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【J1:第31節 川崎F vs 大宮】レポート:試合開始直後の失点を最後まで挽回できず、川崎Fがホームで敗戦。魂のこもった戦いを見せた大宮が残留へと前進した(11.11.04)

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11月3日(木) 2011 J1リーグ戦 第31節
川崎F 0 - 1 大宮 (14:04/等々力/17,556人)
得点者:2' 東慶悟(大宮)
スカパー!再放送 Ch181 11/5(土)後09:00〜
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試合が動いたのはキックオフの笛からわずかに2分後の事。クリアボールのこぼれ球を東慶悟が拾い、GKとの1対1を落ち着いて流し込むのである。共に降格圏からの脱出を意図する両チームの対戦は、早い時間に大宮が先制するという展開となる。

1点を先制した大宮は、序盤こそ川崎Fと対等に渡り合う。ラファエルと東の2枚が中盤にポジションを落とす一方、サイドハーフの橋本早十と李天秀の両選手が前方のスペースに飛び込んで川崎Fを揺さぶる。大宮の鈴木淳監督は「前半の中盤まではこちらもボールを動かすことができたのですが、以降は中盤を支配されて決定的な場面を作られた」との認識を示しており、実際に試合は前半30分ごろから川崎Fが大宮を圧倒する事となる。

試合開始直後に1点のリードを手にしたことについてCBの深谷友基は「早い時間帯での得点は逆に嫌でした」と話している。つまり、リードした事により当初は心理的な余裕を手にしていたはずだったものが、そのリードを守ろうとする意識の出現によりプレーに消極的な影響を及ぼし始めたのである。大宮が取らざるを得なかった前半の30分頃からの守備を重視した戦いぶりを振り返ると、試合を失いかねない影響だったとも言える。

ただ、深谷はそんな状況に追い込まれたからこそ、「集中できた」のだと振り返っている。試合途中から集中して守備と向かい合った大宮に対し、川崎Fは立ち上がりの失点を取り返すべく激しい攻撃を仕掛け続けた。例えば16分に田中裕介がペナルティエリア内に持ち込んだ1対1の場面や、20分の柴崎晃誠のミドルシュートの場面など。しかし、GK北野貴之の好守もあり、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

また、試合を左右するポイントの1つとして、大宮が採っていたジュニーニョに対する徹底的な対策というものもあった。例えば、ジュニーニョの左サイドからの崩しに関しては、タテへのドリブルを決して許さなかった。もし仮に左足でクロスを上げようとしても、ディフェンダーが体に当てて最低限CKにしていたのである。今年の川崎FのCKからの得点率の低さを考えれば、そのディフェンスは非常に理にかなったものだったといえる。

中村憲剛はそのジュニーニョの左サイドからの崩しに付随して「ジュニーニョが左で持ったときは、必ず上げてくるので寄らなくてもいい。だけど寄ってしまい中に人が足りなくなったりする。そういうこともあった」と周囲の選手の動きについて指摘している。ジュニーニョの左サイドでの突破については、通常の試合であればかなりの確率でクロスが上がってくるのは事実だった。ただ、この日の大宮は左サイドにおけるジュニーニョのタテへの突破を封じ込めており、フォローする周りの選手の判断も決しておかしいものではなかった。そしてそうやってジュニーニョを他の選手がサポートすることでゴール前の人数が足りなくなるという状況が起きていたのである。

局面での1対1で絶対に負けないのだという信念を持ったこの大宮の守備により、川崎Fはジュニーニョの崩しが封じられていた。そして、ゴール前での守備に関しても集中して実行していた。「事故(による失点)は起きるもの」との冷徹な判断を持っていたという楠神順平は、だからこそ「無得点だったのが問題でした。前の自分達の責任です」と悔しさをにじませていた。そして得点できなかった理由の1つとして、大宮の守備意識の高さを上げている。「サイドは何度か行けていたんですが、真ん中は強いと感じました。でも、そこをこじ開けないとダメです」

1−0で折り返した後半になると、川崎Fの攻撃はさらに熾烈なものとなる。ただ、打つシュートはことごとく枠をそれ、枠に行った時もGKめがけて蹴ってしまうなど、ツキからも見放されてしまった。前後半で20本のシュートを放ち、後半だけで11回の機会があったCKは試合を通じて14回を数えた。しかし、1点の壁は重く、大宮の逃げ切りを許す結果となった。ホームでの無得点での敗戦は、川崎Fというチームのこれまでの歴史を考えると、やはりあってはならないものである。

シーズンの早い時期に優勝争いから脱落し、ACL圏内の夢も断たれ、未だに残留が決まっていないという屈辱的な状況の中、等々力を訪れ、声援を送ってくれた17,556人のサポーターの存在だけがチームにとっての救いだったと言える。ただ、そのサポーターの好意に甘え続けていてはならないのは言うまでもない。等々力で行われるリーグ戦はあと1試合しか無い。その試合でサポーターに笑顔を届けられるのか。川崎Fの力が試されていると言える。

一方の大宮は、前半途中から見せた泥臭い戦いで文字通り勝点3を奪い取ることに成功。勝点を38に伸ばし、残留へと大きく一歩を踏み出した形だ。華やかさのかけらもない試合ではあったが、そこには確かに魂が込められていた。そして時として、そういう試合が人の感情を揺さぶる事となる。試合後の大宮サポーターの喜びが、そうした事実を物語っていた。

以上

2011.11.04 Reported by 江藤高志
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