今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第34節 札幌 vs 長崎】レポート:レ コン ビンのリーグ戦初ゴールを守り切った札幌が6位に肉薄!10人となりながらも、チーム一丸の守備とベンチワークで長崎に競り勝った。(13.09.23)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
時計の針がタイムアップへ刻々と近づくにつれ、札幌厚別公園競技場はスタジアム中で大きな手拍子が鳴り、それが一体化していく。前半途中に退場者を出し、10人になりながらも虎の子の1点を守り抜こうという札幌の選手たちとスタンドは間違いなくシンクロしていた。「あの後押しがあったから、今日は勝点3が取れた」と財前恵一監督は試合後の会見で感謝した。ホームの札幌が粘り強さを見せ、長崎に競り勝ったゲームだった。

試合の立ち上がりは一進一退。8位の札幌と4位の長崎(順位はどちらも試合開始時点)が、互いに勝点3を狙うべく前に出て、それでいて先制点を奪われるリスクも少なくしたいという、絶妙なバランス感を双方が保ちながら中盤での潰し合いが続いた。

そのパワーバランスが崩れたのは15分のこと。札幌は内村圭宏が左サイドで起点になると、そこから前田俊介、上原慎也とスピーディーにパスが動き、最後は走り込んだレ コン ビンが頭で押し込んだ。このベトナム人FWは安定した技術と正確なキックもさることながら、クロスに対してタイミングよく飛び込むプレーも大きな武器のひとつ。札幌のグループとしてのパスワークと、ビンの特徴とが見事に噛み合って生まれた先制点だと言っていいだろう。

この得点により試合のパワーバランスは札幌優勢へと傾いたかに思われたが、その20分後にはそれが一気に真逆へと傾き直すことになる。

36分。ビンが相手選手を倒したプレーで警告受けるのだが、実は先の得点直後にユニフォームを脱いだことですでに警告を受けており、これがこの日2度目。退場となってしまう。

この試合を前に「前回対戦時の長崎は勢いがある印象だったが、現在の力は本物。ちょっと気を抜くと、圧倒されてしまうかもしれない」と財前監督は警戒をしていた。残り時間はおよそ54分。圧倒されてしまうかもしれない相手に対し長時間の数的不利。これからかなりの苦戦を強いられるだろうことは容易に想像がつく。そして実際にそうなったのだが、10人になった札幌は見事な粘りを見せた。

長崎がボールを持つ場面になると、札幌は4−4−1の形で守備ブロックをセット。幸いにも退場したのがCBなどの守備的選手ではなく前目の選手だったため、交代カードを使うことなく守備網を整えることができる。前半の残り時間は前田を1の位置に置いたブロックで乗り切った。

後半に入ると札幌は荒野拓馬を左MFに投入したり、1トップの位置にランニングスピードと高さのあるフェホを投入したりと、財前監督は守備のところをまずは考えながらも、それでいて攻撃にも変化を付けられる巧みな選手交代を敢行。長崎のほうも身長190センチの小松塁、188センチの趙民宇と高さのある選手を入れてチャンスをうかがうも、「札幌は空中戦にしても球際にしても、ここ最近に対戦した相手のなかでは、かなり強くきていた」と幸野志有人に言わしめたように、10人になった札幌はブロックを形成しての粘り強い守備で長崎の攻撃を着実に跳ね返し続けていたのである。

この試合でのもうひとつのポイントは、札幌のほとんどの選手が「10人になったことで、やることがハッキリした」と発したように、数的不利になった札幌は余計なことをせず、割り切ってとにかくシンプルに長崎の攻撃を跳ね返すことに専念したことだ。前半の序盤などは左右MFがライン際に思い切って張る長崎のシステムに対し、両サイドの守備が翻弄される場面もあったが、10人になってからは「大外は捨ててもいい」(日高拓磨)と、人に対してではなく、ボールに対しての守備を徹底して行うことでブロックの乱れを防いだ。

そして残り15分となったところで財前監督は、本来はセンターバックである櫛引一紀を右サイドバックの位置に投入。それまでその位置にいた日高を一列前に上げた。最終ラインを本職とする選手2人を縦に並べたこの采配について指揮官は「守備を厚くした」と振り返るが、焦点は日高がスペースに飛び込んでのアタッキングが得意な選手であるという部分。札幌が敷いたこの最後の布陣を見てみると、1トップにはフェホ、左MFには内村、右には日高というように、堅い守備ブロックを形成しながらもしっかりと速さを生かしてカウンターを仕掛けられる選手を前に並べている。その結果、人数を考えれば長崎は最終ラインの選手がもう一列、高い位置に出ていけるはずの状況ながらも、札幌のカウンターを警戒したためにそれができなかった。守備を固めながらも攻撃力を維持し、相手の手厚い攻撃も牽制した財前監督のこの日のベンチワークは秀逸なものだったと言える。

前半途中に数的不利となりながらも、巧みな選手交代と地元の熱心な声援を背に、札幌が1−0のスコアで勝利し、プレーオフ出場圏内である6位に肉薄した試合だった。長崎の高木琢也監督も「札幌は質の高い集中力を保っていた」と称賛する。

一方で敗れた長崎側に立ってみると、早い時間から数的優位になりながらも、最後まで点を奪い切れなかったのだから、岩間雄大の発した「もったいない試合」という言葉は的を射ているだろう。ただし、会見で高木監督が述べたように、守りに入った相手を崩すのは非常に難しい。そこでの有効な手段は、とにかく粘り強くアタックを仕掛けていく他はない。順位は5位へと下がってしまったが、まだまだここからチャレンジを繰り返していきたいところだ。

以上

2013.09.23 Reported by 斉藤宏則
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着