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【J2:第18節 湘南 vs 富山】レポート:「湘南劇場」ふたたび。中村祐也の決勝弾で9戦ぶりの勝利。富山は粘り強く戦うもアディショナルタイムに沈む。(12.06.10)

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長かった。勝点3を手にするのも、ゴールを奪うまでも。チームとしても、また個人としても。4月の終わり、第10節水戸戦に敗れて以降、勝利から遠ざかっていた湘南はこの日、9試合ぶりの歓喜を手にした。

前半だけで7本のシュートを数えたように、立ち上がりから圧したのはホームの湘南だった。菊池大介がパスを引き出す動きを繰り返し、ホーム初先発となる宮崎泰右はボールタッチを増やしてドリブルを仕掛けた。攻撃のバロメーターにもなりうる両サイドハーフの重心は高く、併せて山口貴弘とプロ初出場初先発の三原向平の両ストッパーも攻撃に出る。「自分たちが上がることによって相手を引かせたほうがいいと思っていた」高山薫はそう振り返る。同じフォーメーションを敷く相手との駆け引きで先手を奪い、「楽しい、と思いながらサッカーができました」と、高山は笑みをこぼした。

対する富山は5バックで応戦し、カウンターの機を窺う。自ずと富山陣内での攻防は増え、ときに繰り出される富山のカウンターにも鎌田翔雅をはじめ湘南の帰陣は速い。一方、ポゼッションでは譲る恰好となった富山も、8枚ないし9枚のブロックを築き、湘南にスペースを与えない。コーナーキックから坂本紘司が押し込まんとすればGK鶴田達也が阻み、かたや前節の得点シーンを思い出させるような高い位置でのパスカットからソ ヨンドクが枠を狙えば湘南GK阿部伸行も鋭い反応で牙城を守る。構図は湘南優勢も、集中力の高さはともに譲らず、攻守の切り替えを含めて目の離せない展開となった。

互いの集中力は粘り強い守備に見て取れた。反面、雨交じりのスリッピーなピッチとボールを押し戻すほどの強い風に、自らマイボールを失う場面も少なくない。「ボールは奪えていたが、そのあとのパスがずれることが多かった」と、富山の大西容平は攻撃面の課題を口にしている。こと富山にあっては、あえて風上を選んだ前半にリズムをつくれなかったことがひとつ悔やまれるところだろう。

試合を振り返り、富山の安間貴義監督は語っている。
「攻めにテンポが出ず、湘南さんのインターセプトからの湧き出てくるような攻めを自分たちが招いていた。苦しい試合だったと思う。ただ、ミスしたあとに埋め合わせすることで、0−0で粘っていけた。ふたたび粘り強さは出てきたのではないかと思います。結果は負けてしまったが、果敢に湘南さんに挑んでいった彼らは称賛したい」

構図は後半に入っても変わらない。立ち上がりこそ富山が前への推進力をもって入ったものの、ふたたび湘南が相手陣内での展開に持ち込んでいく。縦パスを介し、左から右から攻め立てる。馬場賢治のパスに高山がシュートで応えれば、永木亮太のフリーキックには坂本がヘッドで枠を狙った。ともに攻撃的なカードを切るなかで、チャンスを重ねたのは湘南のほうだった。しかし、スコアは頑ななまでに動かない。

ただ、動かぬスコアのなかにもゴールへの布石はあった。古林将太に三原が絡み、右サイドからの攻撃が前半以上に活性化する。70分に中村祐也が入ると、その中村を経たクロスによって湘南は再三ゴールに詰め寄った。

幾度重ねただろう、アディショナルタイムの決勝点はまさにそのかたちだった。中央で中村が時間をつくり、その間に仲間が4人5人とゴール前に大挙する。右サイドで受けた古林が狙いを定める。混戦のなか、シュートが一直線に枠を目指す。それまで好守を続けていたGK鶴田の手も届かない。ピッチで、ベンチで、スタジアム全体で歓喜が爆発する。古林のクロスにヘッドを振ったのは、中村だった。

「あいつはあまり喋らないが、怪我のアクシデントで1年できず、点を取れなかったことはほんとうに――言葉にできないぐらい彼の思いがあったでしょう。挫けることも正直あったと思います。でもそれをバネにして次に繋げるのが彼の精神力の強さだと思う。監督としてではなく、ひととして彼の姿勢は称賛に値すると思っていた。それが結果に繋がり、僕自身もほんとうにうれしい」曹貴裁監督の言葉は、中村のみならず、怪我からの復帰を目指す選手やバックアップメンバーを含めてすべての選手に届けられているように映る。選手たちには「サッカー楽しいな」と思ってプレーしてほしい、そう常々語る指揮官のことだ。図らずも高山が口にした言葉とあわせて、糧多き試合といえるに違いない。

「勝てていなかったので、チームの気持ちがゴールに繋がったと思う。コースはちょっと甘かったと思うけれど」この日の立者はそう言ってすこしだけ頬を緩めた。多くを語らぬ男のいろんな思いが一瞬だけ、顔の上をよぎった。

以上

2012.06.10 Reported by 隈元大吾
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