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引き分けは「負け」を意味する。
プレーオフに6位で出場した大分にとって、それがプレッシャーとなった。立ち上がりの硬さはスタンドから見ていても伝わってきた。個の能力で上回る京都にボールを回され、中途半端なクリアは拾われてしまう。しかし、これまで焦れずに厳しい戦いを勝ち切ってきたチームには「耐える力」が備わっていた。「ウチはダメなら走ってプレッシャーをかけようというのが統一されている。上手いプレーなんてできないので、リズムを作るのは運動量とか切り替えの部分。そこが徹底できた」と永芳卓磨が振り返るように、前線が懸命にボールを追うプレーが後方に伝染した。組織的なチャレンジ&カバーでボールを奪うと、サイドを経由してゴールを目指す形が随所に見え始める。
17分に木島悠のドリブル突破から得たFKを、森島康仁が直接ネットを揺らすと完全にプレッシャーから解き放たれた。地に足がついたイレブンは、ボールを動かしながらどこにスペースがあるのかの判断や動き出し、そこを見逃さずに供給されるパスなど、これまで築き上げたスタイルを繰り出す。加えて2トップを裏へ走らせるシンプルさを織り交ぜ、33分には、チェ ジョンハンが仕掛けて、クロスに対しニアに入った森島が仕留める「狙い通りの形」で追加点を奪った。
リーグ終盤から凄みを増すエースのゴールは、後半も続いた。61分にPKでプロ入り初のハットトリックを決めると、90分にもカウンターからゴールを決め4得点と大暴れし、この日の主役となった。
エースのゴールをお膳立てするために、2トップを組む木島、ワイドのチェ ジョンハン、三平和司が果敢に仕掛け、運動量でチームに活力を与える永芳、丸谷拓也の2シャドーが巧みに絡む。ボールを奪われてもアンカーの宮沢正史と左右のストッパー土岐田洸平、安川有が常にプレッシャーを掛け続け、CBの阪田章裕が相手の攻撃をはね返す。そして最後尾の丹野研太が安定したプレーでチームに落ち着きを与えた。
さらに石神直哉、村井慎二、林丈統ら途中出場のベテランが、短い出場時間のなかでも自分の役割をまっとう。「これまで目指してきたものができた」(宮沢)。気持ちで相手を上回り、焦れずに戦い切る今季の大分を再確認することができた。
この日、3年前にJ2に降格が決まった西京極に駆けつけた900人を越えるサポーターたちは、「大分のすべてをかけて共に歓喜の瞬間へ」と大書した弾幕を掲げていた。
今季の大分はサポーター、大分の県民、行政、経済界に支援金を募り、J1からの借入金を完済しプレーオフの舞台に立っている。「何とか恩返しをしたい。最後は、みんなで笑える様に、またこれからいい準備をして、5日後の千葉戦に備えたいと思う」と田坂和昭監督の思いは選手も同じ。
歓喜の瞬間へ――。残り1試合に全てをかける。
以上
2012.11.19 Reported by 柚野真也















