12月6日(土) 2008 J2リーグ戦 第45節
福岡 3 - 1 湘南 (12:03/レベスタ/9,163人)
得点者:36' ハーフナーマイク(福岡)、48' 鈴木惇(福岡)、60' 大久保哲哉(福岡)、66' 坂本紘司(湘南)
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「今日の試合は特別な日。布部がプレーする最後の試合」。スタジアム入りする前のミーティングで篠田善之監督は、そう言って涙を見せたという。3年間、どんな時でも前向きに、あらゆる場面で仲間を鼓舞し、そしてチームをまとめあげてきた布部陽功が福岡の選手としてプレーする最後の日。久藤清一は、布部と同じピッチに立つために膝の手術を延期して最終戦に臨んでいた。「チームの柱だったし、彼からすごく支えられたし、すべての選手がそう思っている」(篠田監督)。この日、選手たちは「ワンちゃん(布部の愛称)のために」を合言葉に特別な試合に臨んだ。
湘南にとっても、この日はJ1昇格の可能性をつなげる特別な試合だった。勝って仙台、C大阪の結果待ちという条件付きではあるが、この試合に入れ替え戦への出場権がかかる。「これまでやってきたこと、チームとして個人として積み上げてきたものをぶつけることに集中したい。湘南らしいサッカーができれば結果は付いてくると思う。責任感をもって自分たちの仕事をまっとうしたい」(原竜太)。武器にするのは前向きな意識と推進力。9年ぶりのJ1復帰へつながる道は広くはないが、そこから足を踏み外さずに歩みたい。
キックオフと同時に、ピッチのあちこちで激しくぶつかり合うシーンが続く。荒いのではない。互いの気持ちがストレートに表れる激しいプレー。絶対にこの勝負は譲らない。ひとつひとつのプレーからそんな気持ちが伝わってくる。ともに譲らない試合は、互いにボールを落ち着けることができず、我慢比べのような展開で進んでいく。
湘南らしさが見えたのは11分。福岡の中盤でのパスミスを奪って、一気にカウンターを仕掛ける。シュートを打つまでには至らなかったが、その流れるようなボール運びにスタジアムにどよめきが起こる。
そして、福岡の狙いが見えたのは直後の15分。前に出る湘南から奪ったボールを中村北斗が中央のスペースで受けると、そこを起点にサイドから攻め上がってゴールを狙う。スタジアムに歓声が沸く。
一瞬のうちにゴールが生まれる予感を漂わせながら、決して相手に隙を与えない両チーム。チャンスの芽をすばやく潰しあう我慢比べのような展開で試合が進んでいく。ひとつのゴールが試合の行方を大きく動かすであろうことを知る両チームは、研ぎ澄まされた集中力でボールを追う。
そんな拮抗した状態を崩したのは福岡。時間は36分のことだった。左サイドで得たFKのチャンスに、鈴木惇が左足を振りぬいてゴール前にボールを送ると、ペナルティエリア内にこぼれたボールにハーフナー・マイクが猛然と突っ込んだ。体ごとゴールに突っ込むような泥臭いゴール。だからこそ、この1点の重みが強く感じられるゴールだった。
「我慢して先制点を挙げた、先に主導権を握れたということで、今日のゲームが大きく動いたと感じている」(篠田監督)。そして試合の流れが大きく福岡に傾いた。
福岡に際立ったのはチームとしての守備意識。高い位置からプレスを掛け、中盤にこぼれたボールのほとんどを支配。局面の争いでもほとんどのシーンでボールを奪った。そして、前がかりになる湘南の中央にできるスペースに中村北斗が顔を出して起点を作る。城後寿、鈴木惇と中村北斗が連動して動きまわる中盤は、素早いパスワークで湘南のプレスをかわしていく。そして前線で存在感を示したのはハーフナー・マイク。空中戦を制し、ボールを引き出し、そしてシンプルなポストプレーでボールを捌く。湘南は全くと言っていいほど自分たちのプレーをさせてもらえない。
福岡の2点目は48分。大久保哲哉の折り返しにゴール前に走りこんできた鈴木惇が左足をダイレクトで合わせる。そして、福岡のだめ押しゴールが生まれたのは60分。決めたのは大久保哲哉。山形辰徳の折り返しに頭で合わせた。右からのアーリークロスに、ファーサイドの角度のないところから頭で押し込む形は、今シーズン、何度も大久保哲哉が見せたゴールの形。「得意なパターン。自分の形になってきた」。大久保は得意げに得点シーンを振り返った。
湘南は66分、アジエルからのスルーパスを受けた坂本紘司が1点返すので精いっぱい。前後半合わせて4本のシュートしか打てないままに、福岡の前に敗れ去った。
今シーズン、思うような試合をできないままに最終戦を迎えた福岡だったが、最後の最後で自分たちが思い描く勝利を手にした。「今シーズン最高といってもいいゲーム」。試合を振り返る布部の言葉に誰もが納得するだろう。まだ来シーズンのチーム編成は確定していないが、特別な日に自分たちらしさを発揮して勝利した記憶は、この日、ピッチに立った選手たちばかりではなく、所属する全選手、サポーターの心に焼きついたはずだ。これからどんな道を歩むことになろうと、この日の記憶は必ずそれぞれのサッカー人生の糧になる。そう確信できるゲームだった。
そして敗れた湘南も、この日の記憶は強く心に焼きつけられるはずだ。決して油断していたわけではない。万全の準備をしてレベルファイブスタジアムに乗り込んできたことは誰もが知っている。しかし、特別な試合で自分たちの力を出し切れずに敗れた。それもサッカー。必ずしも、積んできた準備が結果に結び付かないのもサッカーだ。そういう中で勝ち抜くために必要なものは何か。それを探し出すのが来シーズンへの宿題になる。そして、焼き付けられた悔しさを胸に10年ぶりのJ1復帰を目指す。
以上
2008.12.06 Reported by 中倉一志
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