8月8日(日) 2004 J2リーグ戦 第26節
仙台 2 - 2 川崎F (19:04/仙台/18,751人)
得点者:'34 ジュニーニョ(川崎F)、'67 アウグスト(川崎F)、'89 佐藤寿人(仙台)、'89 佐藤寿人(仙台)
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「おそらくこの試合、前線の力では川崎に分がある。どちらかといえば仙台ゴール前でボールの動く時間が多いだろう」
私はこの試合のプレビューの最後にこう記したが、序盤に関しては、これは誤りだった。
仙台が浮上のきっかけをつかむ要因の一つであったセンターフォワード1人に2シャドーの3トップシステムから、この試合の仙台は佐藤とファビオ ヌネスを2トップに財前をトップ下に配したシステムに変更した。「FW(特にシャドーの2人)による相手サイドバックへのケア」という守備的な側面も3トップの採用理由だったと考えれば、3バックを敷いている川崎F相手に3トップにこだわる必要はない。またここ最近、3トップが攻撃においてうまく機能してこなかったことを考えても、本来のポジションに戻った財前によって攻撃の活性化を狙った部分もある。
その財前が、序盤は効いた。頻繁にサイドのスペースに飛び出し、攻撃の基点となる。また財前がサイドに流れる一方、佐藤はライン裏のスペースを脅かし続け、中盤以下の選手もそんな佐藤を目掛けてロングボールをしきりに放り込む。中盤以下の選手が皆、ボールを持つとまず最前線を見て、隙あらば長いボールを蹴りこんでくるあたり、仙台はチームの意思統一が出来ている印象。川崎Fには負傷明けの伊藤宏樹が復帰し「人に強いDF陣」が戻ってきたことを考えても、佐藤とファビオ ヌネスという「軽量級」のFWでは前で勝負するのにも限界がある。その意味で、この戦術は理に叶っているし、実際に序盤は仙台がペースを握っていた。
だが、川崎Fに慌てる素振りは見えない。川崎Fにはどんなにチーム全体が押し込まれようとも、自分たちだけで試合を決定づけてしまう攻撃陣がいる。
仙台は序盤の攻勢が一段落すると、徐々に集中力が減り始めたのか、自陣でボールを失う機会が増えてきた。そんな時間帯の前半34分、川崎Fはワンチャンスをものにする。ベルデニック監督が「川崎Fの前の3人(我那覇、ジュニーニョ、マルクス)に次ぐ、もう一人の要注意選手」と名指ししていた中村を基点に、中村、マルクスとボールがわたって最後はジュニーニョ。マルクスの完璧なグラウンダーのセンタリングを、走りこんでダイレクトで合わせた。仙台としては、ここまでジュニーニョにマンマークで付いていた森川が、このシーンだけ振り切られたのが致命傷だった。たった1回のマークの遅れ…。だが川崎Fにはそれで十分だった。だからこそ川崎Fはこの順位にいるのだ。
さらに仙台に不運は続く。前半終了間際に受けた接触プレーの影響が遅れてやってきたのか、ハーフタイムを挟んで後半の5分を過ぎた頃、森川が半ば突然のようにピッチに倒れた。その後、脳震盪と診断されて病院へ直行することとなり、森川は後半8分に交代で退いた。ジュニーニョに対抗することのできたほぼ唯一のスピード系DFを、仙台はこの苦しい時間で失う。
その影響か、この時間帯では守備ラインが下がった仙台を川崎Fが押し込む。後半22分、右サイドのマルクスからファーへ大きなセンタリング。それに合わせて、左の大外からアウグストがこの日初めてゴール前に飛び込んできた。ビハインドを負ってアウグストに対峙していた村上は、前がかりになっていたのか、この試合で初めてアウグストに遅れた。試合を決定づけるかと思われる2点目。
ジュニーニョの得点もそうだったが、数少ない得点チャンスを確実にをゴールに結び付けてしまう川崎Fの攻撃陣に、仙台サポーターが大半を占めるスタジアムは一瞬沈黙した。
堅守の川崎Fが2点のリード。残り時間は23分。川崎Fが、スピードのあるジュニーニョを相手への「脅し」として前線に残し、チーム全体が守備的にシフトして時間を費やすという「勝ちパターン」を発動させれば、ゲームはこのまま終結する。だが、その川崎Fのゲームプランを崩したのは、仙台が3人目の交代として投入した萬代。彼は苦しいチームメイトをかばうかのように、前線でフォアチェックに奔走する。元々前線からの積極的な守備に定評のある彼によって、川崎Fは勝ちパターンの一つである「自陣での落ち着いたボール回し」ができなくなってしまった。さらにマルクスのマークを捨てて熊谷が攻めに絡み、さらにはDFのセドロスキーが前線までやってきて、必死にポストプレーを試みる。
そしてロスタイム。仙台はシルビーニョの完璧なスルーパスで、GK吉原との1対1を迎えた佐藤が冷静に決めて1-2。1点差となる。とりあえず溜飲が下がる仙台サポーター。ここまでなら、まだよくある話の一つだろう。実際、試合後のベルデニック監督は、この1点目が決まった時点では「無得点で終わるよりはいいか」という心境だったと告白している。
だが、この試合はこれで終わりではなかった。失うもののない仙台は、セドロスキーが最終ラインに戻らず、そのまま前線に残る。直後、村上からの縦パスを受けたセドロスキーがヘディングで落とした先に、またも佐藤がいた。再び迎えたGKとの1対1で、佐藤は吉原の動きをよく見た上でループ気味のシュートを決める。先ほどの1点目からまだ1分も経っていないだろう。ロスタイムに立て続けの2ゴール! 仙台は文字通り死地から生還。一方、普段どおりの勝ちパターンに乗りかけていたはずの川崎Fは、最後の最後、たった1分足らずで勝ち点2を失うという悔やまれる結果となった。
かくして仙台vs川崎Fの第3ラウンドは、壮絶な内容で終了。次回対決は10月23日の第39節。今度は川崎Fがホームの等々力で仙台を迎え撃つ。両チームがこの時、昇格戦線でどのようなポジションにいるか。それによって次回対決は、今回以上の死闘となる。
2004.8.9 Reported by 佐々木 聡
J’s GOALニュース
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