6月5日(日) 2011 ヤマザキナビスコカップ
柏 0 - 1 仙台 (15:00/柏/8,769人)
得点者:90'+3 中島裕希(仙台)
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3分、柏がゴール正面で得たフリーキックをジョルジ・ワグネルが直接狙えば、直後の5分に仙台もゴール正面左のフリーキックを梁勇基が狙う。統率された守備組織、鋭いカウンター、セットプレーの巧さ……。プレビューでも述べたように、いくつかの共通点を持つ両者の対戦は、一方がビルドアップを開始すると、もう片方がしっかり守備組織をセットして攻撃を待ち構えるという、非常に酷似した立ち上がりとなった。
「僕がいた頃よりパスを繋ぐサッカーになっている」とは、2009年まで柏に所属していた鎌田次郎の言葉である。レアンドロ・ドミンゲス、大谷秀和、栗澤僚一を中心に回すパスアタックは柏の特徴のひとつ。柏のそういったつなぎのうまさ、そして守備ブロックを作り上げた仙台が若干深めにライン設定をしたせいもあり、次第に主導権は柏へ傾き、遅攻と速攻の両方を駆使して仙台陣内へ襲いかかる。12分、北嶋秀朗から右サイドのスペースへ抜けた栗澤とつなぎ、ファーサイドへのクロスをレアンドロ・ドミンゲスが合わせるもGK林卓人が抑える。25分には、仙台の縦パスをインターセプトしたジョルジ・ワグネルが、逆サイドのレアンドロ・ドミンゲスへ糸を引くようなパスを通し、絶好のチャンスを演出。中への折り返しがDFに当たり、リフレクションとなって再び足元に戻ってきたボールをレアンドロ・ドミンゲスが右足で叩くが、これは枠を逸れた。
試合が進むにつれ、仙台の守備の連動性が上がる。前線の赤嶺真吾、太田吉彰が柏のボランチをケアし、その背後も富田晋伍、角田誠が中央を締める。そこで柏が無理に縦へクサビのパスを入れようものなら、28分の場面のように角田が奪い、局面は柏の攻撃から一転して仙台の鋭いカウンターへと移り変わった。
前半は、双方に怪我人が出るアクシデントにも見舞われた。柏はゴール前の競り合いで負傷したDF近藤直也に代わり安英学を投入。別の局面では、仙台も左サイドバックの朴柱成が負傷。前半終了までピッチに立ち続けたものの、後半開始からは朴柱成に代わって田村直也が起用された。
後半に入ると、柏が仙台を揺さぶりにかかる。左サイドは大津祐樹とジョルジ・ワグネル、右サイドはレアンドロ・ドミンゲスと酒井宏樹、サイドチェンジを織り交ぜながらピッチをワイドに使い、攻撃の手を強めた。「向こうはサイドが空いていたので、自分のところやレアンドロのところは起点にはなれていた」(大津)とは言うものの、むしろそこで両サイドのスペースを執拗に狙ったことで「外ばかりの攻撃になってしまった」(田中順也)。バイタルエリアは柏の攻撃陣と仙台の守備陣で窮屈となり、スペースを見出せない田中と北嶋はどうしてもフィニッシュまで持ち込めない。
だが、柏に全く決定機がなかったわけではない。74分、波状攻撃からのクリアボールを拾ったレアンドロ・ドミンゲスが、ゴール前から飛び出していたGK林のポジショニングを見定めて狙いすましたシュートを放つが、不運にもポストを直撃した。85分にはセットプレーのこぼれ球に対し、至近距離でジョルジ・ワグネルが振り抜いた左足シュートはバーを大きく越えていった。
また、仙台側の視点によれば「中を崩されるよりは外で1回時間を作らせて、そこに出させるイメージはありました」という鎌田の説明にもあるとおり、柏を術中にはめた感があった。しかも「ゲームの流れの中でホームで勝ちたかった柏が、うまくいかないイライラが先に出てくれたことが幸いした」とは手倉森誠監督の言葉だが、時間の経過に伴い柏にミスが目立ち始めると、一見柏に押し込まれているようだが、間延びした柏の組織の隙を突き、素早い切り替えからカウンターを繰り出す仙台の方に得点の匂いが漂い始めた。
そして0−0で試合終了かと思われた後半アディショナルタイム。左サイドの高い位置でフリーキックを得た仙台は、キッカーの梁勇基が外に開く松下年宏にパスを出し、左サイドから中央へクロスが入る。一度、外へ出したことでゴール前では柏のマーキングにズレが生じ、その一瞬の隙を突いてフリーでゴール前へ飛び込んできた中島裕希のヘッドが炸裂する。「0で推移させておいて、相手の隙が出た時に点が奪えればと思っていました」と言う手倉森監督のプラン通り、あまりにも劇的な幕切れで仙台が先勝した。“難攻不落”と言われる日立台を陥落させた仙台は、『アウェイでの勝利』という大きなアドバンテージを握り、絶対的な自信を持つホーム・ユアテックスタジアム仙台へ戻る。ヤマザキナビスコカップだけでなく、今後のリーグ戦に向けても、首位の柏を降したことでさらに勢力を拡大しそうな気配すらある。
敗れた柏だが、試合後、選手たちは「攻撃の形はできていた。ネガティブになる必要はない」と口々に述べていた。確かにこの大会に限っては、アウェイで2点以上を奪って勝利を収めれば勝ち上がれるため、その言葉にも一理ある。ただ、安英学が「山形戦と同じようにやられてしまった」と振り返ったように、柏が今季喫した2つの黒星には、コンパクトな陣形で堅い守備組織を持つチームに対し、押し気味に試合を進めながらもこじ開けられないという共通点が露わになったのも事実だ。柏がチームとしてもうひとつレベルアップするためには、今季の開幕前、もっと遡れば昨季のJ2を戦っている頃から指摘されたこの難題をクリアしなければならない。
そして、さすがリーグ戦で首位と2位に付ける両チームの対戦とあって、期待に違わぬ見応えのあるゲームだった。
以上
2011.06.06 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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