毎年のことだが、Jリーグ・マッチ・スケジューラー、愛称「日程君」は、絶妙な仕事をする。この最終節に2位から5位の4チームに自動昇格のチャンスがあり、同時に4チームの降格のピンチが残されている。さらに、自動昇格を狙うチームと降格のピンチに立たされているチームの対戦が2試合もある。この横浜FC対岐阜戦もその1つ。両チームの目指すところを考えると、メンタル面でのコントロールが重要になる。横浜FCは自動昇格のためには勝点3が最低条件、岐阜は引き分け以上でJ2残留が決まるが、それを狙って実行することが難しいことは、誰もがわかっていること。だからこそ、いかに自分達の普通のサッカーを出せるかが、最終的に勝負に直結する。難しい状況の中、平常心を保ったチームに結果がもたらされるゲームだ。
横浜FCの今週の練習場は、その意味で変な緊張感に包まれることなく、あくまでも平常運転だった。これまで通りに、ボールの運び方、人の動き、粘り強い守備、アタッキングサードでの崩しなどの動きの精度を少しでも高める練習を繰り返している。報道陣のほうが少し過熱気味で、選手は至って冷静だ。夏頃プレーオフ圏内直前で足踏みしている時に、大久保哲哉選手は「プレーオフ圏内に入ったら景色が変わるし、そこでいかに戦えるかが本当の勝負」と語っていたが、実際に第37節の大分戦の勝利でプレーオフ圏内入りを果たした後、3勝1敗で一度もプレーオフ圏内から落ちていない。特筆すべきは、ベテランだけでなく若手も含めて落ち着いたプレーぶりを披露していること。その理由を堀之内聖は以下のように語る。
「目標がプレーオフ圏内ではないからじゃないですかね。最初は優勝を目指していて、それが無理になってからは2位を目指して。プレーオフ圏内は達成したいことの1つではあるけど、そこが目標じゃない。今まで下から上がってくるだけで上位に固執するプレッシャーはなかったので、それもよかったと思う」
この試合でも、横浜FCに守るものはない。2位に入るには様々な他力の条件があるため、まずは確実に勝点3を奪って、他会場の結果を待つしかない。例えば、京都が負けて、湘南が引き分けた場合には、4点差以上の勝ちで2位が見えてくるという条件があるが、4点を取りに行くサッカーで実際に4点を取れることはほとんどないし、逆に負けるリスクを負うことにもなる。「得点は取らないといけないと思うが、まず勝つことが大事」(大久保)、「1-0だったら2-0を目指すし、2-0だったら3-0を目指す、それはいつも通りのことだし、変わらない」(堀之内)というように、いつも通りの戦いで勝利を目指すことになる。昇格に絡む試合で得点の経験が豊富な田原豊の言葉が、今の横浜FCの良い意味でのリラックス具合を上手く表現している。
「(結果や状況は)おまけみたいなものであって、今となれば、選手がやることはサッカー自体だからサッカーをやればいい。サッカーをやって、その結果としておまけに何かがあったり、何かの条件がある形。純粋にサッカーをやろうと思う」
ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込む岐阜は、引き分けでJ2残留を確定させることができる。ただし、引き分けで良い試合で実際に引き分けてみせることは非常に難しい。だからこそ、岐阜も自らの強みを100%出すことが求められる。岐阜の強みは、固い守備。後半戦はそれが発揮される試合も多く、湘南、東京V、栃木に勝利し、甲府、大分、千葉、山形と引き分けるなど、昇格争いをしているチームから勝点を奪ってきた。プレーオフ圏内で昇格争いをしているチームの中で後半戦、岐阜に勝利したのは京都だけである。その強みを最終戦で出すことができれば、J2残留という結果は自ずとついてくる。前節の徳島戦でも、守りながらも後半40分に決定的なチャンスを作るなど、ゲームプランに近い戦いは見せていた。前節、長良川に集まった11,119人の思い、そして2001年の創設、2008年のJ2参戦を経て、変わらずFC岐阜をサポートしている全ての人の思いを繋げる結果を残したい。
試合は、立ち上がりから主導権を握りたい横浜FCに対して、岐阜がカウンターを狙っていく展開になることが予想される。この試合は焦れたほうが負け。「最近は0-0でも焦らないで、攻め急がないでというのができている」(横浜FC・八角剛史)というように、平常心が一番のキーワードになる。
横浜FCがJ1に昇格する時、それはこの1試合だけでなく、この1シーズンだけでもなく、1999年の設立から関わった全ての人の努力が線として連続して繋がった結果としてもたらされるもの。選手生活を横浜FCで全うした人、不本意ながらチームを去った選手や監督、今を戦う選手や監督、過去の全てのクラブのスタッフ、そしてなんと言っても長い間チームを支えたサポーター。全ての努力の蓄積が結果として結実する時に、昇格が手の中に入る。それは、2006年にも横浜FCが経験したこと。今年は最下位から這い上がってきた。さあ、最後の一押しのために、三ツ沢の丘へ登ろう。
以上
2012.11.10 Reported by 松尾真一郎
J’s GOALニュース
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