は順位こそ20位のままだが勝点で岐阜に並ばれ、北関東ダービー未勝利で３クラブ中の最下位が決定した。試合後、ミッションを果たせなかったチームにサポーターから激しいブーイングが浴びせられた。

序盤、群馬は栃木攻撃陣のパワーに押し込まれるも決死の守備で跳ね返しリズムを創出していく。ゲームが落ち着き出した15分過ぎからは群馬がポゼッションを支配。最終ラインからのビルドアップで栃木の守備ブロックを剥がしにかかる。だがバイタルエリアでのプレー精度を欠いてシュートまで持ち込めない。33分、群馬は栃木の右CKからピンチを迎えたが小柳達司が決死のシュートブロック。逆に直後にはFKの折り返しから永田亮太が決定機を迎えたが栃木守備陣に跳ね返される。流れの中から互いに決定打を繰り出せないゲームはスコアレスで前半を折り返す。

後半、攻撃のギアを上げた群馬は栃木ゴールを脅かし始める。48分には平繁龍一のシュートが栃木GKを強襲、同53分には永田、そして同66分にはダニエル ロビーニョが決定機を迎えるがどうしてもゴールネットを揺らすことができない。「リズム良い攻撃ができていたがゴールだけが決められなかった」（ロビーニョ）。チャンスを決めきれないまま迎えるゲーム終盤。群馬は栃木のカウンターだけはケアしなければいけなかったのだが…。

群馬にとって悪夢のような瞬間は82分に訪れてしまった。サイドへ流れたクリスティアーノがクイックで裏へと出したボールへの対応が遅れるとゴール前で数的不利が発生。最後は菊岡拓朗に押し込まれてDF陣は膝から崩れ落ちた。「あの場面だけ戻りが遅れてしまった」（小柳）。１点ビハインドとなった群馬はエデルを投入、さらにCBクォン ハンジンを前線に上げるパワープレーで猛攻を仕掛けていく。アディショナルタイムにはそのクォン ハンジンがゴール前へ抜け出して決定的なシュートを放つが、クロスバーに弾かれて万事休す。試合終了の笛が群馬の敗戦を告げた。

栃木は、群馬に主導権を譲るゲーム展開ながらも、勝負所を抑えて勝点３を奪い切った。「リズムが良くなかったのでしっかりとブロックを組んで群馬のパスを狙いにいった」（西澤代志也）。群馬の攻撃を頑強なブロックで受けてカウンターを狙うという栃木の策略がハマる結果となった。勝負のアヤは、55分という早い時間帯にサビアに代えて菊岡を投入したこと。「ゲームのリズムを変えてくれると思った」という松本育夫監督の戦術眼と、「ゴール前へ入っていくことだけを考えていた」という菊岡の勝負強さがチームに連勝を呼び込んだ。

群馬は、栃木を大きく上回る17本のシュートを放ちながらも一度もゴールネットを揺らせなかった。攻撃の質は悪くなかったものの３戦連続無得点で３連敗となった。前節岐阜に続いてのホーム２連敗は、今後上位対決が控える群馬にとって大きなダメ−ジだ。「一瞬の隙を突かれる甘さが残っているから、いまこの順位にいる」（平繁）「勝点を奪うには、いま以上に戦わなければいけないということ」（北一真）。群馬に今求められているのは足先のテクニックではなく勝点を奪うためのプレーだ。

試合後、選手バスの周囲に集まったサポーターに対して植木繁晴代表は、監督交代せず現体制でシーズンを乗り切ることを断言、サポーターに協力を求めた。秋葉監督は敗戦を謝罪した。群馬はいま危機を迎えている。現体制への信任、不信任はもちろんあるが、チーム残留のためにはクラブとサポーターがともに戦うしか道がない。そこまでクラブは追いつめられている。サポーターの矢面に立つ植木代表、秋葉監督の姿をみて選手が何を感じたのか。この状況を打破するのは選手たちだ。

以上

2013.09.23 Reported by 伊藤寿学