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【J2:第36節 東京V vs 千葉】レポート:“モッてる”男・巻が自らの右足で古巣に恩返し!東京VにもJ2千葉戦初勝利をもたらし『THANK YOU VERDY MAKI』。(11.11.21)

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11月20日(日) 2011 J2リーグ戦 第36節
東京V 1 - 0 千葉 (16:03/味スタ/11,641人)
得点者:58' 巻誠一郎(東京V)
スカパー!再放送 Ch183 11/21(月)後05:00〜
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まさに“巻DAY”となった。自ら命名した古巣・千葉との『巻ダービー』。この試合唯一ゴールネットを揺らし、チームを勝利へと導いたのは、“東京ヴェルディの”巻誠一郎だった。

因縁の相手との一戦を前に、巻は「いつも通り、自分の100%の力を出し切って戦うだけです」と、じっくり丁寧に意気込みを語ったが、最後にこう付け足していた。「なんて、こうやって静かに淡々と話していますけど、胸の中では・・・何というか・・・ね。僕にとっては意味のある、特別な試合ですから」。抱く感情を表現するのに適切な言葉が見つけられないところで、期する思いの強さが十分伝わってきた。
9月4日の前回対戦時は、加入後間もなくコンディションも整わなかったため、後半アディショナルタイムわずか1分の出場に終わったが、今回は5試合連続となる先発出場と、満を持しての戦いとなった。

立ち上がりから、いつもと同じように体を張り、攻守にわたる献身的なプレーを続けた。右サイドのアポジの超スピードをより生かすために、「選択肢を増やしてあげたい」(巻)と、アポジが突破を仕掛けると同時に全力で並走し、枚数を増やした。抜け出しが上手い阿部拓馬が少しでも良い状態でボールが受けられるよう相手DFを釣り、スペースを少しでも広げるために潰れ役にもなった。
守備でも、ファウルとなってしまったが、大学時代の同級生・深井正樹に激しいプレスでボールを奪いに行くなど積極的貢献した。

チーム全体としても、水曜日に行われた天皇杯・浦和戦の反省もあり、前半から自分たちの流れに持ち込めていた。特に高橋祥平、小林祐希の若い両ボランチが非常に機能しており、巻、阿部、アポジを狙った縦に速い展開だけではなく、ボランチ2人での中央でのパス交換、さらには大きなサイドチェンジで中谷勇介、和田拓也、森勇介ら両ワイドを広く使いながら、パスをつないでいくなど、変化をつけた攻撃ができていた。
中でも効いていたのが、両ボランチに阿部が絡んでの攻撃ではないだろうか。「前で張っていてもらうよりも、何回かパスを回しながら相手を動かして、できたスペースに出ていった方が、阿部ちゃんも絶対に良いと思うし、相手もイヤだと思う」と、小林は話したが、浦和戦で川勝良一監督は「ボールを受けたがらない選手が何人かいた」という課題点も、こうして積極的にボールに絡んで流れを作ろうとすることによって、大きく改善されていたのではないだろうか。DFがボールを奪った後も、サイドの選手が持っている時も、前線の選手に入った時にも、高橋か小林のどちらかが常にボールを受けに顔を出す姿勢が目立っていた。

また、守備面では、「オーロイに入ったボールへのセカンドボールを絶対に拾おうとみんなで話した。そのためにはサイド、またはボランチとの関係をしっかり固められるかがポイント」と、土屋征夫は語っていたが、セカンドボールへの対応は非常に徹底されていた上、富澤清太郎、土屋の両センターバックが204cmの長身FWに競り負けることがほとんどなかったため、特に前半はほとんど危ないシーンを作られることはなかった。
攻守とも、理想通りのゲーム内容で前半を折り返したが、だからこそ、「前半から1点2点取りたかった」(川勝監督)というのが、今後の課題として残ったこともまた事実だろう。

それにより奮起したのが、巻だった。「前半から圧倒してボールを回していたのに、阿部や僕がしっかりと点を取らなければいけない。だから後半は、点を取ることにより集中して、強く意識しました」。その思いは、しっかりと結実をみる。後半13分のことだ。直接FKからの流れで、一度は千葉に跳ね返されたボールを富澤が再び頭でエリア内に送ると、クリアしようと高く上げた相手DFの足には当たらず、高橋の頭へ。「完全にシュートでした。右隅を狙ったんだけど、頭の上の方に当たってしまった」と、高橋がミートできず流れそうになった先に詰め、押し込んだのが、背番号41だった。「祥平くんが頭に当てた時、そこに走ってるんだ!?って、本当に凄いと思いました」小林は、日本代表クラスの察知力と判断力を目の当たりにし絶句していた。
『ゴール』というFWとして最高の結果を残し、自らの足で古巣への雪辱を果たした巻。「今は緑のユニフォームを着て、このユニフォームに誇りを持って闘っています。ジェフのサポーターのみなさん、今まで支えてくれてありがとうございました。そして、ヴェルディのみなさん、これからもよろしくお願いします」。巻誠一郎というサッカー選手の中で、一つの区切りがついたのではないだろうか。

「ヴェルディに来てくれて、本当にありがたい。巻君の思いを少しでも背負って戦いたい」と語っていた富澤、柴崎、小林はじめチームメイトたちの思い、そして自らの“モッてる”強運が招いた、このゴール、一勝だったように思う。
2年間、J2での対戦で初めて千葉から勝利を挙げたという意味では、チームにとっても非常に大きな一勝となった。
現在6位。「去年(5位)より下の成績で終わりたくない」という、指揮官の思いを達成するためには、次節5位北九州との直接対決に是が非でも勝利し順位を上げ、最終戦で固める。つまり、2連勝するしかない。

この試合の前日、徳島の勝利によってJ1昇格の可能性が消失したばかりの千葉にとっては、メンタル的影響が全く無かったとは言えないだろう。それでも、「一人のサッカー選手としてピッチに立つ以上、試合に全力で集中して闘うのは当たり前のこと。悔しいの一言しかない」と、深井は怒りを露わにした。
特に前半は、「ロングボール一辺倒になってしまった」と村井慎二が振り返ったように、2試合連続の先発となった長身オーロイにボールを集めようとするが、東京Vのアグレッシブで速い突破と巧みなボール回しとに翻弄され、「ボールの奪いどころがなかった」(村井)。中盤でなかなかボールがおさまらなかったため、攻めの形がほとんど作れないまま45分間を終えた。

後半、1トップを久保裕一に代えたことで、少しずつ監督交代後の千葉が目指そうとしている、パスをつないで攻めるサッカーが見られるようになるが、「先に失点して難しくなってしまった。セットプレーからの流れだったから勿体なかった」と、村井は悔しそうに語った。
その中で、終始孤立奮闘を続けたのが深井だったのではないだろうか。深井の突破には、東京VのDF陣も手を焼き、何度か決定的なシーンも作ったが、「一人だけ頑張っても・・・」表情は硬かった。
決勝点を決めた大学時代の相棒・巻の活躍に、「苦労した人にはそれだけの結果がついてくる。僕たちも来年でJ23シーズン目。この苦しい思いを力に変えなければ」と、立て直しを誓った。

以上

2011.11.21 Reported by 上岡真里江
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