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【J2:第12節 熊本 vs 岡山】レポート:初顔合わせは1−1のドローでお互いに連勝はならず。先制した岡山、追いついた熊本ともに、新たな課題を突き付けられた一戦(09.05.03)

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5月2日(土) 2009 J2リーグ戦 第12節
熊本 1 - 1 岡山 (13:03/熊本/4,776人)
得点者:28' 小林優希(岡山)、68' 木島良輔(熊本)
スカパー!再放送 Ch181 5/3(日)16:30〜(解説:池ノ上俊一、実況:山崎雄樹、リポーター:山田法子)
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 立ち上がりからの岡山の積極的なプレスに、熊本は序盤少し手を焼いた。バックラインから落ち着いて回しながら前に運ぼうと試みるが、ボールを受けた時の岡山のアプローチが早いためターンできないという場面も。それでもサイドでポイントを作って相手を寄せ、サイドチェンジから少ないパスで崩すという部分では、徐々に形を作りはじめ、8分、9分と、右サイドから好機を迎えたが決められなかった。

 しかし、よくよくこのシーンを振り返れば、単にフィニッシュが決まらなかったということではなくて、シュートを撃てる場面でパスを選択しているという問題が浮かび上がってくる。前節あれだけ前面に出ていたシュートへの意識が、たった1試合でこうも変わってしまうのもどうかと思うが、ボールを保持できていた事で、どこかで「より確実な」方を選択する、あるいは「失いたくない」という思考が働いていたのかもしれない。
 岡山にしてみれば、ボールは持たれているがシュートを撃って来ない以上、怖さはなかったはず。守備への戻りも早く、サイドで繋がれてはいても危険なエリアで積極的に仕掛けてくる動きがなければ、中央のゴール前に人数をかけさえすれば跳ね返す事ができる。クリアボールやフィードにはトップの西野晃平が競って、競り勝ちはしなくとも両サイドの小林優希と妹尾隆佑、ボランチに入った喜山康平らがタフに走ってセカンドボールを拾った。

 28分、ドリブルでつっかけた岡山のFW武田英明が倒される。約27mという距離は、ボールをセットした小林にとっては「狙える」レンジだったそうだ。熊本のGK稲田康志は前日の練習でFKを何本かセーブしていたし、この場面でもコースにしっかり反応してはいたが、ボールのスピードが速かった事で手が届かなかった。もっとも、キックそのものも素晴らしかったが、この場所でファウルしてFKを与えてしまうのは、10節・仙台戦でのFKからの2失点が生かされていないと言わざるを得ない。センターサークルとペナルティアークの真ん中辺りでボールを受けた武田に対して、熊本の選手は3人が囲んでいるが、ターンして、ドリブルできるスペースを与えているのは、誰も寄せて潰しに行っていないということ。しっかり身体を寄せてブロックできていれば、ファウルで止める必要はなかった。

 放ったシュートは34分の木島良輔のミドル1本だけ、という前半を受けて、後半の熊本はより攻勢を強め、50分過ぎからは前半にも増して圧倒的にボールを保持してゲームを支配。しかし、リードしてやや引いたことで、6〜7人がボックス内に揃うという岡山の厚い守備を崩せない展開が続く。57分には木島のミドルのこぼれ球に藤田俊哉が詰めたが決まらず、58分の中山悟志のシュートも枠を捉えられない。逆にカウンターからDFの間を割られてピンチを招く場面もあった。

 岡山の攻守の切り替えに関して「守備から攻撃は速いけど、攻撃から守備には弱さがあると思う」と北野誠監督が前日に話していたが、同点弾はそこを衝いた形。68分、小野雄平からのボールが入りかけた西野に対して石井俊也と河端和哉が寄せて奪い返し、中山、藤田、山本翔平とつなぎ、最後は木島が流し込んだ。奪ってからの早いつなぎ、ダイレクトでのラストパス、DFラインの裏へ斜めに入っていく動き等が絡み合い、中央を固めていた岡山のディフェンスを乱れさせた必然の得点だったと言える。

 この直後、疲れが見え始めていた中山に替え、熊本はスピードのある西森正明を投入。その後もチャンスを作る。一方の岡山も小林と武田に替えて三原直樹と保坂一成を同時にピッチへ送り、喜山を前線に配置。カウンターから追加点を狙いにかかる。87分には、右サイドで粘った喜山から三原とつなぎ、西野がGKの頭上を越すループを狙ったがバーに阻まれる等、お互いにネットを揺らすには至らなかった。

 どちらも「勝点2をこぼした」という印象のゲーム。岡山はこれで6試合目の引分けとなり、「試合の流れを意識して勝ちきるように、勝ち方を学ばないといけない」(妹尾)という段階に来た。そのためには、手塚聡監督のコメントにもあるが、「勝負どころを感じて、しっかり落ち着かせ、相手のリズムから自分たちのリズムに変えて行く」ことが必要になる。しっかりとオーガナイズされた守備が土台にあることを踏まえれば、その部分が試合経験を重ねて成熟することで、大きく躍進する可能性を秘めていると言っていい。
 一方の熊本は、押し込みながら引き分けた事で勝ちを逃したと見る事もできるが、本音の部分では“負けなくて良かった”という方が大きい。ちょうど同節の水戸vs鳥栖の試合後の会見で、水戸の木山隆之監督が「前に運ばなければポゼッションしている意味がない」と話しているように、何のためにボールをキープしているのか、今年目指しているサッカーがどんなものなのかを、改めて意識する必要がある。最近読んだ某スポーツ総合誌の記事の中で、釜本邦茂さんが「そんなにボールが大事なら持って帰ればええ」と話していて思わず笑ったが、90分の内でボールを支配している時間を競うのなら、相手に奪われないよう大事に回していればいい話。しかしそういうわけにもいくまい。
 次節(5/5@富山)は再び中2日で、連勝中の富山とぶつかる。2点取られても3点、4点取って勝つためには、決定率が50%のスーパーなFWがいたとしても、シュート7本ではだめだろう。北野監督が目指しているのは、そんなサッカーではないはずだ。

以上


2009.05.03 Reported by 井芹貴志
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