11月3日(木) 2011 J1リーグ戦 第31節
浦和 0 - 3 磐田 (17:03/埼玉/34,263人)
得点者:12' 前田遼一(磐田)、54' 山崎亮平(磐田)、67' 前田遼一(磐田)
スカパー!再放送 Ch308 11/5(土)後06:00〜
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完膚なきまでに叩きのめされた。ぐうの音も出ないほど浦和は何もできなかった。守備では常に後手を踏み、攻撃では「なにより決定機が1つもなかったのが問題」と永田充が肩を落としたように見せ場などないに等しかった。
試合は立ち上がりから磐田の狙い通りの展開になった。浦和が後ろからつないでくることを想定していた磐田は、前線から浦和のDFラインに厳しくプレス。余裕を奪われた浦和の最終ラインは大きく蹴り出すか、苦し紛れのパスを中盤に出してはインターセプトされることの繰り返しだった。「浦和がきちんとつないできてくれたのも、我々の守備がハマった要因だと思う」とは敵将・柳下正明監督の弁だ。
そして磐田は、浦和が試合の入りに失敗した隙を逃さず先制点を奪う。12分、駒野友一のCKから前田遼一が頭で一発。マークを外す前田の動きは見事だったが、気になったのは前田以外にもフリーの選手ができていたことだ。堀孝史監督はセットプレーの注意点を選手に与えていたというが、これ以外のセットプレーでもほとんど相手に先にボールを触られていた。セットプレーでの失点が1回だけで済んだのは幸運だった。
守備対応に難があったのはセットプレーだけではない。浦和はボールを持っても失っても、磐田の術中に完全に陥っていた。浦和はこの日も4−1−4−1で戦ったが、1ボランチの両脇にできるスペースを磐田におもしろいように使われた。磐田はボックス型の4−4−2だったが、両サイドハーフは中に絞ってプレーすることが多く、真ん中で3対3か、4対3の数的優位を作り出し、小島秀仁が1人で相手2人を注意しなければいけない状況を生み出していた。そして磐田は追い討ちをかけるようにFWの1枚、特に山崎亮平が中盤に落ちてボールを受ける動きを混ぜることで、浦和の守備をさらなる混乱に陥れた。
そのスペースを埋めるには、大きく2つの方法がある。1つはセンターバックが前に出て潰す形。しかし、それをやると今度は前に出たセンターバックの裏に穴が空く危険性がある。実際、3失点目は永田が小島の横でボールを受けようとした山崎を潰しにいったところで入れ替わられた形から許したものだった。それ以外にも、センターバックが潰しにいってピンチを招くシーンは何回かあった。「僕や左サイドバックの選手で潰してあげたかったけど、裏が怖かったので前に行けなかったというのもある」という永田の心情は理解できる。磐田はDFラインの背後を狙うボールも効果的に織り交ぜていた。そうすることで浦和のDFはラインを高く保つことができず、1ボランチとの距離も広くなり、スペースを与えてしまっていた。
もう1つの方法としては、他の中盤の選手が下がって穴を埋める形がある。しかし、浦和は攻撃時に無理やり前に運ぼうとしては相手の守備網に引っ掛かるか、パスミスで自滅というのを繰り返していたので、柏木陽介と梅崎司のインサイドハーフ2人は高い位置にいることが多かった。そのため、後追いになってカバーに間に合わないケースが多々あった。結果として、中盤の選手は誰もスペースを埋められず、DFラインは躊躇して潰しにいけないという八方塞がりの状況が数多く生まれ、小島はバイタルエリアでほぼ常に苦しい対応を強いられていた。
ベンチからの支援もなかった。磐田が1ボランチの両脇を狙っていたのは、誰の目にも明らかだった。対応を迫られた小島や永田は相手の狙いを感じ取っており、実際に山崎も「1ボランチで、あそこは空くと思っていたので狙っていた」と意図的だったことを明かしている。しかし、堀監督はハーフタイムで有効な打開策を授けることができなかった。後半に入っても、浦和の戦い方は攻守において前半と変わっていなかった。堀監督は自分たちのペースに持ち込むためにあえて相手に合わせることをしなかったのかもしれないが、あそこまで攻守とも機能していない状況で自分たちのスタイルを貫こうとするのはさすがに難しいだろう。
「自分の両脇のスペースは大きかったけど、そこを自分がコーチングで出させないようにしないと。自分が埋めたり、センターバックに埋めてもらったりのコミュニケーションがちょっと取れなかった部分もあった。自分がまとめられればよかった」。小島は力不足だったと己を責めたが、常に後手に回る厳しい状態での対応に手一杯だった高卒ルーキーにそこまで求めるのはあまりに酷な話であり、試合中に選手1人の判断でどうにかできるレベルの状況でもなかった。チーム全体で意思統一が図れるハーフタイムで修正しておきたかったが、この試合がホーム初采配だった新監督の経験不足が顔を覗かせてしまった。
シュート数は磐田の17本に対し、浦和はわずか6本。しかも、決定的な場面が何度もあった磐田に対し、浦和はほぼ皆無。スコアも0−3と完敗だったが、GK加藤順大のファインセーブがなかったらもっと悲惨な数字になっていたはずだ。試合後、原口元気は「これだけ何もかも駄目だと…」とうなだれていた。
同じ日に行われた試合で甲府が敗れたことだけが唯一の救いだった。他のライバルチームの結果を見ると、残留争いは実質的に甲府との一騎打ちになったと言っていいだろう。浦和は正念場を迎えている。
以上
2011.11.04 Reported by 神谷正明













