強風が吹き抜ける味の素スタジアム西競技場。前半、風上に立った京都の戦い見ていて思い出すのは、トップチームのサッカー。視察していた他Jクラブの関係者が「なんで風上を活かさないんだ」とつぶやいたのが聞こえたが、これが京都のサッカー。明らかに去年よりトップとユースのサッカーが近くなっている。横浜FMのツートップとサイドハーフの4枚がプレッシャーをかけてくる中で、自陣の深いところからでも京都はボールを繋ぐ。ただ、ここでボールを失うことが増えた京都。そうなった理由は横浜FMのスピードあるドリブルからの仕掛け。グループリーグでは出場しなかった伊東海征がFWに復帰し、田中智也とツートップを組んだのだが、伊東が戻るとやっぱり凄さは大きく増す。スタートポジションが4-1-4-1の京都に対して、田中智はディフェンダーが誰がマークするのか判断しにくいポジションを取って攻撃の起点となって決定力のある伊東を生かした。追浜ルーレットと呼んでいるかどうかは知らないが、小柄な田中智はジダンより切れのあるマルセイユルーレットなどを駆使して狭くてプレッシャーの強い中でもボールを失わない。そして、失ってもすぐに奪い返す。
サイドハーフの汰木康也とキャプテンの村原大輝も積極的に攻め上がるから、4-4-2の横浜FMのシステムは4-2-4か、サイドバックがどちらか1枚が上がって3-3-4みたいになっている時間が少なくなかった。19分の2点目も田中智のキープ力が左から走り込んだ汰木のゴールを呼んだ。35分の3点目は、前からのプレッシャーに対して京都のディフェンスラインが焦ったのか正しい判断が出来ずにパスミスをし、最後は汰木が決めて3-0と一方的なスコアになった。ただ、京都も決定機は作っていた。ワントップの田村亮介をなかなか活かしきれていなかったが、2列目の奥川雅也や大西勇輝ら1年生がワンツーやクロスで少ないチャンスを決定機に変えていた。1,2年生中心なのでフィジカル的なアドバンテージは前線にはなかったが、それがないからこそ上手さに磨きをかけることができる。
後半、京都は1年生の永島悠史を2列目に投入する。そして、開始直後の50分に永島が右から上げたセンタリングが大西に合う。シュート自体はミスキックのように見えたがゴールインで、3-1。京都にとって次の1点を奪えば大きく横浜FMに傾いて地面に着いていたシーソーを持ち上げることが出来る。52分にはCKの流れから京都の2点目が決まった・・・かという場面もあったがオフサイド。しかし、その勢いに冷水を浴びせたのは横浜FMの伊東。カウンターから、ゴール前で相手が足を出してくるのを絶妙のタイミングでかわしてチームの4点目を決める(53分)。4-1になったことで、京都の1点の価値を大きく減じた。ただ、京都が攻勢をかける時間はその後も続いて、70分には酒井崇一からの縦パス1本で決定機を作り、田村が決めて4-2と再び2点差。77分のCKのチャンスには、京都のフィールドプレーヤの中で一番恵まれたフィジカルを持つCB樋口総のヘッドがバーに当たるなど、京都は1点差に詰め寄るチャンスを作る。しかし、横浜FMの松橋力蔵監督は「ここ締めるぞ」と声をかけ、前線からプレスをかける選手を投入していく。そして、最後は87分に途中出場の深澤知也が右サイドからゴールライン付近までドリブルして上げたセンタリングに伊東が合わせて、ハットトリック達成で5-2。グループリーグでは出場できずにチームに迷惑をかける形になった伊東だったが、松橋監督が「ユースに入って以来、ナンバーワンのプレー」という趣旨の話をするくらいのプレーを見せた。タイトルに向けて高いモチベーションを持つ横浜FMにとって、伊東の復帰で更に破壊力が増した攻撃力は大きな自信になったはず。相手の攻撃や状況によってポジションをどう修正するのかという守備の課題はあるが、個のレベルアップ、個の特徴発揮という狙いに沿った戦いは出来ている。この先はよりシビアな戦いが増えるが、横浜FMのアグレッシブな個性が勝利を引き寄せながらどこまで発揮されるのか期待したい。
京都にとってトップチームのプレーオフと同時間にキックオフとなったJユースカップ決勝トーナメント1回戦。選手もスタッフも気になりながらも、始まれば完全に自分たちの試合に集中して戦った。結果は5-2で敗れ、トップチームも0-4で大分に敗れた。本田将也監督に「トップチームの結果をどう伝えるのか」と聞いた。
「サッカーをやっていれば辛いこともある。いいことばかりじゃない。それを受け入れる人間にならないとだめだと思う。それを伝えたい」と答えてくれた。
試合後、FWの田村に話を聞いているときにプレーオフの話になった。まだ結果を知らなかったようで、「どう・・・だったんですか・・・」と恐る恐る聞いてきたから、「負けた」と伝えることになってしまった。誰からも「勝った」という言葉を聞かされていなかったことで、ある程度の想像と覚悟はあったようだ。田村は、「僕らは1,2年が中心のチームで、2年以下には『来年もある』という甘さがどっかにあったと思います。来年は3年になるのでしっかりチームを引っ張りたい」という趣旨の話をしてくれた。そして、「J1よりJ2の方がユースの選手が出場するチャンスがあると思って頑張ります」と気持ちを切り替えていた。みんなが耐えて育てて手にした「京都らしさ」。それを大切にした戦いは来年は華を咲かせるはず。トップもユースももう一踏ん張り、我慢のしどころだ。来年はみんなが、「京都は凄い」という時が来る。
以上
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【決勝トーナメント2回戦の試合予定】
■11月23日(金・祝)
神戸 vs 磐田
広島 vs 浦和
札幌 vs 新潟
C大阪 vs 福岡
清水 vs 柏
G大阪 vs 川崎F
鹿島 vs 横浜FM
横浜FC vs 千葉
※全試合入場無料
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★2012 Jユースカップ特集
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2012.11.19 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
一覧へ【2012 Jユースカップ1回戦:横浜FMvs京都】レポート:決定力のあるエースFWの復帰で横浜FMの攻撃力が大爆発。1,2年生中心の京都は来年に華を咲かせるための価値ある敗北(12.11.19)















