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【J1:第7節 大宮 vs 浦和】プレビュー:オレンジのカウンターvs赤のポゼッション。最高の舞台が整ったさいたまダービー。(13.04.20)

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「今までとは違った意味のある、本物のダービー」と、大宮ユース出身で高校生のころから浦和とダービーマッチを戦っている金澤 慎は口にした。J1リーグ第7節、大宮はホームNACK5スタジアムに浦和を迎えて戦う。ともにここまでリーグ戦では負けなし。大宮は4勝2分で3位、浦和は5勝1分で2位につけている。あくまでリーグ序盤での順位にすぎないが、J1リーグ戦におけるさいたまダービーの歴史で、両チームがこれだけ上位に位置する状況で戦うのは初めてのことだ。
このダービーマッチには、さらにもう一つのドラマが加わっている。大宮はこの試合に引き分け以上で、リーグ戦18試合連続負けなしのJ1リーグ新記録を達成する。その記録の始まりとなったのが、昨年9月1日に行われた埼玉スタジアム2○○2でのダービーだった。「俺たちが終わらせる」と、浦和の選手たちは口々に、それがケジメだと言わんばかりに語る。しかもJ1リーグ戦でのダービー戦績は大宮の6勝5分5敗で浦和は負け越しており、しかもこの2年間というもの、浦和は一度も勝利したことがない。
文字通り、大宮にとっては絶対に負けられず、浦和にとっては絶対に勝たなければならないダービーマッチだ。

両チームの特徴から、試合の焦点は分かりやすい。堅守速攻の大宮と、ボールを保持して攻める浦和。その構図は、大宮のセンターバック高橋祥平が出場停止となることで、より鮮明になるだろう。
今季、大宮の守備ラインは高い。高橋と菊地光将の2人のセンターバックはスピードがあるため、最終ラインの裏のスペースに蹴られても対応できるという計算で、またラインを上げているぶん前線からのプレスによって危険なロングボールを蹴らせない、その好循環が機能している。その高橋に代わって起用される片岡洋介はスピードよりも競り合いや1対1の強さに長所があり、対する浦和の1トップ興梠慎三はスピードと裏への動き出しの鋭さに特徴がある。つまり、高いラインを保って裏を取られるリスクは、ここまでの試合よりも確実に高まる。引いてしまえば浦和は一方的に押し込むだけのポゼッション力があるが、受け身になったときにはね返す力は、高橋よりも片岡のほうが上だ。また、浦和が相手陣内に人数を割いて攻め込めば、それだけ大宮にとって得意とするカウンターのチャンスにもなる。いずれにしても、「ラインを低くするにしても、前から追って高くするにしても、コンパクトにすることが大事」(渡邉大剛)と、まずは堅守の構築が大宮の生命線なのは間違いない。
ただ、大宮は攻撃においても重要なピースを欠いて臨むことになりそうだ。チョ ヨンチョルが「試合の続いている疲労感」(ベルデニック監督)から今週の練習に満足に参加できておらず、ノヴァコヴィッチもここ2試合戦列を離れていてスタートから出られるかどうかは不透明。特に、カウンター時に高速ドリブルでボールを運ぶ役割を担っているヨンチョル不在の影響は大きい。その善後策および浦和対策として前々日の練習では布陣を4−2−3−1に変更し、ヨンチョルの位置である左サイドハーフには富山貴光やズラタン、トップ下には渡部大輔や上田康太、富山を試していた。トップ下を置くねらいは、攻撃では裏への飛び出しと、守備では浦和のボランチに起点を作らせないことにあり、その役割であれば富山が適任だろう。ノヴァコヴィッチが大丈夫ならズラタンが左サイドハーフに入り、無理ならズラタンがトップで左には渡部が起用されそうだ。

一方浦和のスタメンは前節から変更なしの見込みだ。前々日の練習で、相手が前からプレッシャーをかけてきたときに守備ラインの裏へロングボールを蹴ることを強く指導したのは、大宮を意識してのものだろう。単純なロングボール一発でシュートまで行ければラッキーだし、「足元ばかりではプレッシャーをかけられる。裏を突けば相手は引いて、足元が空いてくる」(梅崎 司)と、よりボールを回して崩すための下準備にもなる。大宮のカウンターに対しては「危険なエリアで奪われないように、特にクサビのボールを真ん中で取られるのは避けたい」としながらも、「カウンターを警戒して攻撃に人数をかけないのは浦和のサッカーではない。相手がカウンターも出せないくらいに押し込んでいく」(梅崎)と、攻撃サッカー全開で挑む構えだ。

ただでさえ意地とプライドのかかるダービーに、J1リーグ連続無敗記録までからみ、明日のNACK5スタジアム大宮はオレンジと赤で立錐の余地もなく埋まる。大宮で最も静かな男・金澤が「大宮で育ててもらったし、浦和にだけは負けたくない。記録云々ではなく、この試合に勝つことだけを考える」と語気を強めれば、大宮で最も熱い男・北野貴之も「ダービーのことを考えるだけでアドレナリンが出る。日本一注目の集まる、熱い戦いで、必ず浦和を倒す」と、既に高熱を周囲に放っている。選手とチームの背負ったドラマが、さいたまダービーの歴史に新しい1ページを刻み、いまだかつてない熱量がNACK5スタジアムを包むだろう。

以上

2013.04.19 Reported by 芥川和久
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