ともに全力を出し切った試合。最初から最後まで熱いゲームだった。この試合終了時点で、J2で3番目に多い得点(63得点)を誇る山形と、3番目に少ない失点(38失点)を誇る横浜FCの対決は、そのチームの姿を映すような戦いぶりとなった。どちらのチームにとっても勝つチャンスはあったが、サッカーの神様が与えた結果は痛み分けのドローだった。
前半、ペースを握ったのは間違いなく山形だった。両サイドバックを高い位置に上げて陣形の重心を前目に置いた。一方の横浜FCは、複数の選手が「チーム全体が体が重いように見えた」と振り返るように出足がいつもよりも悪かった。最初の15分は、浮き球も多くボールのある局面での戦いが多くなるが、ここで山形が勝利すると、横浜FCの守備ラインを押し下げることに成功。前半の主導権を握る。その15分を過ぎると、両チームともボールを繋ぐサッカーに移行するが、そこで出来を分けたのはプレッシャーの質と守備から攻撃への切り替えの早さ。前目に重心のある山形が、ことごとくボールを拾うことに成功し、より多くのチャンスを作り出す。そして「チームとして警戒していた中村太亮選手に自由にやらせていた」(シュナイダー潤之介)というように内容としては山形が支配するが、「割り切ってチームとして失点しないようにした」(三浦知良)という横浜FCも粘りの守備で対応。ゴールを割らせることはなく前半を終了する。
後半も立ち上がりは前半と同様の展開となるが、54分の武岡優斗の投入からゲームは動く。「中村選手の裏が弱いので、そこを狙うという指示」(武岡)で試合に入ると、そのエリアで効果的な突破を繰り返す。そして、60分、カウンターの場面で、ペナルティエリアに侵入すると、ファールを受けてPKを獲得。このPKを自分で決める。耐える事に徹した横浜FCが先制する、ある意味、してやったりの展開。横浜FCにとっては、残りの30分は守り切りながらカウンターを狙う時間となった。山形は、この試合で特に優位に立っていた左サイドの圧力を増すために、62分に大久保剛志を投入し中島裕希を左サイドに移し、さらに75分に宮阪政樹、84分に萬代宏樹を入れて、総攻撃体制を取る。山形の攻撃力が実るか、横浜FCの粘りの守備が最後まで続くかの勝負。その結末は、90+2分に山形の側に結果となって現れる。「外は捨てて中を固める守備を徹底していた」(シュナイダー潤之介)横浜FCに対して、中村がファーサイドに待つ大久保に最高のクロスを送ると、大久保がヘッドで折り返し中島がヘディングシュート。一度は横浜FCがはじき返すが、そのこぼれ球を再び中島が右足で押し込み、劇的な同点劇を演じる。その後もより勢いを持った山形がゴールに迫るが、5分のアディショナルタイムでもそれ以上のゴールは生まれず。試合は1-1で終了した。
横浜FCにとっては、J1昇格プレーオフ圏内が非常に厳しくなる結果になった。しかし、横浜FCらしい粘りの守備の形を出せたことも事実。山形に対して、チームとして意思を統一して戦い続けたことは、間違いなく良かった点だ。対する山形も、プレーオフ圏内の6位以内に向けて勝点3が欲しかったのは事実だが、良いサッカーを展開している試合で負けを引き分けに持ち込めたタフさは、賞賛に値する試合だった。
ほぼ最後まで粘り続けた横浜FCにとっても、内容で上回り続けた山形にとっても「勝点2を失った」と感じることもできるが、「勝点1を失わなかった」とポジティブに感じることもできる試合。少なくとも、両チームはそのスタイルを全力で出したことは間違いない。両チームとも、ポジティブに考えられる勝点1だったのではないだろうか。
以上
2013.10.07 Reported by 松尾真一郎















