8月22日(土) 2009 J2リーグ戦 第35節
岐阜 3 - 2 横浜FC (18:03/長良川/9,113人)
得点者:23' 高木和正(岐阜)、52' 小野智吉(横浜FC)、62' オウンゴ−ル(横浜FC)、71' 嶋田正吾(岐阜)、80' 菅和範(岐阜)
スカパー!再放送 Ch183 8/24(月)22:00〜(解説:小島宏美、実況:松井秀、リポーター:桑原麻美)
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------
J2に昇格してから最多となる9,113人が詰め掛けた長良川競技場。観客はみな、長良川劇場の幕が開けるのを、今かと楽しみに待っていた。キックオフしてからしばらくは、舞台はエンターテイメント性が少ない公演が続いたが、時間が経過していくにつれて、役者(選手)たちは徐々に自分たちの演目にのめりこんでいくと、舞台は見るものを引き付ける最高のエンターテイメントとなり、終盤にクライマックスのときを迎えた。
『長良川劇場第二章』―。試合後、GK野田恭平のブログにはこう書かれていた。前節、札幌に敗れ、ホーム無敗記録は11で途切れたが、この日、最高の観衆の前で、最高の形で長良川劇場は再び幕を開けた。
この最高の劇場のシナリオをこれから振り返っていきたい―。
立ち上がり、岐阜はどこか集中力を欠いていた。全体の動き出しが悪く、ボールウォッチャーになる選手が散見された。パスミスが多く、さらにはマークを簡単に外してしまい、ピンチを招くシーンが続出。4分には、センターでのハイボールの処理の甘さから、DF田中輝和に押し込まれ、あわやゴールというシーンを迎えたが、これはゴールラインぎりぎりでDF田中秀人が掻き出した。13分には自陣でのボールをDFラインがボールウォッチャーになり、FW難波宏明に奪われ、慌ててファールで止めたDF冨成慎司がイエローカードをもらうなど、らしくないプレーが続いた。
横浜FCとしては、相手が浮き足立っている今のうちにゴールを奪いたいところだったが、チャンスをモノに出来ないでいると、岐阜に一瞬の隙を突かれた。23分、中央右寄りでMF高木和正がボールキープした瞬間、横浜FCのDF陣がボールに一斉に食いついた。その瞬間を見逃さなかった高木は、冷静に左サイドに出来たスペースに横パスを送ると、猛然と走りこんだ左サイドバックの秋田英義が、そのままペナルティエリアまで持ち込んでいく。完全に裏をかかれた右サイドバックの田中が慌てて対応に行くが、ファールで倒してしまい、PKを献上する。これを高木が冷静に決めて、まさにワンチャンスをものにして、岐阜が先制に成功する。しかし、岐阜はその後もらしくないプレーが続き、リズムを掴みきれないまま前半を折り返した。
後半、岐阜が最も警戒していたところから失点を喫してしまう。52分、まだ試合のリズムがどっちつかずの状況で、プレビューでも書いたように、岐阜が最も警戒すべき男にやられてしまった。右サイドやや中に絞り気味の位置でMF西田剛がボールを受けると、入れ替わるようにワイドに開いたFW安孝錬へ預け、トップスピードに乗ってからリターンパスを受けると、一気に加速してペナルティエリア内に進入。対応が後手に回った岐阜は、MF橋本卓がファールで倒し、今度は横浜FCにPKを献上する。これをMF小野智吉に決められ、同点に追いつかれると、62分には右CKから難波宏明のヘッドがオウンゴールを誘発し、あっさりと逆転を許してしまう。
しかし、これはあくまで序章に過ぎなかった。ここから「最後まで走りきるのがウチのコンセプト」とMF嶋田正吾が語ったように、確固たるシナリオが書かれた『台本』を各自が持っている岐阜の、最高のエンターテイメントショーが始まる。
足が止まり始めてきた横浜FCを尻目に、一人ひとりがハードワークをし、長距離を走ることで、厚みのある攻撃を展開するようになると、71分、GK野田恭平から放たれたボールは、迷うことなくゴールに向かって一直線に走り出したFW佐藤洸一の下へ。佐藤は2人のDFに競り勝ってボールをキープすると、飛び出してきたGKもお構いなしに、右足を強振。ボールはバーを直撃し、地面に叩きつけられて、上空に高々と舞うと、止まることなくゴールに突き進んだ佐藤が、相手GKと再び競り合い、クリアを阻止。ゴール前にこぼれたボールを、こちらも長い距離を一直線に走ってきた嶋田が、勢いそのままに豪快に突き刺し、ついに岐阜が同点に追いついた。
勢いに火がついた岐阜は、その後も猛攻を仕掛けると、80分、ついにクライマックスのときを迎えた。右CKを得ると、高木が放ったボールは相手DFのクリアに合うが、そのクリアボールはペナルティエリア外で待ち構えるMF菅和範の下へ、糸を引くように導かれていった。菅はじっくりと力をためて、ボールの落ち際をダイレクトで右足で叩くと、ドライブ回転したボールは、ゴール右隅に突き刺さった。
この瞬間、スタジアムは割れんばかりの大歓声に包まれた。バックスタンドから発せられるチャントはスタジアム全体に広がり、手拍子と歓声が選手たちを360度包み込んだ。物語はフィナーレと進み、ロスタイムも危なげなく過ごすと、タイムアップのときを迎えた。
3-2の劇的逆転勝ち。試合内容を厳密に見れば、序盤のイージーミスの連発など、課題の方が大きく浮かび上がるが、それを差し引いても、今の岐阜にとって大観衆の前での劇的勝利は、今後の運営、経営面でも非常に大きな意味を持つ。興奮の坩堝と化した長良川劇場が、さらに岐阜というクラブを魅力的なものにし、普遍的なものにしていく。
試合後、バックスタンド、ゴール裏、メインスタンドではカーテンコールが行われ、そしてさらに選手たちはユニフォーム姿のまま、長良川競技場へ繋がる中央デッキの上で、岐路につく観客たちを見送った―。
最後まで最高のエンターテイメントショーを選手たちはやりきった。この選手、クラブの思いが凝縮された勝利。今日のところはこれ以上は望めない。最高のショーを見せてくれた選手に感謝しつつも、ここで締めとして一言書き加えたい。
「長良川劇場は喜怒哀楽すべての要素を含んでいる。哀と怒を迎えたら、次なる喜の序章と捉えるべし。すべての人が関わり、短編ではなく、長編に渡って継続公演していくことこそが、真の『長良川劇場』と呼べるのであるのだから」―。
以上
>>この試合の写真をすべて表示
2009.08.23 Reported by 安藤隆人















