今季のJ2で一番しびれる試合になるだろう。町田市立陸上競技場(通称・野津田)のチケットは全席種が完売。FC町田ゼルビアは最下位脱出、残留がかかる。湘南ベルマーレは2位浮上、自動昇格まであと一歩だ。両クラブの運命が決まる、最終節の大一番である。
22チームの定数が埋まったJ2は、今季からJFLとの入替が始まる。J2ライセンスを持つV・ファーレン長崎は、既にJFL2位以上が確定。1位なら自動昇格で、2位ならJ2最下位チームとの入替戦に進む規定だ。となれば、J2の最下位は降格に直結する“地獄の一丁目”だ。
町田は第40節を迎えた時点で、21位との勝点差が6ポイントあった。しかし負けたら終わりの2試合を乗り越え、“首の皮の厚さ”を見せている。J2の残留争いは大混戦で、最終節を迎えて19位・富山、20位・岐阜、21位・鳥取が、いずれも勝点35で並ぶ。数字上は町田を含めた4チームに最下位の可能性が残っている。勝点32の町田が試合で生き残る決める条件は、まず勝点3を取ること。他3チームの結果が不首尾に終わって勝点が並べば、得失点差の比較になる。実質的には町田(得失点差−30)、鳥取(同−46)、岐阜(同−27)の3チームによる争いだろう。岐阜とは得失点差が近いので、総得点数で決まる可能性もある。
町田にとって前節・水戸戦は負けゲームだった。特に後半はGK修行智仁が1対1で凌いだり、ポスト、バーに助けられるピンチが続出。「運があったし、バーに助けられたところもある」(修行)という展開で、勝点1をもぎ取った。鳥取と富山が敗れ、岐阜が引き分けたことにより、町田は何とか生き残った。町田に戻るバスの車内では、多くの選手が携帯で岐阜戦、鳥取戦の経過を見守っていたという。町田にとって大きかったのは湘南×鳥取戦の結果だ。引き分ければ残留が確定していた鳥取は、キリノのゴールで87分に失点し、町田と勝点差が3に縮まった。選手が「まだ運はあるのかなと思った」(加藤恒平)、「キリノに助けられた」(鈴木崇文)と振り返るように、劇的にして“助かる”展開だった。しかし前節に町田を助けた湘南が、最終節は敵になる。
湘南にとっても、最終節の重みは変わらない。今年はJ2からの自動昇格が3チームから2チームに減り、残り1枠は4チームによるプレーオフで決まる。勝点72の3位・湘南は、2位・京都と勝点1差。得失点差は上回っている。湘南は京都を逆転して、自動昇格を決めたい。
湘南と町田はどちらも“追う立場”で、勝点3がノルマになる。そういう状況もあって両監督のコメントは驚くほどよく似ている。「自分たちのサッカーをやりきって、勝点3を目指すだけ」と語るのは湘南の曹貴裁監督。町田のアルディレス監督も「自分たちのサッカーをして勝つ」と述べている。曹監督は「選手たちには平常心でプレーさせてあげたい」と語り、アルディレス監督は「プレッシャーを取り除く、もしくはチームメイトと分散する、そして平常心で臨むことが重要」と強調する。お互いのキャラクター、目指すサッカーは違えど、大一番に臨む両監督の姿勢は同じだ。
町田にとって湘南は、最後にして最強の敵となろう。「攻撃、守備、切替と全てにスピード感がある」(修行智仁)という湘南の躍動感は見る者を魅了し、相手を苦しめる。今節はCB遠藤航をU-19アジア選手権参加、菊池大介を累積警告で欠くが、スピードと攻撃力のある古林将太、高山薫の中盤両サイドは脅威。一方で「そこを抑えれば相手の特長も消える」(三鬼海)という潰しどころともなろう。町田の生命線はやはりボールの支配。湘南のハイプレスを避け中盤のディミッチ、鈴木崇がいい形でボールを持てれば、エース北井佑季のスピードも生きてくる。早い時間の布陣の変更、早い時間の選手交代を躊躇しないアルディレス監督の采配も注目だ。
J2からJFLに降格することが何を意味するか?その答えはまだ誰も分かっていないが、J1からの降格よりも重いことは間違いない。町田は技巧的なサッカーにこだわり、日本代表や多くのJリーガーを育てた“少年サッカーの街”だ。しかし町田が本当の意味で“サッカーの街”になるためには、Jクラブが必要だ。都4部から積み上げた23年の歴史と、Jという夢を目指してこのクラブに関わった多くの人の思いを背負って、町田はこの大一番に臨む。
以上
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