10月16日(日) 2011 J2リーグ戦 第31節
水戸 1 - 1 東京V (13:04/Ksスタ/3,947人)
得点者:56' マラニョン(東京V)、81' 小澤司(水戸)
スカパー!再放送 Ch183 10/17(月)深02:00〜
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試合終了の笛とともに両チームの選手たちは肩を落とした。試合は1対1のドロー。勝利を目指し、死力を尽くした両チームの選手たちにとって、なんとも悔しい結果となった。しかし、スタンドからは選手たちの健闘を讃える大きな拍手が巻き起きた。力と力のぶつかり合い、両チームの攻撃性が激しくしのぎを削り合う、サッカーの魅力が詰まった90分。震災後の復旧工事が終了し、7カ月ぶりにメインスタンドが開放されたKsスタに駆け付けた観客は満足して帰路につくことができたことだろう。「メインスタンドが復旧してはじめての試合。勝てればよかったけど、内容はすごくいい試合だったと思う。お客さんにも楽しんでもらえたと思う」。本間幸司はすべてを出し切った男にだけ許される充実した表情を見せた。
試合開始とともに水戸の積極的な姿勢が炸裂した。1分、塩谷司が鋭いインターセプトでボールを奪い、右サイドに展開。小池純輝が上げたクロスに対して吉原宏太が飛び込む。かろうじてDFがクリアしたボールを鈴木隆行がGKと競り合う。鈴木隆のプレーはファウルとなるものの、開始早々の一連の流れから「攻める」という強い意志が水戸の選手たちから猛烈に感じることができた。その後も東京Vのお株を奪うパスワークを見せて攻め立て、40分には、右サイドでの華麗なパスワークで東京Vの守備を崩し、最後はゴール前に入り込んだ小澤司がシュート。DFの体を投げ出してのブロックに阻まれるものの、東京Vの守備を翻弄する厚みのある攻撃を繰り広げた。
しかし、リーグ最多得点を誇る東京Vも黙ってはいなかった。後半に入り、けがの河野広貴に代え、高橋祥平を投入。すると、高橋が果敢に水戸のボランチにプレスをかけて水戸のパス回しを遮断し、息を吹き返す。そして56分、小林祐希のミドルシュートのこぼれ球をマラニョンが押し込んで、東京Vが先制する。劣勢の展開を跳ね返し、先制点を奪う。東京Vの底力を見ることができた。
そのまま東京Vの勢いに水戸は飲まれてしまうかと思われたが、柱谷哲二監督の下した采配により、水戸は流れを引き戻す。65分、吉原を下げて、ルーキーの鈴木将也を投入。ロメロ・フランクをトップ下に上げ、鈴木将をボランチに据える4−2−3−1へ。すると、鈴木将が中盤でアグレッシブなプレーを披露。東京Vの中盤に対して激しくプレスをかけて主導権を奪い返すことに成功する。
そして81分、自ら入れた縦パスのセカンドボールを拾った鈴木将がドリブルでアタッキングゾーンへ侵入。相手DFを十分引きつけて、小澤へラストパスを送る。ペナルティエリア左サイド、角度のないところから小澤が左足を振り抜くと相手DFに当たり、ゴールに吸い込まれ、水戸が同点に追いつく。
歓喜に沸く水戸の選手たち。しかし、その目は逆転しか見ていなかった。そこからの水戸の怒涛の猛攻はすさまじかった。鈴木隆とフランクが前線でボールをキープし、果敢に2列目、3列目の選手が飛び出す波状攻撃を繰り出し、東京Vを自陣に磔にする。82分、小澤からのスルーパスを受けた鈴木将が放った豪快な左足シュートはクロスバーに嫌われ、90+1分にはDFとGKの間に飛んだボールに反応したフランクがペナルティエリア外でGKに倒されるものの、ファウルはなし。さらに90+2分にはペナルティエリア内で鈴木隆が抜群のキープ力を発揮して東京V守備陣をいなし、最後はループシュート。GKの頭上を抜く華麗な弾道を描くが、またもやクロスバーに跳ね返されてしまう。ゴールこそならなかったが、迫力満点の水戸の攻撃にスタジアムの熱気は最高潮に達した。
水戸の猛攻を耐え忍んでいた東京Vも決して勝利を諦めたわけではなかった。90+4分、小林が強烈な左足のミドルシュートを放つ。本間がパンチングで防ぐものの、こぼれ球に詰めた菊岡拓朗が至近距離からシュート。対水戸戦4試合連続ゴールとなるかと思われたが、本間が驚異的な反応を見せてシュートをセーブ。その直後に試合終了の笛が鳴り響いた。
昇格争いに食い込むために勝点3が必要だった東京Vにとっては“負けに等しい”ドローとなった。「リズムが悪くても勝点3を取れないと(昇格)レースについていけない」と川勝良一監督が言うように、水戸のアグレッシブさに押されていつもの切れ味鋭いパスサッカーを繰り広げることはできなかったが、こういう試合を勝ち切る力強さがないことが現状の順位に甘んじている原因だと思われる。残り9試合、内容の悪い試合をいかに勝ち切れるか。それが奇跡を起こす条件となることだろう。
90分通して、水戸の成長ぶりを実感させるゲームであった。チーム始動からポゼッションサッカーを貫いてきたことが力となっていることを、リーグ屈指のポゼッション能力を誇る東京V相手に証明してみせた。サイドと中央をうまく使い分けながら攻撃を組み立て、東京Vの守備を揺さぶった。まだ要所でのミスが多いものの、相手の守備のバランスを見極めて、よりよい選択肢を選手たちは選ぶことができるようになっており、意図的にゴール前までボールを運ぶ回数は増えている。
それが選手たちの自信につながっている。先制を許しながらも、水戸の選手たちは「点を返せると思っていた」(小池)という。その思い通り同点に追い付き、さらに逆転を狙って猛攻を仕掛けることができた。前回の対戦では2点先制しながらも、1点返されてからバランスを崩して逆転負けを喫してしまった。4カ月前と比べ、明らかにメンタル面がたくましくなっている。
また、鈴木将の活躍も重要なポイントであった。以前、柱谷監督は「途中交代で出てきた選手がパワーを与えられない」と選手層の薄さを嘆いたことがあった。しかし、前節の鶴野太貴に続き、今節は鈴木将が途中出場で流れを変える役割を果たした。それは試合に出ている選手だけでなく、チーム全体が成長している証左と言えよう。さらに、状況に応じて4−4−2、4−2−3−1、4−1−4−1を使い分ける柔軟性も身につけており、この日も4−4−2から4−2−3−1に変更してリズムを取り戻した。チームとして強固な基盤が築かれようとしているのだ。
柱谷改革元年、順位こそ18位に低迷しているが、チーム作りは順調に来ていると見ていいだろう。「1試合1試合成長できているという実感はあります。ここからはチーム作りの最終段階。残り9試合、内容を結果につなげていきたい」と小澤は力を込めた。「若さ」から「強さ」へ、脱皮の瞬間は近い。
以上
2011.10.17 Reported by 佐藤拓也
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