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【AFCチャンピオンズリーグ 天津 vs 川崎F】レポート:アウェイの洗礼を受けた川崎Fは、3失点で敗戦。グループリーグ首位は最終節へと持ち越される。(09.05.06)

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5月5日(火) AFCチャンピオンズリーグ
天津 3 - 1 川崎F (20:30/天津/15,717人)
得点者:12' マ・レイレイ(天津)、19' マ・レイレイ(天津)、51' レナチーニョ(川崎F)、90+4' トンマージ(天津)
ホームチケット情報 | 決勝戦は11月7日(土)に国立競技場で開催!
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 室内灯が消され、カーテンが締め切られた車内はただひたすらに薄暗かった。後味の悪い敗戦が、陰鬱な雰囲気を倍化させていた。すべての選手が乗り込んだことを確認すると、閉じられていた正面のシャッターがゆっくりと開き始める。関塚監督の「絶対に挑発に乗るなよ!」という鋭い声が静まるバスの空気を震わせた。選手を乗せたバスはパトカーの先導を受ける中、ゆっくりとスタジアムを出発した。

 フロントガラスからは、人の鎖を作る公安の職員の姿と、それを取り囲むようにして敗戦チームのバスを待ち構える天津サポーターの姿が見えた。何が起こるのか想像も付かない中、バスがサポーターの前へと進むと、突然鈍い音が車内に響いた。「ドン、ドン」という音が断続的に続いていた。ペットボトルがバスの車体に投げつけられていたのだろう。カーテンの隙間から外を見ると下品なポーズをする天津サポーターの姿が見えた。森勇介は、一人の暴徒が公安に取り押さえられていたと話していた。

 Jの基準では考えられない出来事である。どのカテゴリーの試合でも、通常試合後にはミックスゾーンが設けられ、選手が取材に応じるという手続きが取られる。ところがこの天津戦の試合前。川崎Fの関係者からスタジアムでのミックスゾーン対応をキャンセルする可能性がある旨を聞かされていた。結果次第ではあるのだが、同行報道陣も選手バスに同乗し、宿泊先のホテルで選手の報道対応を行う可能性があるというのである。用心するのに越した事はないが、まさかそんな事態に陥る事はないだろうと考えていたのが甘かった。日本と世界との感覚の違いをまざまざと見せつけられた出来事だった。

 ACL第5節。アウェイの天津に乗り込んだ川崎Fは、勝てばグループリーグ首位を確定できるという状況で試合に臨んでいた。韓国の現地時間13時にキックオフした浦項が勝利し、天津のグループリーグ敗退は試合前に確定。ズオ・シュシェン監督は国内での戦いへとシフトすべく中国代表の3選手やルイスといった主力メンバーを温存。3月11日の1節での直接対決時からは8選手を。ACL4節の浦項戦から見ても5選手を入れ替えてこの試合に臨んでいた。

 中国メディア曰く「主力ではない」彼らは、高いモチベーションを保っていたようである。そしてそれがときにラフな方向で川崎Fの選手に向かってしまっていた。たとえば右サイドバックとして先発した15番のリャオ・ボチャオは、あからさまなラフプレーに終始。サッカーとは違う方向で自分のプレーをアピールしていた。

 そんなリャオ・ボチャオのプレーに代表されるガツガツとした若さが出る集団にあって、チームを引き締めていたのがボランチとして先発フル出場した30番のトンマージだった。トンマージは川崎Fの攻撃を食い止めつつ攻撃のチャンスをうかがっていたのだろう。12分にそのトンマージの前線への飛び出しがきっかけとなりボールがつながると、最後は27番のマ・レイレイが、すばらしいミドルシュートを叩き込んで均衡が破れる。

 先制された川崎Fは反撃を試みるが、ラフなプレーで試合を壊そうとする天津の試合運びに引きずられ、冷静さを欠いてしまう。1点をリードした天津とすれば、真正面から組み合う必要はすでにない。天津はルイスに代わりトップに入った10番のチャン・シュオをターゲットとした攻撃を繰り返していた。対応するのは井川祐輔。足元に収めさせたくないという焦りがあったのか、その井川が与えた19分のFKはゴール前の競り合いを経由し、先制ゴールのマ・レイレイへ。コントロールされたシュートは絶妙なコースへと転がり天津の2点目となった。

 前半を2点のビハインドで終えた川崎Fは、後半開始から田坂祐介に変えてレナチーニョを投入。攻撃のてこ入れを図ると共に、ロッカールームでは関塚監督が「落ち着こう、アウェイの雰囲気に飲まれるな」との指示を出していた。頭を冷やした事で多少落ち着きを取り戻した選手たちは後半開始直後から天津に猛攻を仕掛ける。48分にクロスバーを叩いたジュニーニョのシュートに始まった攻撃は、51分のレナチーニョのヘディングによるゴールに結びつく。一気にヒートアップするスタジアムは、すでに高い水準にあった両チームのテンションをより一層高める事となった。

 1点のリードを守りたい天津はラフプレーを含めたあらゆる手段を使い試合を壊す方向へと逃げを打つ。サッカーである以上、売られたケンカを買うべきではないのだが、そこはチームメイトを削られて黙っていられるわけもなく、川崎Fの選手たちも徐々に体温を上げていってしまった。試合をコントロールできていないバングラディッシュ人審判団の判断も重なって、サッカー以外の場面で試合が止まる時間が長くなる。スタンドからは食べかけのパンやライター、ペットボトルが投げ込まれ、スタッフにはコインがぶつけられた。バタバタとピッチ上に倒れこむ天津の選手たちはそのままピッチ上で治療らしきものを受ける。主審が要請するタンカ係は、ヘラヘラと笑いながらダラダラとピッチ内へと歩いて入ってきた。まさに、アウェイだった。

 後半の84分。森が相手選手と交錯。それを見誤った主審が中村憲剛に対してイエローカードを提示。その後、ピッチ内へと天津のスタッフが乱入し、その中の一人がどさくさにまぎれて中村を足蹴にした。関塚監督は試合後の会見の席上「試合になりませんでした。敗戦という結果だけが残ったという試合でした」と悔しさを見せたが、天津にしてみればそれは狙い通りの試合運びだったという事になるのだろう。

 6分間の追加タイムが認められた川崎Fは逆転を信じて戦いを続けるが、逆に94分にトンマージに決定的な3点目を決められて力尽き、ACLでの始めての敗戦を喫する事となった。後味の悪さだけが残る試合の結果、川崎Fはグループリーグ1位通過を決めることができず。最終節の等々力での浦項との直接対決で雌雄を決する事となった。

 試合を壊された上に敗戦。護送されながらスタジアムを後にした寺田周平や中村といった選手たちは、ホテルで一息つくと問わず語りにサポーターを気遣う発言を口にしていた。天津が挑んできたサッカーという外見をした乱戦に、どうしようもない後味の悪さを感じ、ささくれ立っていた気持ちが、そんな発言で少しばかり和らいだ。そこに慰めを求めるしかないという、そんな試合だった。

以上

2009.05.06 Reported by 江藤高志
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