11月3日(木) 2011 J1リーグ戦 第31節
名古屋 3 - 1 C大阪 (14:03/豊田ス/23,677人)
得点者:24' 藤本淳吾(名古屋)、36' 小松塁(C大阪)、42' ケネディ(名古屋)、76' 永井謙佑(名古屋)
スカパー!再放送 Ch183 11/5(土)前05:00〜
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試合を支配したのは技術でも戦術でもなく、メンタルだった。柏、G大阪と熾烈な優勝争いを展開している3位・名古屋と、中位をさまようC大阪。そのモチベーションの差がそのまま出た、あるいは差をつけることに成功したことが名古屋の完勝劇を生み出した。
ダニルソンが出場停止、そして中村直志が負傷のためベンチスタートとなった名古屋は、「ちょっと正直なところ大丈夫かなと思っていた」と田中マルクス闘莉王が語る通り、中盤の守備に不安を抱えた布陣で臨んでいた。代役はベテラン吉村圭司と20歳の磯村亮太。ストイコビッチ監督は彼らをダブルボランチに並べ、小川佳純と藤本淳吾をサイドハーフとする4−4−2を前節に引き続き選択した。ここにきて原点回帰とも言える布陣を選んだことは、それに対応できるまでに陣容が熟成したことの証でもある。
対するC大阪は前節と同じスタメンと布陣を選択。4−0の快勝だった磐田との一戦を見れば当然の決断といえるだろう。代名詞である3シャドーは清武弘嗣と倉田秋、そしてファビオ ロペスによって構成され、フィニッシャーの1トップは長身の小松塁が務める。カギを握るのはやはり清武ら中盤のアタッカーたち。高さ勝負では分が悪い前線において、彼らの“地上戦”は唯一の突破口と言える。
試合の趨勢は、開始15分で決まった。キックオフから先手を取ったのはC大阪だったが、2分に小松が放ったシュート以外は、これといった好機を作り出せずに徐々に後退した。逆に名古屋は最初のシュートこそ15分のCKを待たねばならなかったが、相手の看板である3シャドーの動きをボランチとDFラインで見事に制限。攻撃のビルドアップにはチグハグさが残っていたものの、16分、20分、23分と決定機を着実に作り、リズムを刻んでいった。
名古屋の先制点が生まれたのは23分のCKから。一度はクリアされたボールをつなぎ直し、ペナルティエリア前中央で玉田圭司がファウルを受けてFKを獲得。これを藤本が「あの場所ではスピードは必要ないし、壁を超える事を意識して蹴った」と冷静にゴール左上隅に流し込んだ。美しい放物線を描いた一撃には自身も現役時代に名手だった指揮官も「パーフェクト」と絶賛。得意のセットプレーをきっちりものにし、試合の主導権をぐっと引き寄せた。
その後、C大阪は36分にゴール前の混戦からPKを獲得し、小松が冷静に決めて同点としたが、反撃はここまで。42分にまたもセットプレーからケネディにヘディングシュートを決められ、再び突き放された。そして以降は、一方的な展開に持ち込まれることになる。後半に入ると名古屋の支配力はその強度を増し、「今日はよくわからなかった」(倉田)というほどにC大阪はやり込められた。それを察したストイコビッチ監督は「今日はC大阪の攻撃の脅威がなく、守備的に問題がなかった」と、後半15分を過ぎるあたりで永井謙佑と金崎夢生の2選手を同時に投入。ここ数試合での定番となりつつある攻撃的な交代策で、追加点を狙いに出た。勝負師の勘は的中し、76分にケネディのシュートのこぼれ球を金崎がボレーシュート。これはGKキム ジンヒョンが弾いたが、永井がきっちり詰めて2点差とし、勝負を決めた。
この一戦、3−1という数字以上に名古屋の完勝だったことは誰もが認めるところ。C大阪のレヴィークルピ監督は「この2年間で初めて、名古屋が良いサッカーを良い結果に結びつけた。ストロングポイントであるセットプレーを止められず、相手のDF陣はセレッソの攻撃をしっかり抑える守備力を持っていた」と名古屋の強さに脱帽した。攻撃面での機能不全については、倉田が「自分とキヨ(清武)がしっかりしなかったからチームが落ち着かなかった」と反省し、扇原貴宏と小松は「アタッキングサードの質が足らなかった」と振り返った。1点は返せたものの、C大阪にとっては完全に持ち味を封じられた、必然の敗戦だった。
だが、名古屋の選手たちの勝因に対する感想はもっと基本的で根源的なものだ。自分たちがどれだけ勝ちたいか、勝利に貪欲になれるか、ということである。ストイコビッチ監督は「勝ちたいという気持ちが上回っている内容に持ち込みたかった」と語り、キャプテン楢崎正剛は「一番はメンタル。俺らは優勝争いをしていて、相手は中位でどこにモチベーションを持っていけばいいかという状況。その違いを見せつけること。一番はそれ」と完勝の要因を気持ちに求めた。10年目の生え抜きである吉村も「一度追いつかれたが、失点しても崩れないメンタル面での強さが備わってきた」と、精神面での充実を口にしている。この日はライバルたちも揃って勝利し優勝争いに変動はなかったが、名古屋の選手たちは意に介さない。「相手が勝ったって、俺らは勝つしかない」と闘莉王が言えば、楢崎や藤本も「勝ってプレッシャーをかけていくだけ」と淡々としたもの。彼らの狙いは逆転でのリーグ連覇のみ。目先の1勝は貴重で必要なものだったが、一喜一憂している暇はないのである。
この日の勝利はラストスパートの一歩目にすぎない。しかし名古屋は最高の形でその一歩目を踏み出した。
以上
2011.11.04 Reported by 今井雄一朗
J’s GOALニュース
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