ヤマザキナビスコカップ第4節磐田戦、J1第6節浦和戦というアウェイ連戦は、どんな意味を湘南にもたらしたろう。磐田戦は、相手のタイトなプレッシャーもあり、先制点を許したまま0−1で決した。相手のよさと自分たちの弱さは表裏一体にある。11分という失点の時間帯にも表れているとおり、ゲームにうまく入れなかったのは今季初といっていい。前節の浦和戦は、立ち上がり自体は決して悪くなかった。だが相手の精度高いパスワークに押し込まれると、前半のうちに先制点を許し、後半にも失点して0−2で笛を聞いた。

磐田、浦和ともに、得点以外にもいくつかの決定機をつくっていたのに対し、湘南は惜しいシュートこそあったもののゴールに迫るシーンは限られた。こと浦和戦では、防戦に回るなかで奪ったボールを前に運べず、ミスも散見された。

「相手が来ていないのにプレッシャーを感じ、安全なプレーを選択する場面が僕を含めて多かった」と、菊池大介は振り返る。みんな強い気持ちをもってプレーしていたと思うし、前に向かう気持ちも当然あったと思うんですけど、と菊池は言葉を継ぎつつ、「横や後ろへのパスを選択するプレーは自分たちのスタイルを消してしまう」と語る。攻撃の先鋒として、自身に向ける矢印は厳しかろう。

相手に保持される時間が長ければ当然、マイボールの機会は限られる。その分、数少ないチャンスを大事にしようとする意識が働くのも無理からぬことだ。その意識が安全なプレーに繋がった側面もあったかもしれない。反面、「攻撃のための守備」と、あるとき馬場賢治が口にしたように、湘南の本来あるべき姿は奪った先にある。菊池も浦和戦やこの1週間のトレーニングを通じ、「『まずは前』という意識を再認識できた」と口にした。それこそが相手の真っ向勝負を肌に受けてスコアに0を並べたこのアウェイ連戦の、得難い成長の種といえるだろう。一足飛びにはいかないと、折に触れ曹貴裁監督が語るように。

他方、今節BMWスタジアム平塚に乗り込む大分は、ヤマザキナビスコカップを含め、開幕から9試合まだ勝ちを知らない。ただ、毎試合のように得点を挙げている事実が、また6試合で先制点を奪っている事実が勝利までの遠くない道のりを思わせる。前節の鹿島戦も2−3で敗れたものの、敵のストロングを抑えつつ高松大樹と森島康仁の2トップが前線で存在感を放った。先制点を挙げた高松然り、開幕以来となるスタメンを果たした森島にゴールが生まれたことも大きかろう。両雄並び立つツインタワーは今後脅威となりそうだ。

昨季こそ湘南が1勝1分とリードしたものの、両者の過去をひも解くと、8勝4分4敗と大分に軍配が上がる。J1で迎える初対決はどんな笛の音が聞かれようか。今季のリーグ戦に限れば、ここまで両者ともに勝点3を掴めていない。相手以上に自分たちのスタイルを発揮し、ゴールを脅かした数だけ、歓喜は近づく。

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2013.04.19 Reported by 隈元大吾