8月11日(水) 2004 J2リーグ戦 第27節
山形 2 - 2 仙台 (19:03/山形県/12,270人)
得点者:'1 佐藤寿人(仙台)、'23 財前宣之(仙台)、'63 オウンゴ−ル(山形)、'66 星大輔(山形)
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試合開始から2分にも満たないその時、ゴールネットが揺れた。と同時に、この日の観衆1万2,270人の約半数を占めるアウェイ仙台の応援席も大きく揺れた。
決めたのは、梁の右クロスにニアサイドでジャンプし、ヘッドで押し込んだ佐藤寿人。前節の川崎戦、0-2の後半ロスタイムに2点を叩き込み引き分けに持ち込んだヒーローが、その勢いを、中2日という時間を飛び越えて持ち込んだ。
「前半は0点に抑えよう」
ここ数試合、山形・鈴木淳監督が毎回掲げるチーム目標であり、なかなか達成できないチーム目標でもある。ゲームプランは崩れてしまったが、まだ早い時間帯の失点。鈴木監督は、「焦らずに、前掛かりになるな」と指示を出す。しかし、それとは裏腹に、1点を追いつきたい選手たちは、攻撃的な布陣を形成していた。
山形の2トップ、大島とデーニは、マンマークに付く根引、小原を引き連れてポジションチェンジを繰り返していた。その時にできる裏のスペースを突いた星が右サイドを突破し、クロスを上げる。これは仙台のGK高桑がパンチングで防いだが、右からの攻撃が軌道に乗り始めた前半23分、左SBの井上がスルスルと前線近くまで上がった。その結果、山形の両サイドバックが高い位置取りとなった。
そして、まさにその時。
パスを受けた大塚がセンターサークル付近で前を向くと、対峙していた仙台・シルビーニョがボールを奪い、前へと飛び出した。右にはファビオ ヌネス、左には財前。シルビーニョを頂点とする三角形は次第に山形のゴールへと近づいていく。
それに対応する山形の守備はセンターバックの2人のみ。「3対2ではこうやって攻めるんだ」というお手本のように、ファビオ ヌネスから財前へと渡ったボールはゴールに突き刺さった。
この日の仙台は、前節に敷いた3−5−2ではなく、やり慣れた3−4−3に戻していた。
佐藤寿人が下がったところへ村上が飛び出したり、財前が中へ絞った途端に千葉が右のスペースに飛び出すなど、「一人が引いたら一人が出る」動きを、11人でシステマティックに実践していた。一つの生命体のように見えるその動きは、実に美しかった。
これに対し、山形も持ち味の「つなぐサッカー」で対抗。素早いチェックの仙台には球離れを早く、仙台の選手とボールが磁石の同じ極に見えるようなパス回しだったが、時折ボールの極が逆転し、そのまま山形ゴール前まで持ち込まれるケースが多かった。
前半のシュート数は、山形3に対して仙台は9。仙台の内容はほぼ完璧だった。
ハーフタイム、鈴木監督は「チャンスは必ず来る。あわてないで冷静にプレーしよう」と選手に呼びかけた。その時の様子を、大塚は「ハーフタイムで、みんなが『もう一回やるんだ』という気持ちになった」と話し、井上は「みんなの雰囲気を見て、こういう雰囲気なら大丈夫だと思った」と振り返った。山形の選手は誰もあきらめてはいなかった。
デーニに代わり後半開始から登場した林晃平が、俊足を活かしてかき回し、徐々に仙台のペースを乱していく。
「後半、相手は激しく来るので立ち上がりに注意すること」
ベルデニック監督の当然過ぎる指示は、仙台の選手たちも理解していた。財前も、「相手は前掛かりで来るから、簡単に裏へ出してくれ」と後ろの選手に話し、飛び出すタイミングを計っていたが、山形の猛烈な圧力を受けた仙台のバックラインにはその余裕さえなかった。自ら冒している高いリスクさえも、圧倒的圧力で消し去っていく。完全に山形ペースで試合は進んでいった。
疲れで運動量が落ちた仙台は、後半16分、足が止まってきたファビオ ヌネスに代え、前日にU-19日本代表入りが発表された萬代をピッチに送る。しかし皮肉なことに、山形が追撃の1点を挙げたのはその2分後だった。
攻撃の起点となり始めていた左サイドのスペースに、小原のマークを抜け出した林が進入し、中盤からのパスを受ける。ゴールとの間にはキーパー高桑と小原。フェイントをかけた後、「ファーポストを狙った」というシュートは小原が出した足に当たってコースが変わり、高桑の手をすり抜けてゴールネットに届いた。記録はオウンゴール。
途中出場した試合では常に流れを変えてきた林。移籍後初ゴールはおあずけとなったが、またも決定的な仕事をしてみせた。その林が、ゴールの3分後、今度は右のタッチライン際に現れる。後方から飛んできた縦パスをさらに縦方向に蹴り出し、高い位置まで攻め上がると、ゴール方向へ向けて強いボールを入れた。これがコースを塞ぐファビオ ヌネスの体に当たり、中央にこぼれる。
ハンドか?
一瞬止まったピッチの中で、一人猛然と突っ込んできたのは星だった。同点ゴールは、「ぶち込んだ」と表現したいような弾丸シュートだった。
試合が振り出しに戻った後はやや落ち着いた空気が流れる時間帯もあったが、互いにメンバーチェンジなどでテコ入れを図り、勝ち点3獲得へ向けた最後の踏ん張りを見せる。
2、3本ごとにボールが行ったり来たりする激しい時間帯、山形のぽっかり空いた中盤を仙台がうまく使い、裏に飛び出した佐藤寿人に合わせる。そんな山形サポーターの寿命を縮めるシーンも何度かあったが、試合は2−2のまま引き分けに終わった。
追いつかれた仙台サポーターの気持ちは、試合後のプーイングに込められていた。それでも、前・後半のロスタイムを含めると95分間、両チームのゴールへの意欲がピッチ上に充満していたこの試合は、名勝負と呼ぶに相応しい。「みちのくダービーは凄いぞ!」、そんな認知度を一段と上げた試合だった。
山形と仙台の今季の直接対決は、0−0、1−1、2−2と3戦連続のドロー。決着は第4ラウンドに持ち越された。次は3−3! かどうかはわからないが、12人目の選手を含めた熱い総力戦になることは間違いない。
2004.8.12 Reported by 佐藤 円
以上
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