11月6日(日) 2011 J2リーグ戦 第34節
熊本 1 - 2 京都 (13:03/水前寺/2,847人)
得点者:11' 大迫希(熊本)、37' ドゥトラ(京都)、53' ドゥトラ(京都)
スカパー!再放送 Ch180 11/7(月)後00:30〜
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プレビューで触れた、チョン・ウヨンが強化合宿参加のために不在、という見立ては間違っていて、5連勝を狙う京都は前節と同じスタメンだった。プレス控え室で挨拶した京都付きの記者さんの話によれば、どうやら大木武監督が引き止めて、合流を遅らせたということらしかった(確認不足をお詫び申し上げます)。つまりはそれだけ、今のチームにとって必要であるということ。実際、ゲームを通じてみればやはり、彼の存在感は小さくなかった。
しかしホームの熊本とて、負けるわけにはいかないゲーム。コイントスに勝った南雄太はメインスタンドから見て左側のエンドを選択。前半、赤いサポーターが待つ方へ攻めることになった熊本は、立ち上がりから気持ちの入ったプレーを見せる。布陣は、出場停止が明けたファビオをトップに据え、大迫希と武富孝介がシャドウに位置する、これまで通りの4-3-3。しかし立ち上がりから激しくプレッシャーをかけるのと合わせ、武富がややトップ下の位置に絞るようなポジションをとったことで、京都にとっては「中盤がダイヤモンドみたいな感じで、はじめはうまく掴めなかった」(酒井隆介)。
実際、そうした動きが形となって、11分の先制点が生まれた。市村篤司が中距離のくさびのパスを打ち込むと、ファビオがこれをワンタッチで落とし、いい距離感でサポートに入った武富はさらに左へグラウンダーの優しいパス。京都の守備陣がいったん食いついた事でできた左のスペースに走り込んだ大迫がGK水谷雄一の動きを見て落ち着いて左足で浮かすと、ボールはマウスに吸い込まれた。ほぼ同時に、キックオフ前から激しい雨を降らせていた雲間から光りが差し込み始め、このゲームの先行きを示しているかにも思われた。それほど、前半の熊本は素晴らしいゲームを見せていたのだ。
熊本が前半ペースを握ったのは、前からのプレスが非常に効いて、中盤でのセカンドボール争いでも圧倒し、京都につなぐことをさせなかったからだ。アンカーの原田拓が底でバランスを取り、吉井孝輔と根占真伍が身体を張ってボールを奪えば、そのタイミングで大迫や武富が動きだしてボールを引き出す。先制点以降も、20分には市村の長いパスに武富が抜け出し、22分にもファビオ、根占、市村とつないで右から崩し、24分には大迫からのクロスに武富が飛び込む決定機を作るなど、試合後に高木琢也監督も述べている通り、「できるだけ早く相手の背後、薄いところを突いていく」という狙い通りの形を作っていく。ただ、片方のサイドにポイントを作っている段階で逆サイドが用意していながら、タイミングよく揺さぶれないという場面は何度かあり、そうした形から早い段階で追加点が奪えていれば、試合はまた違った展開を見せていただろう。
しかし30分あたりから、熊本の出方に合わせて修正を加えた京都が徐々に流れを引き戻した。スタンドから見ていると、京都の中盤が形を変えたのは後半になってからのように感じられたが、大木監督は会見でそのことを否定し、前半のうちに「相手に合わせる形でダイヤモンドにした」と述べている。中村充孝が高い位置に顔を出し、熊本のバイタルエリア付近でポイントができたことでリズムを取り戻した京都は37分、同点に追いつく。左からの中山博貴のクロスに対する熊本DFの甘い処理を見逃さなかったドゥトラがきれいに決めたものだが、その前の段階では右サイドから持ち込んでおり、中央を経由して作り直した得点だった。
さらには後半立ち上がりの53分、今度は左から細かくつないで勝ち越しゴール。中村からボールを受けた中山が深くえぐってマイナスのクロスを入れ、そこに入り込んできたドゥトラが合わせた。この場面、熊本の守備陣も人数は揃っていたものの、やはり前半30分過ぎから見え始めていた対応の遅れと、「サイドに入った時にいいアプローチはかけたが、その瞬間にほぼ全員がボールウォッチャーになってしまった」(高木監督)ことが失点につながった。
逆転されて以降、熊本もいい場面を作れなかったわけではない。もちろん、リードした京都に無闇に攻める必要がなくなった事も影響しているが、71分にはFKの流れから吉井、80分にはCKの流れからファビオ、85分廣井友信、88分にもファビオと、後半だけで9本のシュートを放っている。しかしいずれもゴールを割ることはできず。高木監督も「いなせる、かわせる、止められる、タメを作れるといった部分がもう少しあれば、もっといい組み立てができたんじゃないか」と話しているが、特に後半は前半にできていた流動的な動きを継続する事ができなかった。
結果、京都は5連勝。熊本は連敗で順位が入れ替わった。ゲームを通して振り返れば、お互いに良いところ、悪いところが出たと言えるが、勝敗を分けたのはゲーム中の修正力だったように思われる。確かに、熊本としては前半の内容が非常に良かっただけに、逆転負けという結果はあまりに残念。だが吉井も話しているように、「得点場面も練習でやろうとしていた事が出せて、その他にもいいシーンはあった。そういう形は試合を重ねるごとに増えている」。残りは4試合となったが、「来季につながる試合」(大迫)にするためにも、まだまだ改善の余地は残されている。
以上
2011.11.07 Reported by 井芹貴志













