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【J1:第19節 神戸 vs G大阪】レポート:因縁の一戦、決着付かず。そしてスタジアムは異様な静けさに包まれた(12.07.29)

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試合終了のホイッスルが響いた後、ほんの一瞬だがスタジアムは静まり返った。それまでの激しい応援が嘘のように。選手や監督、スタッフだけではなく、死力を尽くしたサポーターたちにも、90分を戦った後に余力は残されていなかったのかもしれない。

G大阪の松波正信監督が会見で「いろんな意味で注目されるゲームだった」と振り返った通り、この一戦は神戸・西野朗監督にとっての古巣対決に止まらず、様々な因縁があった。今季開幕戦では神戸の橋本英郎が古巣との決別弾を決めて勝利しており、今節の前にはかつて神戸でもプレーしたレアンドロがG大阪に加わるなど。試合当日には、レアンドロが神戸サポーターから大ブーイングを浴びせかけられ、逆に西野監督や橋本がコールされるとG大阪サポーターからは容赦ない声が飛んだ。いつものダービーマッチとは比べものにならない熱気に包まれた中で、注目の一戦は幕を開けることとなる。

前半の立ち上がり15分間。G大阪は倉田秋が左サイドからドリブルで何度も突破を試み、神戸は小川慶治朗が持ち味のスピードを生かして果敢にG大阪ゴールを脅かす展開。10分にはペナルティエリア左外で神戸の相馬崇人がG大阪の武井択也にファウルを受け、神戸はセットプレーのチャンスを得る。キッカーは名手・野沢拓也。鋭い回転が掛かったボールが田代有三の頭に吸い寄せられる。だが、田代のヘディングシュートは惜しくもバーの上へ。その後も神戸は立て続けにセットプレーのチャンスを得たが、G大阪の必死のディフェンスに先制点を阻まれ続けた。

そしてこのピンチを凌いだG大阪は、遠藤保仁を軸にじわじわとポゼッションを高め、多彩な攻撃を見せ始める。22分には倉田が中央で仕掛け、思い切りのいいミドルシュートを放ち、27分にはスルーパスで抜け出した倉田から中央の佐藤晃大へ絶妙な折返しが入る。再三に渡って神戸のDF陣を何度も慌てさせた。30分には藤春廣輝がオーバーラップからミドルシュートを放つなど攻撃に厚みを加わっていく。その中で神戸は、33分に伊野波雅彦のロングフィードから田代が頭で落とし、小川のキープから相馬がカットインしてシュート。相手GKがかろうじてゴールマウスを死守するという決定機を作った。単なるパワープレーではなく、西野監督が言う「速攻も1人、2人で仕掛けるのではなく、手数をかけてパス交換しながら行く」というコンセプトを貫いたいい例だろう。ただ、それぞれにストロングポイントを出しながらも、前半は0−0のスコアレスで折り返すことになった。

後半。気温28.2度、湿度76%、熱気に包まれたスタジアムは体感的にそれ以上の蒸し暑さを帯び、容赦なく選手たちの体力を奪っていく中でゲームは進む。スタートから仕掛けたのは、ハーフタイムに「中盤はアタッカーディフェンスを意識して」という監督指示を受けた神戸だった。
開始早々、小川が激しいプレッシングからボールを奪うと、そのままドリブルで前線へ。それに反応したボランチの田中英雄が小川からボールを受け、左サイドに開いた野沢へ展開する。野沢のクロスはG大阪に跳ね返されるも、最初からいい攻撃を作った。その2分後には田中のインターセプトから田代、小川とつなぐ質の高いカウンターも見せた。このまま神戸のペースで進むかと思われた序盤だったが、ゲームを支配したのはG大阪だった。

ハーフタイムに松波監督から「攻撃の時はしっかりボランチでバランスをとること」と指示を受けていたG大阪の選手たちは、ボランチの遠藤を経由して攻撃を組み立てて行く。すると、徐々に遠藤が高い位置でボールを捌き始め、外・中・外、前・後ろ・前といったG大阪らしいリズムが生まれた。連動して倉田、佐藤、レアンドロらが水を得た魚のように躍動する。そして69分、ついに0−0の均衡を破った。右CKのチャンスで遠藤がショートコーナーを選択、ペナルティエリア内でパスを受けた二川孝広が思い切りのいいシュートを放つと、これが神戸の選手に当たってゴールネットを揺らす。目の前で起こったこの先制劇に、G大阪サポーターは沸き、躍った。遠藤は先制点について「たまには変化つけてみようかなと。ある程度早いボールならシュートも打てる、センタリングも出せる、ああいう変化を付ければ相手もやりにくくなると思う」と振り返った。
それまで遠藤はCKの多くをファーサイドへ蹴っていた。直接ゴールを狙ったシーンも2回ある。その布石の後のショートコーナーに、神戸ディフェンスの対応が一瞬遅れた。このチャンスを逃さない二川のゴールへの嗅覚もさすがと言えるだろう。

1点を負う神戸は76分に大久保嘉人、都倉賢に続く3枚目のジョーカーとして森岡亮太を投入。その直後の77分、これまでG大阪の藤春に抑えられていた神戸の奥井諒が粘って右サイドを突破し、ニアの都倉にクロスを上げる。それを都倉がフリックで後ろへ流すと、走り込んで来た大久保が鮮やかなボレーを決めた。今度は神戸サポーターが目の前の同点劇に沸き、踊る。
その後、G大阪は横谷繁、金正也、パウリーニョというカードを立て続けに切って、最後まで勝点3を追いかけた。神戸もG大阪の最後の猛攻をしのぎつつ、追加点を狙い続けた。だが、決着は付かず。試合終了のホイッスルと同時に、死力を尽くした両チームとサポーターはしばし呆然と宙を見つめた。全てを出し切った末のドローゲームに訪れる、あの特有の高揚とも無常とも判然としない沈黙が、ほんの一瞬だがスタジアムに訪れていた。

以上



2012.07.29 Reported by 白井邦彦
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