夢みたい。でも、夢じゃない。紛れもない現実だ。何度、公式記録を見返しても、頬っぺたをつねってもスコアは変わらない。もちろん、引っくり返ることもない。4−2。J1もアジアも制した、あの攻撃力が代名詞のG大阪に打ち勝ったのだ。刺激的かつ衝撃的な、クラブ史に燦然と輝く勝利を、栃木は自らの手で掴み取った。2‐1でF東京を撃破した時以上の感動と興奮と歓喜が、スタジアムには充満していた。その雰囲気を味わい、空気を共有した人は、きっと一生忘れることはないだろう。10月6日の出来事を。
3年前に天皇杯で2‐3で逆転負けした鬱憤も、0‐3で負けた前回の言葉にならない悔しさも晴らせた。「気持ち良い!何度も土俵際スレスレまで押し込まれたけど、なんとか踏ん張れた」と赤井秀行は興奮を隠しきれず、「この1週間はあの悔しい思いを胸に、他の週の練習以上に気持ちを入れた。その成果が出て良かった」と、プロデビュー戦で辛苦を味わった西岡大輝は上気した顔で喜びを露わにした。小は、大を喰ったのだ。
立ち上がりの悪さを突いた。先制したのは栃木。クリスティアーノが左サイドのスペースへ蹴り込んだボールをサビアがキープし、右にサイドチェンジ。走り込んだ廣瀬浩二が内に返したボールを、クリスティアーノがダイレクトで合わせたシュートはGKに弾かれるも、こぼれ球に素早く反応したサビアが押し込んで先手を取るに至った。F東京戦を想起させるような、鮮やかな先制攻撃が決まった。前半10分のことだ。
リードした栃木は徹底してG大阪のサイドアタックを封じにかかる。サイドハーフの近藤祐介と廣瀬が、ほぼマンツーマンで加地亮と藤春廣輝の両サイドバックに対応。サイドのスペースを消去されたG大阪は攻めあぐねた。しかし、さすがは攻撃自慢のチーム。外が無理ならば、と内から崩しにかかる。そして攻略してしまうのだから恐ろしい。34分に縦パスを受けた倉田秋のスルーパスを宇佐美貴史が流し込んで同点に。G大阪の攻撃は確かに美しかったが、それ以前に栃木が相手ボランチへのプレスをかけなかったことが失点の遠因となった。サビアとクリスティーノはある程度の自由が与えられているにしても、コースを切るなり最低限の仕事を果たさなければならない。ここは早急に改善すべき点だ。
互いにゴールを挙げた後は、ややG大阪に流れが傾くも、「前半を1‐1で凌げたことが大きい。そのことで後半いい試合ができた」とは赤井。後半の開始早々だった。虚をつかれたG大阪はクイックリスタートに反応できなかった。三都主アレサンドロのFKに、サビアが頭から飛び込んで栃木が再び一歩リードする。「こっちの集中力のなさが出てしまった。あれで流れが変わった」と倉田が悔やめば、長谷川健太監督も「後半の立ち上がりに余分なゴールを与えてしまった」と、この1点の重さを語った。
内側を捨てながら外に重きを置いた守り方をしていた栃木だが、さすがに縦パスを入れられ過ぎたことで松本育夫監督が動く。ボランチの小野寺達也を下げて菊岡拓朗を投入。システムを4‐2‐3‐1から4‐1‐4‐1に変更し、アンカーにパウリーニョを配して中盤に厚みをもたせたのだ。相手の流れるようなパスワークから1点を失うものの、この交代策は奏功した。ファジーな位置に構えた菊岡をG大阪は捕まえ切れず、81分に菊岡が絡んだ高速カウンターから被弾。87分にはまたしてもカウンターに沈み、痛恨の4点目を献上してしまった。間延びしたスペースを使い、決定力を発揮した栃木は思惑通りにゴールを重ねたと言える。
3試合連続で先制弾を浴び、セットプレーでさらに傷口を拡げたG大阪。足踏みしたここ2試合の反省を活かせず、今季初の連敗を喫した。「チームとして前後半の最初に点をやっていることを、もうそろそろやめないといけない。情けないというか、話にならない」と宇佐美は怒りを押し殺しながらそう話した。爆発的な得点力を誇るG大阪だが、「アウェイで追う展開は非常に厳しい」(長谷川監督)。J2に降格した理由を再度、見つめ直す必要があるのではないだろうか。
勝ち切った栃木は松本体制に移行してから4戦無敗。6位・長崎との勝点差を7に縮めた。残りの試合数を考えると、6位以内への浮上は依然として厳しいのが実情だ。しかし、内容よりも結果を求めるサッカーが形になりつつあり、自信は日に日に深まっている。一体感もある。松本イズムと言っても過言ではない、「諦めない」気持ちが浸透し始めてもいる。この勢いを持続できれば、ひょっとすると、ひょっとするかもしれない。逆転でのJ1昇格プレーオフ進出。想像しただけでもワクワクする。その思いをどれだけの人が共有できるか。そこが最後の最後に明暗を分けるのではないだろうか。
以上
2013.10.07 Reported by 大塚秀毅















